もくめ

2020年11月から短歌を始めました。歌集の感想などを書いていく予定です。よろしくお願…

もくめ

2020年11月から短歌を始めました。歌集の感想などを書いていく予定です。よろしくお願いいたします。X→mokume_88

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    色んな方々の短歌を読んで感想を書いています。

記事一覧

『次世代短歌 新作集2024』

アンソロジー『次世代短歌 新作集2024』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 大抵のやさしさはよいものとされています。 でもこの歌の「やさしさ」は、「薬と毒…

もくめ
14時間前
2

ネプリ『はるのはなことば』

ネプリ『はるのはなことば』を出力しました。 蔵野依心さんが呼びかけて集まった歌人たちが、春の花言葉をテーマに3首ずつ詠んでいます(私も参加させて頂いております!)…

もくめ
2日前
5

埜中なの『再上映』

埜中なのさんの歌集『再上映』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 人によるとは思いますが、ひとり暮らしをしていると、なかなかセットの食器を買わなかったり…

もくめ
7日前
4

真島朱火『星に願いが届くころ』

真島朱火さんの歌集『星に願いが届くころ』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 歳を取った自分を見つめるということは、積み重ねた後悔を振り返ることでもある…

もくめ
9日前
2

鈴木智花『いつか骨まで海になるまで』

鈴木智花さんの歌集『いつか骨まで海になるまで』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 缶詰を開けた時に、フチぎりぎりまで入っているシロップですね。 誰かに対…

もくめ
11日前
3

なべとびすこ『クランクアップ』

なべとびすこさんの『クランクアップ』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 上の句の冗談めいた言い方と、下の句の切実さの落差に惹かれました。 主体にとっては…

もくめ
13日前
5

ネプリ『夜型 vol.1』

ネプリ『夜型 vol.1』(作者:甲斐さん)を拝読しました。 短歌連作と詩が載っている作品です。 印象に残った歌を引きます。 眼の中の硝子ってなんだろうとか、光ったら相…

もくめ
2週間前
6

ネプリ「夏机・雨宮琴陽 いちごつみ日記『旅路』」

ネプリ「夏机・雨宮琴陽 いちごつみ日記『旅路』」を拝読しました。 短歌と日記で構成されている作品です。 印象に残った歌と文章を引きます。 自分で自分を傷つける言葉…

もくめ
2週間前
7

ネプリ『短歌カフェ1号店』

短歌カフェ1号店に入店しました。 さっそく注文したいと思います。 お店がおすすめしているコーヒーが口に合わなかったらどうしましょう。 居心地も良いし、行きやすい場…

もくめ
3週間前
11

堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』

堂園昌彦さんの『やがて秋茄子へと到る』(港の人)を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 自分から遠いどこかの草原で花が咲く。 自分とは関係のないところで、常…

もくめ
1か月前
3

ネプリ『Supplement vol.0』

ネプリ『Supplement vol.0』(瀬生ゆう子さん、山田香ふみさん、桜庭紀子さん)を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 ぎゅうぎゅうのバスや電車って本当に辛いで…

もくめ
1か月前
6

岩倉曰『ハンチング帽のエビ』

岩倉曰さんの『ハンチング帽のエビ』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 あるある!と嬉しくなりました。 私もこの間、「コーヒーミルク」が聞き取れなくて聞き…

もくめ
1か月前
6

ネプリ『珈琲日和 Vol.14』

ネプリ『珈琲日和 Vol.14』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 上の句に込められている、「あなたの触れたものに触れたい」という、とても純粋な願いに惹かれま…

もくめ
1か月前
4

ネプリ『第一回 不穏婦人会』

ネプリ『第一回 不穏婦人会』を拝読しました。 印象に残った歌を引きます。 10,000ピースのジグソーパズルでしょうか。 一つとして同じものはなく、全てが等しく全体を構…

もくめ
1か月前
9

ネプリ『さざなみ紀行 Vol.0』

ネプリ『さざなみ紀行 Vol.0』(石村まいさん、早月くらさん)を拝読しました。 さざなみ紀行は、短歌+エッセイ+写真で構成されています。 今回は、エッセイから印象に残…

