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石垣りん『詩の中の風景』中公文庫
この本、よかったなぁ。思ったよりもずっとよかった。やっぱり石垣りんはいい。
著者が個人的に好きな詩を取り上げて、その解説、というよりも個人的な思い出を書き綴っている。取り上げる詩は秋谷豊、山崎栄治、藤原定など、詩人として現在はそれほど有名ではない人もけっこういる。派手な詩はない。難解で高尚(そう)な詩も全然ない。どれも詩人であり人間である石垣りんにとって大事な、すでに自分の血肉になった詩ばかりな
岸本佐知子ほか『「罪と罰」を読まない』文藝春秋
著者を「ほか」としてしまったが、正確には岸本佐知子、三浦しをん、吉田篤弘、吉田浩美。この4人がある日、『罪と罰』を読まないで、それがどんな本か推理しようという変な企画を思いついた。そんなの無理でしょと思うけれど、これほど有名な小説だとまったく読まなくても、たとえば主人公はラスコーリニコフという名前だとか、ソーニャという女性が出るらしいとか、金貸しの老婆を殺す話だなど、何らかの情報が耳に入っているも
もっとみる青山南『本は眺めたり触ったりが楽しい』筑摩書房
久しぶりにすごく楽しいエッセイ本を読んだ。内容は、本をめぐるあれこれ。具体的な作品名もあちこちに出る。後書きによると雑誌のコラムをまとめたものらしい。十数行ごとの短い文章が並び、間に数行の空白がある。短い断章がなんとなくつながっている感じだが、この空白がとてもいい効果を出していて、「そうだよねー」と思いながら、のんびりと読み進むことができた。
本を読むスピードの話。拾い読みの効用。ダイジェストと
ジョイス・キャロル・オーツ『ジャック・オブ・スペード』栩木玲子訳、河出書房新社
品のあるホラー小説を書く作家アンドリュー・J・ラッシュには、実は心に秘めた暴力性があり、最近では家族にも黙って匿名作家「ジャック・オブ・スペード」としてもホラー小説を書いている。こちらの方は、マッチョで、品性がなく、やたらと残虐に人が殺されるのだ。あるときラッシュが近所に住む素人作家の老婆に「自分のアイディアを盗んだ」と訴えられたのをきっかけに、彼の中で「ジャック・オブ・スペード」の声が大きくなっ
もっとみるたまに英語の小説を読む。クレア・キーガンのSo Late in the Day(苦い)、マーガレット・アトウッドのWilderness Tips(まだ途中)。あと数年前に読んだアリス・マンローDear Lifeをもう一度読みたくて翻訳を入手したがなぜか読みにくくて中断中。