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病気持ちワーママの育児と働き方。先輩ママ2人に聞いてみたら生きるヒントしかなかった

シェーグレン症候群を抱える筆者は現在32歳。年齢的に、そろそろ出産育児のことも考えるけれど、病気のことがあり、なかなか不安が拭えません。
そこで同じ病気を持つ先輩ママの経験談を聞いてみたいと思いこの対談を企画しました。
今回お話を伺ったのは、Twitterで膠原病について発信されていたあんじゅさんと、イラストレーターのにわゆりさんです。


そもそもシェーグレン症候群ってなに?

シェーグレン症候群(指定難病53)
1.概要
慢性唾液腺炎と乾燥性角結膜炎を主徴とし、多彩な自己抗体の出現や高ガンマグロブリン血症を来す自己免疫疾患の一つである。乾燥症が主症状となるが、唾液腺、涙腺だけでなく、全身の外分泌腺が系統的に障害されるため、autoimmune exocrinopathyとも称される。
シェーグレン症候群は他の膠原病の合併がみられない一次性と関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病を合併する二次性とに大別される。さらに、一次性シェーグレン症候群は、病変が涙腺、唾液腺に限局する腺型と病変が全身諸臓器に及ぶ腺外型とに分けられる。
様々な自己抗体の出現や臓器に浸潤した自己反応性リンパ球の存在により、自己免疫応答がその病因として考えられている。ポリクローナルな高ガンマグロブリン血症のほか、抗核抗体、リウマトイド因子、抗SS‐A抗体、抗SS‐B抗体などの自己抗体が出現する。

公益財団法人 難病医学研究財団/難病情報センター

シェーグレン症候群は膠原病のひとつで、自分の免疫機能がなぜか自分を攻撃してしまうという病気です。常に体が戦っており、体内で炎症反応があり倦怠感と特に目や肌、喉といった粘膜が渇きます

紫外線を浴びると症状が悪化するのも特徴です。関節がこわばったり、指先にしもやけができたりとぱっと見では病気に見えない症状がたくさんある病気です。子供に1〜5%の確率で心臓に障害が出るため大学病院など大きな病院での出産が必須なのも特徴です。

出産とシェーグレン症候群

ーーおふたりがシェーグレン症候群になったのはいつ頃なのでしょうか?

にわゆりさん:第二子を出産した後にわかりました。ひとり目の妊娠時とは違う倦怠感があり、妊娠中から点滴を打ったり「しんどいな〜」と思っていたのですが、ふたり目を出産して1年後のこと。まだ疲れが抜けない中、急に目が腫れたため眼科に行き薬を出してもらいました。

ところがすぐ治るはずが、また新しい傷ができていて……。1年前ほどから原因不明の耳下腺の腫れと高熱が2回でたことも話すと「これは何かおかしい」と眼科の先生が気づいてくれて、紹介書を持って大きな病院に行きそこでシェーグレン症候群の診断がつきました。

ーーあんじゅさんはもともと関節リウマチをお持ちで、後からシェーグレン症候群の診断がついたとお伺いしましたが、どのタイミングでシェーグレン症候群だとわかったのでしょうか?

あんじゅさん:出産後にシェーグレン症候群の診断がつきました。産後ホルモンの変化で発症してしまい、これまでのリウマチに加えて目が乾く、喉が渇いてカピカピになって、耳下腺が腫れて微熱が出たり、だるさもひどく大変でした。

ーーシェーグレン症候群は他の膠原病の合併がみられない一次性と関節リウマチや全身性エリテマトーデスなどの膠原病を合併する二次性とに大別され、あんじゅさんは二次性に当てはまりますね。筆者もいずれはリウマチになる可能性が高く覚悟はしています。

日に当たれない育児の難しさはどう乗り越える?

ーーシェーグレン症候群持ちの育児で1番リスクだなと思う点が、紫外線を浴びると症状が悪化することです。強い紫外線を浴びた後は具合が悪くなり、微熱と倦怠感から動けなくなる。そんな体質で、保育園の送迎や、体力が無限にある子どもとの外遊びなどどうされているのか聞きたいです……!

あんじゅさん:送迎は朝から夕方まで預かってくれる保育所に通っているので、意外と日差しは大丈夫ですよ。

ーーなるほど! 夕方まで見てくれる保育園を探せばいいのですね。これは目から鱗でした。土日など休日はどうしていますか?

