見出し画像

#201 「ビジネス頭の体操」 今週のケーススタディ(2月1日〜2月5日分)

はたらくおとな向け。普段の仕事と無関係なケーススタティで頭の体操。
その日にちなんだ過去の事象をビジネス視点で掘り下げています。
普段の仕事を超えて、視野を広げ、ビジネスの頭の体操をするのにぴったり。
考えるための豊富な一次情報やデータもご紹介。

 →部分は、頭の体操する上での自分に対する質問例、です。


2月1日(月) 日本で最初の市電はグリーン電力だった!?

1895(明治28)年のこの日、京都で日本初の路面電車が塩小路東洞院通~伏見町下油掛間6.4kmで営業を始めた「京都市電開業記念日」です。

意外と知られていないのですが、日本で初めて電車が営業運転をしたのは京都なんですね。
ちなみに東京で電車が営業運転するのは京都に遅れること8年後の1903(明治36)年です。もちろん東京に鉄道がなかったわけではなく、1882(明治15)年に東京馬車鉄道が開業しています(つまり「馬力」です)。

今、2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにするという菅首相の宣言によって、グリーン電力が注目されています。

実は、この京都市電は、水力発電によるグリーン電力で動いていたのです。

当時の京都は、1864(元治元)年の禁門の変により市街地の多くが焼失、さらに1869(明治2)年の東京遷都により人口が大きく減少するなど衰退の危機にあったのです。

1881(明治14)年に第3代京都府知事に就任した北垣国道が、産業振興による京都復興を狙って計画したのが「琵琶湖疏水」でした。

その名の通り、琵琶湖から京都へ水路を通し、水運(当時運搬は主に船でした)、上水道、灌漑を整備するものです。

この工事を指揮したのが、田邊朔郎という土木技師なのですが、同時期にアメリカ各地を視察、そこで見た水力発電所に実用性と将来性を感じ、疏水を利用した発電所の建設を北垣に提言したのです。

これによりできたのが蹴上発電所です。なんと今も現役で稼働しています。発電量は4,500kWで、約4,600世帯分の電力を賄えるそうです。

画像1

この琵琶湖疏水、現在の京都の観光地にも影響を与えています。
例えば、南禅寺の水路閣(下写真)は疏水の水路ですし、インクラインというのは、疏水の目的の一つ、水運のために作られたものです。このインクラインの船の上げ下ろしの動力としても、蹴上発電所の電力が使われました。

画像2

とはいえ、当時は電化製品もなく、電力の用途も限られていました。そこで、この電力を使う事業としてできたのが、京都市電だったのです。

→まだほとんどの人が電気で何ができるのか経験がない時代、多額の投資が伴う発電事業をなぜ、どのようにして成し遂げられたのだろうか?


2月2日(火) 「KOBAN」は世界共通語!?

1881(明治14)年のこの日、1つの警察署の管内に7つの交番を設置することが定められた「交番設置記念日」です。

町の中に交番の建物を置き、そこを中心に制服の警察官が活動するという交番の制度は、1874年に東京警視庁が設置した「交番所」が世界初のものでした。
当初は、施設を伴うものではなく、警察官が警察署から徒歩でパトロールを行いながら、交替で立番する場所として指定された地点を言いました。
1881年より「交番所」に建物を建てて警官が常駐する現在のような形になりました(ですから、「交番」の名前の由来は、「交替で番をするところ」から来ているのです。警視庁のHPにも書いてあります…)。

画像5

さて、交番。全国にどれくらいあるのでしょう?

「令和2年版 警察白書」によると、2020(令和2)年4月1日現在、全国に交番は6,264箇所、駐在所は6,241箇所設置されているそうです。

ちなみに、「交番」と「駐在所」との違いは、以下の通りです。
(出典:警視庁HP

画像3

つまり、「交替する人がいるなら「交番」、1人だったら「駐在所」」ということです。こだわってます…

交番の数の推移を調べたですが、警視庁などでも長期のものが見つからず、ある論文に「警察署・交番・駐在所数の推移」がありましたので以下に転載します。

画像4

これによると、警察署・交番・駐在所を合わせた数は、1992(平成4)年には16,500以上あったものが、2011(平成23)年には14,000程に減少しています。
別の資料による、2009(平成21)年から2018(平成30)年までの交番の数の推移データによると、6,216箇所から6,260箇所とほぼ横ばいです。

何が減少しているかというと、駐在所です。
なぜなら、駐在所は1人の警察官が家族とともに赴任し、その地域の安全を見守るのですが、必然的に夜間が手薄になります。24時間化した現代に合わなくなっていること、警察官とその家族にも負担となること等から徐々に交番への統廃合が進められているようです。


日本で最初にできた「交番」という制度、海外にも知られているようです。警視庁のHPに以下のような記述があります。

画像6

SUMOやKABUKIと同列に語られていますね…
どうやらD・H・ベイリー氏が世界に知られるきっかけを作ったようです。

調べると、彼は、日本の警察官に数百回ものインタビューを行うなどして、
“FORCES OF ORDER: Police Behavior in Japan and the United States”
(1976年刊、翻訳書『ニッポンの警察―そのユニークな交番活動』1977年刊)
という著書で、日本に犯罪が少なく治安が良い大きな理由は、都市に交番が設けられ、全国各地に駐在所があり、警察官が地域において住民と良好な関係を築いていることだ、という研究を発表したそうです。

