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記事一覧
【140字小説】140字小説
140字小説が好きだ。後にも先にもくっきりきっかり140字でないといけない。その長くて短い囀ずりの様な文字数に凝縮された世界の、なんと味わい深い事か。
140字小説が好きだ。現代人の時代に即した表現法の、なんと素晴らしい事か。
流行っているから見つけて貰えやすいなんて、事思わないでもない。
【140字小説】時計農家
うちは代々続く時計農家だ。昔は盛んだったが、近年は時間管理もスマホの仕事で、同業は年々と減り今では日本産の時計は殆どがうちで獲れた物だ。
そろそろ10年前に収穫に出た父が帰ってくる頃だろう。祖父の骨は私が生まれた頃に、新鮮な時計と共に帰ってきたという。父はどんな姿で帰るのだろうか。
【小説】僕が猫になったわけ(17977文字)
薄暗い街角。高架線の下。ホームレスの居住地区。
僕は気付いたら猫だった。
電車の通る音が反響する。耳障りだ。
電車の音って、こんなにうるさいものだったっけ。ポツリと思った。
そして、こうも思う。僕は何と比較して思っているんだろう。
首を傾げながら、僕はとりあえず歩き出した。
慣れない四足歩行が辛い。
何故慣れてないか?それは自分で分かっているつもりだ。
つまりは―
【小説】喫茶、憩い(11891字)
私は落ちぶれた小説家だ。
若い頃は、それなりに売れた。雑誌に連載を何本か持った事もあったし、一度だけ新聞に連載させてもらった事もある。
しかし、今の私には若い頃のバイタリティも無く、アイディアも無い。残った脳みそは搾りかす程度に思え、今の新進気鋭の若手が新作を刊行する度に怯えている。
先日、久しぶりに会った担当編集に、「先生もそろそろ新作を出されては?」と勧められた。その担当編集は若
【掌編小説】カレーの日
病院の窓。外。ショッピングセンターの駐車場。数少ない車。ぴかぴか輝く、屋根や鼻っ面。
独り者のドアが開いた。運ばれてきた食器には、いつも通りに蓋がされている。お皿の数は少ないのに、何だかいつもより豪華に見えるワンプレート。
「お食事ですよ。今日はアレですよ」
「えへへ」
看護師さんが含み笑いで退室する。蓋を開ける。食欲をそそる、あの匂い。有名店のとっておきのスパイスが入っている訳でも
別れ【140字小説】
ぽつり、ぽつりと、場所を選ぶ様に、俺の周りに花が咲いていく。
時には咲く前の花弁がふわりと俺の顔をなで、安らかな言葉をかけていった。
雨がたまにポツリと来たが、本降りにはならない様だ。そうだよな、折角の綺麗な花が萎れっちまう。
ああ。
いい人生だった。
#140字小説 #140字ss
【小説】私は今日も、ときめきの魔法を身にまとう。
この世界では、全ての人が魔法を使う。
加速魔法を使った主婦が、今日もブログに投稿した。
「昨日は2歳の息子も落ち着いていて、一緒にたくさん遊べたし、彼の昼寝時間で今かかっているデザインの案件も目途がついてきた。新しいお花をお部屋に飾って、疲れて帰ってきた夫には、彼の大好きなビーフシチューを作ってあげられた。素晴らしい一日に感謝」と。
魅了の魔法を使った人達が、今日もSNSで素敵な歌声や絵