水述 諦

MIZUNO Akira. 自分が綴った小説や携わった企画などをまとめています

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    同人サークル【文売班 白黒斑】から刊行された本の一覧

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記事一覧

固定された記事

『スナイパーの意外な使い方』

「本当に無かったの?」 インドの女性首相・ニシャは秘書に尋ねた。 「申し訳ありません。不注意で在庫を切らしておりました」 「今すぐ買って来て!」 「小間使いは既に出…

水述 諦
10か月前
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[月記]24年3月 発熱

年末にインフルエンザに罹った。 クリスマス直前から体調が悪くなって、立てなくなり、クリスマスの予定はやむなくキャンセルになった。 しかし、その予定は「プリキュア …

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1日前

[月記]24年2月 後悔

後悔曰く「先立つ不孝をお許しください」。 残された者曰く「先に立つならもっと早くにしてくれ」。            ◇          ◇ 絶対に後悔はした…

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3週間前
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[月記]24年1月 怠惰

素でだいたい怠惰です。(創作回文)            ◇          ◇ 聖書には七つの大罪が記されている。 怠惰・暴食・色欲・強欲・憤怒・嫉妬・傲慢だ…

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1か月前
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2023のたほい屋 (水#11)

Written by 水述 諦 ごいりょくつよつよマンになりたーい♡            ◇          ◇ ほとんど毎週、知らない単語に出会っている。30歳近くにな…

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2か月前
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[月記]23年12月 投資

2024年から新NISAが始まる。投資の勉強をしていると、投資で成功するのに必要な要素はどこまでも論理的な姿勢なのだとつくづく思う。お金持ちになれるかどうかは資本主義と…

水述 諦
4か月前
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[月記]23年11月 自殺

死んでしまった後のように、じっと自殺について思いを巡らしている。 殺人と呼ばれる行為の中で、特に殺害対象が自分である場合に限ってそれは自殺と呼称される。自殺でな…

水述 諦
4か月前
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[月記]23年10月 相補

物理学において、光は電磁波──つまり「波」であり、同時に光子──つまり「粒」でもある。対象が小さければ小さいほど、それらの境界は曖昧になっていく。我々が光につい…

水述 諦
6か月前
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[月記]23年9月 饂飩

9月に更新するはずだったのに、気が付けばもう10月も半ばになってしまいました。そうです、私は文章を綴ることに疲れてしまったのです。代わりにこれからは饂飩を啜ること…

水述 諦
7か月前
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《感想文》『映画プリキュアオールスターズF』

注意:重大なネタバレを含みます。 23年秋公開の映画プリキュア。オールスターズ系は実に5年ぶりで、期待が高まる。20周年の節目の映画でもあるので、制作サイドにも気合…

水述 諦
7か月前
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『つぎはぎポケット』あとがき

同人サークル【文売班 白黒斑 / Boolean Monochrome】は2023年9月10日開催の文学フリマ大阪11にて、詩集『つぎはぎポケット』を発表・発売いたしました。本記事では著者で…

水述 諦
8か月前
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◆第3作『つぎはぎポケット』

ご購入は こちら から ジャンル:詩集 ページ数:116頁 発行日:2023年9月10日 第1版 発行:文売班 白黒斑 / Boolean Monochrome 国際標準同人誌番号, ISDN:278-4-52710…

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8か月前
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◆第2作『空想 日常鳥図鑑』

ご購入は こちら から ジャンル:絵本 ページ数:32頁 発行日:2023年9月10日 第1版 発行:文売班 白黒斑 / Boolean Monochrome 国際標準同人誌番号, ISDN:278-4-527107…

水述 諦
8か月前
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[月記]23年8月 飽和

最近、頭の中がたくさんのやりたいことで飽和している。 人はこれを「幸っている」と呼ぶ。            ◇          ◇ 二兎を追う者は一兎をも得…

水述 諦
9か月前
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《感想文》『残酷で異常』

注意:重大なネタバレを含みます。 2014年、カナダの映画。原題は『Cruel and Unusual』だ。 前半は、時間軸の遷移がきわめて面白い。 (1) 予知夢 → (2) 現実 → (3) 死…

水述 諦
9か月前
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《感想文》『エスター ファースト・キル』

注意:軽微なネタバレを含みます。 2009年の洋画『エスター』の前日譚。『エスター』は僕のお気に入りのホラー映画なので、13年越しに新作が発表されたことは大変嬉しかっ…

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9か月前
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固定された記事