あんじゅさん:土日に子どもを外で遊ばせるときは、パパも一緒に行って私は木陰で見守っています。小さな頃から外遊びはパパ担当だったので、特に寂しいとも思わないようです(笑)。

にわゆりさん:疲れやすいのでとにかくすぐ横になることが大事です。

ーー疲れたら休む。シンプルだけれども1番いいアドバイスに思います。


仕事と育児と病気と。難しいと感じること

ーーそもそも育児と仕事の両立も大変な中、病気もあると働き方も難しいように感じますが、どのように仕事と育児と病気を両立させていますか?

にわゆりさん:私は第一子を出産したタイミングでフリーランスのイラストレーターとして独立しました。締切が重なりがちなので、根を詰めて仕事をして翌週は仕事を入れずにゆっくりするなど、緩急をつけています。具合が悪い時は寝ながら仕事をすることも。

ーーその働き方やスケジュール術はマネしたいです。

あんじゅさん:現在はフルリモートの会社で働いており、フレックス制度なので、疲れたら昼休みを長く取ってその分夜まで働くなど体調に合わせて柔軟にできるので無理なく働けています。

ーー転職活動時からフルリモートの会社を探されていたとお聞きしましたが、持病のことは面接時から言っていましたか?

あんじゅさん:割と話していました。それが原因でだめになったところより、病気があっても仕事ができればOK! というスタンスの企業の方が、相性はいいはずですから。言っておいてよかったなと思います。
病気を隠して無理して頑張って、結局からだを壊して辞めるよりかは長く続けられる会社を選びました。

ーー長く働いてくれる方が企業側にとってメリットになりますしね。勤務時間も気になります。どのくらい働かれていますか?

あんじゅさん:会社のためにめっちゃ働くのはもうやめよう、と言うかできなくて、いまは週4の時短勤務で働いています。

ーー筆者もフリーランスですが10時〜17時をオフィスアワーにしていて、その時間以外は打ち合わせなど入れないようにしています。

にわゆりさん:現在はフリーランスですが、フルリモートなら週2日くらい会社に勤めて社会と繋がるのもいいなと思います。自宅で仕事をするとどうしても人と会わず、抑うつになりやすいので外とのつながりは大切にしたいです。

ーー社会とのつながりは本当に大切だと思います。そういう意味では仕事がのおかげで、人や物事との接し方がうまくできたり、明るい性格になれているのかも。

医療機関の利用や家族や周囲のサポートなど

ーー続いて生活の面でシッターさんや家事代行、両親のサポートなどは得られましたか? またアドバイスがあれば教えてください。

あんじゅさん:紫外線にあたったら疲れたり熱が出たりするのを家族に知ってもらうよう説明することですね。ぱっと見だと病気だとわからないので、周囲への説明がサポートを得るための第一歩です。
結婚前からリウマチがあったので、パートナーには将来的に合併症のリスクがあること、車椅子生活になるかもしれないことを説明して結婚しました。今では病気のことも理解をしてくれて、外遊びはパパ担当です。実家からのサポートも助けてもらいましたし、生後3ヶ月からベビーシッターや家事代行もお願いしていました。

にわゆりさん:私はママ友に助けられています。外遊びに一緒に連れて行ってもらったりとか。紫外線にあたれないことや病気のことを結構周りに話していますね。アドバイスは、何事もほどほどにあんまり頑張りすぎないことです。

ーー結構周りに話してるのですね! 筆者はあまり周りに病気のことを話してこなかったのですが、話していいんだ。むしろ話した方がいいと思えました。サポートを得るためには自己開示や周りへの説明も必要ですね。

産休育休の理想と現実

ーー筆者はフリーランスで産休育休がないのですが、理想の産休育休についてお伺いしたいです。もしこれから産むならどうしたいですか?

あんじゅさん:第一子の時は、早く戻らないと席がなくなるんじゃないかとか、当時勤めていた会社から「早く戻ってもらわないと困るから助けて!」みたいな感じで産後3ヶ月ほどで、仕事に復帰しました。

でも本当に大変で(笑)。妊娠中はホルモンバランスの変化でリウマチやシェーグレン症候群の症状が落ち着いていて、産後はアドレナリンが出るし比較的元気でした。でも3ヶ月目からどっと病気の症状が戻ってきて、本当にしんどかった。なので育休の理想としては1年間〜1年半は休みたいです。

