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帯に短し襷に短歌

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素朴に歌を詠むということへの憧れがある。素朴に詠めるようになりたいと思うのである。とにかく詠んでみないことにははじまらない。「こんなものは短歌とはいいません」なんて言われたってい… もっと読む
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たまに短歌 カラスが鳴いたA地点

たまに短歌 カラスが鳴いたA地点

ほうほけきょ白梅香る白日夢
カラスが一羽ニヤリと笑う

そのときは梅に夢中でほうほけきょ
A地点からカラス飛び立つ

真似ているつもりがあるか太カラス
姿を見せろここで一節

ひと月ほど前のことである。銚子に出かける前にカメラにあるフィルムを使い切ってしまおうと、陶芸の後に六義園を訪れた。駒込駅からすぐという好立地ということもあり、陽気が良いとかなりの人が集まるのだが、さすがにこの時期は好天でもの

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たまに短歌 思い出したこと

たまに短歌 思い出したこと

とっくりを さんざんならべ ふとおもう
ちょうしにのるな でんしゃのじかん

徳利をさんざん並べふと思う
調子に乗るな電車の時間

酒はそれほど飲まないので、この歌のような経験は無い。「とっくり」と「ちょうし」を掛けることで頭がいっぱいになっていて、何か言ってみたいのである。それに、無理に短歌にしなくてもよさそうなものだが、自分でこのnoteの題材を歌、俳句と読書ネタと決めているので、ここに書くか

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たまに短歌 一年経過

たまに短歌 一年経過

ひととせを むいにすごして はるがくる
ふりむくさきを わらいたおして

一年を無為に過ごして春が来る
振り向く先を笑い倒して

雨の降る寒い日だった。昨年の今時分、フィルムカメラを買った。電源の必要のない、それでいてしっかりと動く機械を触ってみたかった。今時そんなカメラを新品で手に入れようとするとライカくらいしか思いつかない。仕事帰りに銀座のライカ直営店に立ち寄ろうと思った。かなりの出費になるが

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たまに短歌 徳利持参

たまに短歌 徳利持参

ひとつだけ思い立っての旅の空
天気も呆れ照らすしかなし

撮り鉄の熱き心に呆れつつ
己が心の熱さ知らずに

春の陽が照らす徳利の肩越しに
ぬれ煎餅や醤油のアイス

長いこと道楽で陶芸をやっている。昨年は徳利ばかり拵えた。年末になって漸く徳利っぽいものができるようになった。それで、銚子に出かけようと思った。銚子に自作の銚子を持参したら面白かろうと考えたのである。銚子に自作の銚子を持参する、ただそれだ

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たまに短歌 一服

たまに短歌 一服

紀州4日目(最終日)は、午前中に勝浦駅と港の周辺を歩き、土産を買ったり軽く食事をした後、12時22分発の特急南紀で名古屋へ行く。当初は往復とも南紀を利用するつもりだったのだが、往路は指定席が満席で予約をすることができなかった。やむを得ず羽田から南紀白浜まで空路、南紀白浜から紀伊勝浦までリムジンバスで移動した。復路は指定券発売開始日に東京駅にあるJR東海の窓口まで脚を運ぶという万全の体制で切符を手配

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たまに短歌 熊野本宮、速玉、神倉神社

たまに短歌 熊野本宮、速玉、神倉神社

紀州3日目は、予約しておいたレンタカーを借り出して熊野本宮大社と熊野速玉大社にお参りする。前日に気になっていた駅舎をじっくりと眺めるためJR那智駅に寄り、そこの駐車場でカーナビにこの日の目的地の設定をした。このため、そこから下道で本宮、続いて速玉大社をお参りし、復路は新宮ICから那智勝浦ICまで高速道路を使って紀伊勝浦駅という経路になった。高速は無料だが路面がけっこう荒れている。この日の走行距離は

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たまに短歌 那智の滝

たまに短歌 那智の滝

紀州2日目は那智の滝にお参りする。予て宿の人に教えてもらった通り、紀伊勝浦駅前から系統番号31の那智山行きバスに乗る。路線バスなので、整理券を取って乗車し、降りるときに料金を支払うという当たり前の乗り方でも良いのだが、駅前にあるバスの営業所で往復割引切符を買って乗る手もある。バスは紀伊勝浦が始発だが、すぐに満員になった。一見したところ、客の殆どが外国人観光客だ。途中の停留所で下車した地元の人と思し