KOBANシステムは、アメリカ、ラテンアメリカ諸国、アジア諸国など幅広く導入されています。

有名なところでは1993年にニューヨーク市長となったジュリアーノ市長が治安回復のためにKOBANシステムを取り入れるなどして犯罪率削減、治安回復に大きな成果をあげました。

また、ブラジルではJICA(国際協力機構)と日本の警視庁の支援を受けてKOBANが作られたことが、JICAのHPで紹介されています。

なお、一部の世代の方にとっては、あの「両さん」がいる「派出所」は?と思われるかもしれません。実は、「派出所」=「交番」だそうです。
正式名称が「派出所」だった時期が長くあるのですが、「交番」の呼び名が世界的にも定着していることから、1994年に「交番」の方を正式名称とすることにしたそうです。

→各地域に警察署のみがあるケースと交番も併設されるケースとでは、それぞれどのようなメリットとデメリットがあるだろうか?


2月3日(水) 124年ぶりの節分!?

大豆製品を取扱うニチモウ(現 ニチモウバイオティックス)が制定した「大豆の日」です。この日が、豆撒きをする節分になることが多いことが由来。

「この日が、豆撒きをする節分になることが多い」とありますが、 2月3日以外の日が節分になることがあるのでしょうか?

もうご存知の方も多いと思いますが、今年の節分は 2月 2日です。

まず、節分は、「立春」の前日です。
今年は「立春」が1日早い、 2月3日なのです。それで節分も1日早くなる…
実に124年ぶりのことだそうです。

詳しい解説は国立天文台のこちらの解説をご参照ください。


ここでは、暦に関するトリビアを2つご紹介したいと思います。

☑️ 閏年は4年に1度、ではない!?

これはよく知られていると思います。
グレゴリオ暦法では、閏年は以下のように決められています。

(1)西暦年号が4で割り切れる年をうるう年とする。
(2)(1)の例外として、西暦年号が100で割り切れて400で割り切れない年は平年とする。

これは、太陽暦では1年は約365.24219日。
端数はほぼ0.25なので、閏年は基本的に4年に1回でいいのですが、0.25にはちょっと足りないので、その歪みをルール(2)で調整している、というわけです。

☑️ 旧暦は「太陰暦」ではなかった!?

季節の行事などでたまに出てくる「旧暦」。なんとなく「太陰暦」(月の満ち欠けを基準にした暦)だよね、と認識している方が多いかもしれません。

ところが、明治5年まで使われていた旧暦は正確には「太陰太陽暦」と呼ばれる方式です。

太陰暦の1年は29.5日×12=354日です。

(実際の暦は30日×6+29日×6)
これは太陽暦に比べて1年間が11日程短くなります。

1年で11日というとまぁ、そんなもんか、とも思えますが、3年もたてば約1ヶ月違ってきます。そのままにしておくと、日本のように四季がある場合、1月が真夏、なんてことになりかねません。そうなると、いつ稲を植えたらいいのかなどがわからず、農作業などに支障が出ます。

そのため、太陽太陰暦では、約3年に1回「うるう月」を入れて調整していました。

うるう月がどの月の間に入るかは年によるのですが、例えば、ある年は、4月が 2回ある、ということが起こります。

このように今のグレゴリオ暦法とはだいぶずれますので、季節感がおかしなことが起こります。

例えば、七草粥。1月の7日になっていますが、あんなに時期に七草は生えていません(今はハウス栽培などでスーパーで買えますが)。それから七夕。梅雨の時期にわざわざやらなくても、という感じですが、実は七夕は旧暦だと今の8月のことが多く、その頃でしたら晴天も多く天の川が見れる確率も高いでしょう。子供の日に菖蒲湯に入る、というのも、梅雨の時期の体調を崩しやすい時期なので、ということなのですが、今では爽やかな季節に当たりますので、ちょっと違っていますね。

旧暦の話、ビジネスとは離れた話題かと思いきや、「当たり前を疑う」「なんとなくの違和感の理由を探る」という意味では良いケーススタディなのです。

→年中行事と同様に、当たり前のようにやる時期が決まっている業務、本来はどんな意味があるか、疑問に感じたものはないだろうか?その理由はなんだろう?


2月4日(木) 日本人の死因の1位は悪性新生物。

2000年の「対がん同盟結成を呼びかけるパリ憲章」に基づき、国際対がん連合(UICC)が2002年から実施している「世界対がんデー(World Cancer Day)」です。

厚生労働省の「2019(令和元)年人口動態統計月報年計(概数)の概況」によると、2019年の死亡数は138万1098人です。

死因別にみると3位までは以下の通りです。

☑️ 第1位は悪性新生物<腫瘍>で全死亡者に占める割合は27.3%
☑️ 第2位は心疾患(高血圧を除く)(同15.0%)
☑️ 第3位は老衰(同8.8%)

悪性新生物(いわゆるがん)は1981(昭和56)年に死因の1位(それまでは脳血管疾患が1位)となってから、増え続けています(下図)。

画像7

国立がん研究センターの「最新がん統計」には診断数も掲載されています。

2018年にがんで死亡した人は373,584人
(男性:218.625人、女性:154,959人)
2017年に新たに診断されたがんは977,393例
(男性:558,869例、女性:418,510例)

部位別に見ると、それぞれ以下の通りです(出典:同統計)

画像8

画像9

がん、以前に比べ治る病気だ、とも言われますが、実際はどうなのでしょうか?