『スナイパーの意外な使い方』

「本当に無かったの?」 インドの女性首相・ニシャは秘書に尋ねた。 「申し訳ありません。不注意で在庫を切らしておりました」 「今すぐ買って来て!」 「小間使いは既に出しましたが、もう時間が……」 ニシャは眉間に皺を寄せたが、明晰な頭脳ですぐに妙案を閃く。 「護衛隊にスナイパーがいたわね」 「はい、おります。それがいかがなさいましたか」 「すぐに彼を呼んで。頼みごとがあるの」 定刻になり、ニシャは慎重な動きで演壇に立った。三万の民衆が彼女に注目している。ニシャは緊張しながら演説

[月記]24年3月 発熱

年末にインフルエンザに罹った。 クリスマス直前から体調が悪くなって、立てなくなり、クリスマスの予定はやむなくキャンセルになった。 しかし、その予定は「プリキュア クリスマスコンサート 2023」を見に行くことであり、私は28歳独身男性なので、もしかするとこれで良かったのかもしれない。子供も隣の席に私がいたら気にかかろう。 年内はずっと39度台の熱が続く。年明けの1/2に熱が37度まで下がり、かなり症状は収まってきた。少し頭は痛いが、ずっと横になって何もできないというほどでは

[月記]24年2月 後悔

後悔曰く「先立つ不孝をお許しください」。 残された者曰く「先に立つならもっと早くにしてくれ」。            ◇          ◇ 絶対に後悔はしたくない、と思いながら日々を生きている。 子供の頃は無限大の可能性を秘めていたはずなのに、年を取るごとに人生が少しずつ収束していって、私たちは骨ばった真実でがんじがらめになる。学歴・就職・結婚・老後・自己実現。それらが理想的であるにせよそうでないにせよ、確定した事実は時間経過に比例して覆しにくくなってきて、それはゆっ

[月記]24年1月 怠惰

素でだいたい怠惰です。(創作回文)            ◇          ◇ 聖書には七つの大罪が記されている。 怠惰・暴食・色欲・強欲・憤怒・嫉妬・傲慢だ。大罪というと大いなる罪のように聞こえるが、誰しもが囚われがちなこれらには様々な罪を生む根源の欲求という意味がある。 マズローの5段階欲求に当てはめるなら、怠惰・暴食・色欲は生理的欲求に、強欲・憤怒・嫉妬・傲慢は安全の欲求や社会的欲求に分類されるだろう。いずれにせよ、生き物であればこれらを跳ね除けるのは容易ではな

2023のたほい屋 (水#11)

Written by 水述 諦 ごいりょくつよつよマンになりたーい♡            ◇          ◇ ほとんど毎週、知らない単語に出会っている。30歳近くになってもこんなに何も知らないなんて本当に世界は広すぎるし楽しすぎるな、としばしば思う。物知りになりたいが、知るべきものの夥しさはあまりに底知れず、知れば知るほど自分が完璧な物知りからは遠い存在であることを知る。いわゆる無知の知だ。知識人とは無知の知をどれだけ知っているかということであり、だからソクラテ

[月記]23年12月 投資

2024年から新NISAが始まる。投資の勉強をしていると、投資で成功するのに必要な要素はどこまでも論理的な姿勢なのだとつくづく思う。お金持ちになれるかどうかは資本主義というルールの下で資産という「数字」をできるだけ大きくするゲームだと言えるので、完璧を突き詰めれば突き詰めるほど感情を差し挟む余地は無くなっていく。クッキークリッカーRTA走者は闇雲にボタンを押すというプレイングを行わない、と言えば伝わりやすいだろうか。 投資が難しいのは、この「数字」が我々の人生にあまりにも直

[月記]23年11月 自殺

死んでしまった後のように、じっと自殺について思いを巡らしている。 殺人と呼ばれる行為の中で、特に殺害対象が自分である場合に限ってそれは自殺と呼称される。自殺でない殺人においてその行為に対する責任は必ず自らに返ってくるが、自殺の場合はその行為によって自らを全ての責任から解放してくれる。自殺は殺人に包含されながらも、殺人とはもっとも遠い場所にある。 ある少年が自殺をしたとする。誰かに唆されたのではなく、文字通り自決をしたとする。このとき、周りの人々は少年の死を悼む。だが、自殺

[月記]23年10月 相補

物理学において、光は電磁波──つまり「波」であり、同時に光子──つまり「粒」でもある。対象が小さければ小さいほど、それらの境界は曖昧になっていく。我々が光について深く知ろうとするとき、波動性という観点と粒子性という観点の両方からアプローチしなければその本質を掴むことはできない。古典力学と量子力学が排他的に対象を記述することで系の完全な記述が得られ、これらの関係は相補性と呼ばれる。 同様に。我々が芸術について深く知ろうとするとき、その端緒として自分の中の芸術を作品という形で表