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たまに短歌 和歌山県太地町

たまに短歌 和歌山県太地町

旅行に出たときは、旅先から自分宛に毎日葉書に歌を詠んで投函することにしている。ほんとうはその土地の絵葉書にさらさらと書き記すことができるとサマになるのだが、なかなかそうはいかない。近頃は観光地でも絵葉書を見かけることが少なくなった。小洒落た絵柄の葉書はたまにあるが、昔ながらの「これをいったい誰に送れと?」というやつがほぼ絶滅してしまった。仕方がないので、使い残りの年賀状を持ち歩いている。今回の旅行

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焼石に水

焼石に水

里帰り照らす陽射しは変わりなく一億五千万キロの熱

夏休み暑さはいつか忌避の的国民総出我慢大会

暑くても家で徒然耐えられず不要不急の外出ばかり

世間は夏休みだというのに私は休暇をとることができずカレンダー通りの生活。今年は8月11日から13日までが連休だったので、この時期に新潟県柏崎市にあるツレの実家に帰省する。コロナ前までは、新潟の海沿いの地域は、少なくとも東京よりは過ごしやすかった。ところ

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月例落選 短歌編 2023年8月号 とりあえずの最終回

月例落選 短歌編 2023年8月号 とりあえずの最終回

角川『短歌』の定期購読は既に終了しているため、職場の最寄りの書店で落選を確認する。投函したのは5月12日。題詠は「淡」。これを最後に歌を詠んでいないので、今回がとりあえずの最終回だ。

歌や俳句を記しておこうと思って始めたこのnoteなのだが、俳句について書いた記事60本、短歌の記事が今回を含めて106本、初回2020年11月21日から2年半ほどで小休止なんだか終止符なんだか、ということにした。ま

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月例落選 短歌編 2023年7月号

月例落選 短歌編 2023年7月号

角川『短歌』の定期購読は既に終了しているため、コーヒー豆を買いに巣鴨に行った折に巣鴨駅前の書店で落選を確認する。投函したのは4月13日。題詠は「新しい」。

「新しい」で以下の三首。

新築の家を諦め去年今年
居抜きの暮らし気楽な燕

新入りが「盛り」盛り重ね人気取り
「盛り」盛り過ぎて幽体離脱

新しい道具ばかりの新世界
道具の僕人形道具

自分の中での春の関心時の筆頭は駅前の燕だ。今年は第一陣

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月例落選 短歌編 2023年6月号

月例落選 短歌編 2023年6月号

角川『短歌』の定期購読は既に終了しているため、仕事帰りに職場近くの丸善丸の内本店に寄って落選を確認する。投函したのは3月14日。題詠は「リボン」で、まったく思いつかなかったので、今回は雑詠のみ四首。

まだいたか訃報で気づく己が歳
今日の誰かは明日の自分

式服のサイズ確かめ悩み出す
借りて済ますか誂えようか

鳥が鳴く街の名残の大通り
空の青さがただただ重く

トリチウム海水割りでいかがです

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月例落選 短歌編 2023年5月号

月例落選 短歌編 2023年5月号

投函したのは2月13日。既に定期購読は終わっていて、投稿もやめるつもりになっていたので、かなり投げやりな雰囲気が漂う歌にしよう、と思っていた。しかし、改めて読み直して見ると普段と変わらない気がする。仕事帰りに迂回して、丸善丸の内店で落選を確認する。

月に差すピコリットルの茜色花粉もついに宇宙に届く

北風の角が丸まる春立つ日雪の態度も弱気になって

家庭にプリンターがあるのはかなり当たり前になっ

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月例佳作 短歌編 2023年4月号

月例佳作 短歌編 2023年4月号

投函したのは2023年1月12日。既に角川『短歌』の定期購読を終了しているので、陶芸教室近くの本屋の棚で落選を確認しようとしたら、一首だけ佳作に入っていた。

佳作に選んでいただいたのは、小黒世茂先生。

連休の小さな旅で見つけ出す隣の町の小さな歴史

この歌は雑詠の方に提出した初詣をテーマにした3首のうちの1首だ。他の2首は以下。こちらは選から漏れている。

初詣その土地毎の神が居りその土地毎に

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