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死ぬとお金がかかります。11. 父親との最後の会話。

父が亡くなったのは、「弱り目に祟り目」という言葉がうまれたのがわかるわーってくらい、いろいろ重なった3年間の真ん中だった。

何せ、父の急逝が、母の心臓手術でサンドイッチ。


入院や手術のアレコレに加え、さらに最初の手術は妹の甥っ子出産とも重なって、姪っ子の面倒見に行ってたり、甥っ子命名のときに母のよけいな一言で妹が義弟ともめてたり、仕事先の人間関係もこじれて闇落ちしてて、あれやこれやでホントにしんどく、ストレスで、家族の中で私がいちばん最初に死ぬんじゃないかと思ってた。夜中に涙が止まらなくなって、心臓バクバクして、このまま逝くんじゃないかと本気で思ってた。
その時のいろいろがあって、母の手術後、私は1時間で着く実家に、ほとんど行かなかった。家族と距離を置いていた。特に父と。

だから、最後に会ったのは親せきが集まる正月の日帰りちょっとだけだったし、最後に話したのは、父がめったにかけてこない電話をまちがえてかけてきたときだった。それが三ヶ月前くらいだったかな。

あとで妹に聞いたけど、私が実家を避けてることに、父は気づいてた。そして気にしてた。らしい。

「○○(私)が、帰ってこないんだよ……」って。

だから、その電話がホントに「間違い」電話だったのかはわからないけど。めったにかかってこない人からきたから、最初は母危篤、とかかと思って超焦ったけど。もしかしたら、何か虫の知らせでもあったのかもね。

「たまにはご飯食べにおいで」
「……そうね」

素直に、「うん」とは答えられなかった。
それが、父と最後の会話になった。



重なるときはホントにいろいろ重なるから、「親を見送る覚悟と準備」は、できるならできる限り、やっといたほうがイイ。
「普段ならしないミス」も増えるし、自分で思ってる以上に「精神的に参ってる」のが覿面に身体の不調に現れる。
普段あまり行かなくてすんでる病院も、3つの症状で別の科に行かなきゃいけなくなったりしたし。食欲も落ちるし体重も落ちる(食べられないだけだから、食べればすぐ戻るけど)。
思いもかけない出費が増えるし、フリーランスや派遣だと収入にもモロに響くし。


急逝の前年は、「12年に1度のキラキラの年」だと思ってた。自分で雑誌とかで読んでた星占いによると。それが、母の手術にはじまり、職場での闇落ちだのなんだのがあり、「マジか……?」と思ってた。ら。

父の亡くなる2ヶ月ほど前に、ありがたいことに「芸能界最強占い師」の、ゲッターズ飯田さんに直接がっつり占っていただけるチャンスがあって。その時に聞いてみたら「違いますよ。(前年じゃなくて)今年から来年が最高運気です」って、あっさり言われてしまったのだけども(ちなみに、確かにいろいろチケットとかが当たるラッキーな年ではあった。父のと重なって、行けなくなったのも何件かあったけど)。

でもその「最高運気の年」に父が亡くなって「えー……?」と思ってたら、しばらくのちに飯田さんの占い講座が当たって、その時に「銀のイルカは最高運気の年に父親と死別しやすい」って、サラッと言ってて……「マジか……?」と思った。


それをもうちょっとはやく知ってたら……どうだろうな。2ヶ月前に直接占ってもらえたときに聴いてたら、あと1回くらいは、会えてたかな。ちょっと前に実家近くの美容室までは行ってたから、その時帰って、ご飯食べてたかも知れないな。
でもまあ、あの頃の心身の状態だと、もしも何度繰り返すことができたとしても、アレが精一杯だった気もするけども。いろいろシンドかったから。




でも、霊安室で。安置されてすぐ。翌日誕生日を迎える姪っ子が不意に父の顔の近くで、何の脈絡もなく私に「おじいちゃん好き?」と訊いてきて。
それに、何を考える間もなく、反射的に。

「うん」


と、答えてたくらいには、嫌いじゃなかったんだよ。

臨終の際、人の五感は、聴覚が最後まで残ると聞いたことがある。
もしかしたら、あの問いは、それを聞きたかった父が姪っ子に言わせたのかも知れないと、思ったりした。

本当に聞こえてたかは、わからないけれど、ね。






でもたぶん父は、母に置いて逝かれたくなかっただけやと思う―。




お読みいただき、ありがとうございます。
よろしければ、こちらもよろしくどーぞ。
死ぬとお金がかかります。
1. 老いた親との別れ方。
2. 父がぽっくり逝きました。
3. 葬式は、どうする?
4. 戒名って、要るの?
5. 仏壇が、ないのだよ。
6. お墓も、なかったのだよ。
7. 死後の手続き。
8. 葬式代わりのお別れ会(お手製)
9. 遺品整理も大変なのだ。
10. 死ぬと入ってくるお金。
11. 父親との最後の会話。
番外. 親友の義母の場合。


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