[月記]23年9月 饂飩

9月に更新するはずだったのに、気が付けばもう10月も半ばになってしまいました。そうです、私は文章を綴ることに疲れてしまったのです。代わりにこれからは饂飩を啜ることにします。ちゅるるるる~☆            ◇          ◇ うどんと語り合わねばならぬ、と思った。 パスタほど気安くなくて、ラーメンほど八方美人でなくて、蕎麦ほど高貴でない麺と語り合らわねばならぬと思った。彼らだってなかなか素敵な麺子には違いないが、私の胃袋に満たされているこの漠然とした不安を打ち

《感想文》『映画プリキュアオールスターズF』

注意:重大なネタバレを含みます。 23年秋公開の映画プリキュア。オールスターズ系は実に5年ぶりで、期待が高まる。20周年の節目の映画でもあるので、制作サイドにも気合いが入っている。 今作では4人一組のチームが4つ存在しており、それぞれのチームが仲間と合流するためにランドマークとなる塔を目指していく。 各チームの取り合わせが面白く、スカイチームは主人公枠が揃っており、大変パワフルだ。スカイが今の自分たちの行動に不安を覚えた時、プレシャスとサマーが互いの信念と決め台詞でスカ

『つぎはぎポケット』あとがき

同人サークル【文売班 白黒斑 / Boolean Monochrome】は2023年9月10日開催の文学フリマ大阪11にて、詩集『つぎはぎポケット』を発表・発売いたしました。本記事では著者である水述 諦が、本書の内容について詩的に振り返ります。 ※ 本記事は、本書の読了を前提としています 1.恥遥けき衰え 始まりの詩。悍ましい死が目前に迫るなら、きっと私は詩を求める。 『人間合格』 本名の頭文字が母音なので、学生時代の出席番号はいつも早かった。大抵は窓際の列に座席があ

◆第3作『つぎはぎポケット』

ご購入は こちら から ジャンル:詩集 ページ数:116頁 発行日:2023年9月10日 第1版 発行:文売班 白黒斑 / Boolean Monochrome 国際標準同人誌番号, ISDN:278-4-527107-03-6 《説明》 人生はたったと百十行で駆け抜けて、衣食住はたった五文字のリポグラムで書き表される。数字は一列に並び夢幻の意味を生成し、真夜中は一抹の不安を無限に増幅させてゆく。 恥・生活・五言詩・叙情主義・十進数・孤独・恋。虹のようにきらめく七つのテー

◆第2作『空想 日常鳥図鑑』

ご購入は こちら から ジャンル:絵本 ページ数:32頁 発行日:2023年9月10日 第1版 発行:文売班 白黒斑 / Boolean Monochrome 国際標準同人誌番号, ISDN:278-4-527107-02-9 ご購入は こちら から 読後アンケートは こちら から

[月記]23年8月 飽和

最近、頭の中がたくさんのやりたいことで飽和している。 人はこれを「幸っている」と呼ぶ。            ◇          ◇ 二兎を追う者は一兎をも得ずというが、複数の物事が同時進行すればするほど、各タスクは中途半端な結果に終わりがちだ。目標は常に認識できる数に絞り込まれていた方が良い。皮算用をしている時間は確かに楽しいが、実際に皮を得なければ楽しいだけで終わってしまう。 まずは自分が今やりたいことを、思い付くままに書き出してみる。 文学フリマ大阪に向けて原

《感想文》『残酷で異常』

注意:重大なネタバレを含みます。 2014年、カナダの映画。原題は『Cruel and Unusual』だ。 前半は、時間軸の遷移がきわめて面白い。 (1) 予知夢 → (2) 現実 → (3) 死後(矯正施設型の地獄) → (4) 過去(=罪を犯した日)の追体験 → (5) 追体験(2周目) → (6) 死後 → (7) 過去の追体験(n回目) となるわけだが、この "残酷で異常な構造" の詳細を理解していく過程そのものに大きな楽しみがある。情報の開示の順序が非常に綿

《感想文》『エスター ファースト・キル』

注意:軽微なネタバレを含みます。 2009年の洋画『エスター』の前日譚。『エスター』は僕のお気に入りのホラー映画なので、13年越しに新作が発表されたことは大変嬉しかった。 『エスター』の原題はOrphan = 孤児の意味だが、このタイトルが既に物語の伏線となっているところがとても好きだ。それからエスター役のイザベル・ファーマンが大変かわいらしい。ツインテールもクラシカルロリータ服も僕の趣味嗜好だが、秀逸な伏線もまた僕の趣味嗜好だ。実はチョーカーにおしゃれ以外の目的があった