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児童虐待を受けた人々の心の傷に対しての診断

PTSD(心的外傷後ストレス障害)とは、災害や事故、レイプなどの強烈なショック体験が原因で心にダメージを受け、その経験に対して強く恐怖を感じる疾患です。

身体はトラウマを記録するの著者である、ヴェッセル・ヴァン・デア・コーク氏は

①子ども時代に養育者によって虐待を受けた人々
②最近家庭内暴力の犠牲になった人々
③最近自然災害を経験した人々

を対象にした研究を行いました。
そしてその結果、これらの集団間には明確な違いがあり、特に①と③の集団の症状の違いが著しかったそうです、

精神疾患の診断・統計マニュアルというものがあります。
精神科医が診断をするときに元になるものです。

精神疾患の診断・統計マニュアルには、災害などでトラウマを負った人々に対する診断「PTSD」は掲載されていますが、児童虐待を経験した人々に対する診断として適切なものは存在していませんでした。

ヴァン・デア・コーク氏は、仲間とともに「複雑性PTSD」という診断を精神疾患の診断・統計マニュアルに掲載するよう働きかけましたが、1994年に刊行された第四版には掲載されませんでした。
つまり、公式の診断として認められなかったのです。

それは、児童虐待を経験した多くの人々が正確な診断を受けられず、他の病名として診断するほかない、ということにもなります。そして児童虐待によって傷ついた人々が適切な治療を受けられない、ということにもなるのです。

実は、私も過去に病院から「適応障害」「うつ」といった診断を受けました。
しかし、入院治療をするに至った際に主治医から「当てはまるのが適応障害しかないけれど、でも・・」と困惑するように言われたことがあります。

身体はトラウマを記録するが発行されたのが2016年。
2016年時点でも複雑性PTSDは公式の疾患名としての記載はされていなかったということなので、当時も当てはまる診断名がなかったのだろうと考えています。

複雑性PTSDという診断名について、現在の状況について調べてみたところ、Wikipedia「複雑性PTSD」の項目にこんな一文を見つけました。

“世界保健機関 (WHO) の発行する疾病及び関連保健問題の国際統計分類 (ICD) の2019年改訂の第11版で公式の疾患名として認められる予定である。“(Wikipediaより引用)

診断を受ける、ということは人によっては様々な受け取り方があると思います。
病名が付くことを、ラベリングされるようで嫌に思う方もいらっしゃるかもしれません。

私個人の考えとしては、正しい診断名がつくということは、適切な治療を受けられるということだと思っています。

診断名がない、という理由で別な診断名をつけられ、適切でない治療を受けることは、やはりその人にとって不利益だと思うのです。

もちろん医師も専門家ですし、そこを疑ってくださいと言っているわけではありません。ただ、自分で情報を得て考えることも大切なことだと私は思っています。

※Wikipediaに記載されていたことについては、これ以上の部分は探せなかったので2019年に複雑性PTSDが本当に診断に追加されるのかどうかの部分の確証はありません。あくまでWikipediaに書いていた、とご理解ください。

ただ、もし複雑性PTSDが公式の疾患名として認められたとしたら、今までとは少しずつ状況は変わっていくのではないかなと個人的には思っています。

日本でも、小児精神科医である友田明美先生が、傷ついた子どもの脳の研究を進められており、虐待が心身に及ぼす影響について科学的に証明されてきています。

一昔前までは、家庭というのは誰も立ち入ることのできないものでしたし、親を批判してはならないという世間の価値観も根強く、児童虐待により傷ついた人々が課題に気付いて治療をすることさえ難しかったと思います。

しかしこのように科学的に研究が進み、事実が明らかになり、それに適した診断も明記されるようになれば、救われる人もたくさんいるのではないかと思うのです。

自分のつらさを長年押し殺していた方が、つらさを認めてもらい、自分自身でも認められるようになることで、明るい未来に繋がっていくことを願ってやみません。

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