同統計では、5年相対生存率という指標が紹介されています。
がんと診断されてから5年後に生存している人の割合が、日本人全体で5年後に生存している割合に比べてどのくらいかで表したものです。100%に近いほど治療で生命を救えるがん、ということになります。

最新のデータでは、64.1%となっています。

部位で大きく異なっていて、例えば前立腺では99%台、膵臓では8%台となっています。

年齢別がん罹患リスクもみて見ましょう。
こちらが全がんの男女別年齢別罹患率です。

画像10

男女とも50歳代から80歳代まで増加する傾向にあります。

これも、部位によってかなり異なります。
特に比較的若年層にピークがあるのが、乳房です(下図)。

画像11

このHPでは部位を選択すると上記のようなグラフが見れるようになっていますのでご興味がありましたらご活用ください(スクロールした下の方になります)。


最後に、「正しく恐れる」ためにも、現在の年齢別がん死亡リスクを見てみましょう。

画像12

例えば、現在40歳の男性が20年後までにがんで死亡する確率は6.9%であることが分かります。

→がん治療のために仕事を辞めざるを得ないケースがあると聞いた。自分の勤務先ではどのような制度があるのだろうか?


2月5日(金) 今後の球団経営は?

1936(昭和11)年のこの日、全日本職業野球連盟が結成された「プロ野球の日」です。
当時は東京巨人軍(現 読売ジャイアンツ)・大阪タイガース(現 阪神タイガース)・大東京軍・名古屋軍(現 中日ドラゴンズ)・阪急(現 オリックスバファローズ)・東京セネタース・名古屋金鯱軍の7チームでした。

感染症により昨年シーズンのプロスポーツは軒並み厳しい環境に置かれました。

収入は入場料、放映権料、グッズ販売、広告などのスポンサー収入が主な柱です。その入場料がほぼ8割減という状況です。

朝日新聞が各球団の経営状態についてインタビューした記事を見ても非常に厳しい経営環境であることが伺えます。

特に、プロ野球は一昨年、12球団の総入場者数が過去最高を記録するなど、各球団が行ってきた入場者数を増やす様々な工夫が成果に結びついてきていた矢先のことです。

例えば、DeNAは昨年は横浜スタジアムの3年越しの改修が終わり、一昨年は球団史上最高の約228万人の動員数をもっと伸ばせる見込みでした。

また、球場の広告も試合数が少ない分、返金の話に応じる球団もあり、西武ライオンズでは、返金の話をしたところ、その分新たに広告を出してくれる広告主が現れ、それが無観客試合の内野席の横断幕の広告となったそうです。


米メジャーリーグも大きな影響を受けました。開幕前にオーナー側と選手会とで試合数や年俸について話し合いが行われ、試合数と年俸の試合数に応じた額とすることが決められました。

ところが、日本では、球団と選手とで結んでいる統一契約書に感染症や天災に関する条項がなく、話し合いは進まず、いわば見切り発車でシーズン入りしたのです。

昨年の契約更改のニュースで感染症を理由に減額はできない、というような説明がありましたが、背景としてはこのような「契約書上想定外の事態が盛り込まれていなかったこと」があったのです。

今後ですが、昨年6月に日本リサーチセンターが出したスポーツ観戦に関する意向調査によると、感染症流行前の1年間にプロ野球を観戦した人の中で、「不安が完全になくならなくても観戦に行きたい」と答えた人は、35.3%。一方で、不安が完全に無くなっても感染には行きたくないという人も4.6%います。

一方で、現地観戦経験がある人の割合は12.8%、動画視聴経験がある人の割合は35. 2%と、接触率が非常に高いのがプロ野球の特徴です。

画像13

例えばJリーグは観戦経験がある人の割合は5.4%、動画視聴経験がある人の割合は18.3%となっています。

この辺りが、今後の球団の運営のヒントになると考えられます。

特にソフトバンク、DeNA、楽天、といった情報配信基盤が整っていると思われる球団のこれからの動きは、感染症が治ったのちも完全には戻らない可能性の高い球団経営のヒントになるようなものになるのではと思います。

→これまでの直接体験型のコンテンツをどう非接触で売上に結びつけるか、という点では、野球のみならず他のビジネスでも必要なことだ。野球で考えるとどのようなことが考えられるだろうか?


最後までお読みいただきありがとうございました。

1つでも頭の体操になるネタがあれば嬉しいです。

昨年7月から毎週日曜日にこんな投稿をしています。
だいぶ溜まってきました。
よろしければ過去分も覗いてみてください。
「へぇ〜」がいろいろあると思います。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?