ーー症状も仕事も一気に帰ってくるのは、しんどいですね。

あんじゅさん:だから1年半フルで休んで、その後にめちゃくちゃ頑張って働くことを今なら選びます。

今振り返れば長い仕事人生のうちのほんの短い期間なのに、必要以上に焦っていたな〜と思います(笑)。
これまでやってきたことが正しく自分がビジネスマンとして大きく成長できていれば、ほんの少し仕事していない期間があったからといって、全然またやり直せるって今になって思います。

ーーあんじゅさんのお話を聞いて思い出したインタビュー記事があります。「H&M(エイチアンドエム)」のPRの方のお話で、日本だと産休って仕事に穴が空くとネガティブに捉えられがちだけど、「H&M」はスウェーデンの企業だからその考えはなくて、「産休は長い80年の人生のうちのたった1、2年でしょう?」といった感覚なんだそう。戻って同じチームではなくとも、仕事はいくらでもありますからね。って答えてて素敵だなと思いました。

シェーグレン症候群の出産・育児に向き合う上でのアドバイス

ーー最後にシェーグレン症候群を抱える中、やってよかったことや買ってよかったモノ。病気との向き合い方があればお聞かせください。

にわゆりさん:とにかく頑張りすぎない、ずっと横になれるなら横になっていてと伝えたいです。
初めての子どもだと理想的な育児を追い求めてしまうけれど、赤ちゃんが生きてればOKなのです。自分のからだ優先で。
病気がこんなにだるいなんて、病気になる前には想像もできなかったから、今では病気の人の大変さがよくわかるようになりました。これは病気になってよかったことのひとつだと思います。

あと買ってよかったものは、睡眠時の渇き対策に「のどぬ〜るぬれマスク」です。

あんじゅさん:それ病気のせいだからと言っていい。それって怠けじゃなくて免疫のせいだから、あなたのせいじゃない。「やらなきゃいけないことができない私」がだめなんじゃないと伝えたいです。

最近よかったものは、目薬に「ジクアスLX点眼液3%」と言うものが出ていて、今まで1日に6回ささなくてはいけなかった目薬が、1日3回で済むというものです。

ーー「ジクアスLX」知らなかったです! 目薬でこんなに盛り上がれるのはシェーグレン症候群のひとならではかもしれません。
シェーグレン症候群は唾液の分泌が少ないため虫歯になりやすいのですが、虫歯対策はどうしていますか?

あんじゅさん:3ヶ月に1回歯医者で検診。ホームケアは、電動歯ブラシウォーターピッカーフッ素最強の歯磨き粉「チェックアップ 」リステリンを使っています。

ーー「チェックアップ 」気になっていました。おすすめしてもらったもの買ってみます! ちなみに筆者のおすすめは耳下腺や喉の腫れに市販で買える「ペラック」。処方薬だとトラネキサム酸です。そしてビタミンCとAもとっています。あとは喉の乾燥で血痰ができやすいので去痰薬も。この組み合わせで喉の痛みはここ数年悪化していません。

まとめ:がんばりすぎない。疲れたら横になる

じつは同じ病気を持つ人と話すのは、今回が初めてでした。そもそもシェーグレン症候群は珍しい病気なので、普通に生活していて同じ病気の人と出会うことはありません。
同じ病気の人と話すのはちょっと緊張していたのですが、お二人とも朗らかでとにかく無理をしないで生きる姿が美しかったです。

筆者は性格的に「もっと頑張らないと」と考えがちです。努力が好きです。しかし同じ病気の人と話してみると、やっぱいまの生活キツイよな。もっと休んだ方がいいなと感じました。
負けへんでよりもまたあしたの精神で。またあしたも会えるように、ほどほどに休み休み生きていきたいと。

インタビュー執筆にあたり「子どもを持つ親が病気になった時に読む本: 伝え方・暮らし方・お金のこと」という本を読んだのですが、ヒントになる考え方がたくさんありました。中でも筆者がいいなと思った箇所が以下です。

体力は、銀行の貯金のようなものです。限られた量の貯金(体力)しかありませんから、一日のうちに使えるエネルギーは残高を見ながらということになります。たくさんのことを一気にするのではなく、動くのは次の振り込みがすんでから(体力が回復してから)、ということにします。

子どもを持つ親が病気になった時に読む本: 伝え方・暮らし方・お金のこと

病気があっても子育てをする上で、生きやすさのヒントを学んだ今回のインタビュー。なかなか病気のことで共感や生活の知恵を得られることがないので、また機会があれば第2回目も開催できたらなと思います。もちろん休み休みです。

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