もくめ
1か月前
7

ネプリ『Vol.2 あめふる』

ネプリ『Vol.2 あめふる』(八幡氷雨さん、鈴木智花さん)を読みました。 印象に残った歌を引きます。 カーナビが案内するのは、あくまで道順です。 運転手が目的地に着く…

もくめ
1か月前
8
『次世代短歌 新作集2024』

『次世代短歌 新作集2024』

アンソロジー『次世代短歌 新作集2024』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

大抵のやさしさはよいものとされています。
でもこの歌の「やさしさ」は、「薬と毒は紙一重」のような使い方をされていると思いました。
相手はよかれと思って主体にやさしくしていますが、主体にとって与えられた「やさしさ」は大事件なのかもしれませんね。
切れ目を入れているのはトーストですが、主体自身が身を切っているよう

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ネプリ『はるのはなことば』

ネプリ『はるのはなことば』

ネプリ『はるのはなことば』を出力しました。
蔵野依心さんが呼びかけて集まった歌人たちが、春の花言葉をテーマに3首ずつ詠んでいます(私も参加させて頂いております!)。

それでは、印象に残った歌を引きます。

「バファリンの半分は優しさで出来ている」
有名なキャッチフレーズですね。
実際は有効な成分が入っているからこそ、優しさもプラスされているのが沁みる。
辛い時、しんどい時、優しさが嬉しい時もあり

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埜中なの『再上映』

埜中なの『再上映』

埜中なのさんの歌集『再上映』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

人によるとは思いますが、ひとり暮らしをしていると、なかなかセットの食器を買わなかったりしますよね。
自分の好きなデザインの食器をぽんっと買ってしまったりなんかして。
たまに食器棚を覗くと、ばらばらの食器が並んでいる。
下の句は人間にフォーカスがあたります。
この歌では人間は形の違う「うつわ」としてとらえているようですね。

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真島朱火『星に願いが届くころ』

真島朱火『星に願いが届くころ』

真島朱火さんの歌集『星に願いが届くころ』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

歳を取った自分を見つめるということは、積み重ねた後悔を振り返ることでもあるのかもしれません。
主体の具体的な後悔は描かれていませんが、人と関わる上での後悔なのではないかと読み取りました。
やればよかったこと、やらなければよかったこと、やりすぎてしまったこと。
後悔を見つめながら自分を祝うことができる主体は、誠実

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鈴木智花『いつか骨まで海になるまで』

鈴木智花『いつか骨まで海になるまで』

鈴木智花さんの歌集『いつか骨まで海になるまで』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

缶詰を開けた時に、フチぎりぎりまで入っているシロップですね。
誰かに対する主体のやさしい気持ちが、あふれんばかりに詰まっています。
缶詰を静かに開けるには、少し力がいりますね。
やさしさを誰かに手渡すためには、強さも必要なのかもしれませんね。

語感がとてもよくて、口ずさみたくなるお歌です。
家族関係は強

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なべとびすこ『クランクアップ』

なべとびすこ『クランクアップ』

なべとびすこさんの『クランクアップ』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

上の句の冗談めいた言い方と、下の句の切実さの落差に惹かれました。
主体にとっては、来てほしい時に誰かが来ることは、雨を呼ぶことくらいありえない現象なんですね。
「来てほしい」の「ほしい」がひらがなであることで、より純粋な願いという印象を受けました。

塗り薬や飲み薬を常用するのが当たり前になった日常で、たまに思って

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ネプリ『夜型 vol.1』

ネプリ『夜型 vol.1』

ネプリ『夜型 vol.1』(作者:甲斐さん)を拝読しました。
短歌連作と詩が載っている作品です。
印象に残った歌を引きます。

眼の中の硝子ってなんだろうとか、光ったら相手は本当に喜ぶのかとか、そんなことはどうでもよくて、まばたきをする頻度くらい喜ばせたい相手が主体にはいるということが大切なのだろうと思いました。
まばたきは基本無意識にするものです。
無意識にする動作で相手を喜ばせようとする主体。

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ネプリ「夏机・雨宮琴陽 いちごつみ日記『旅路』」

ネプリ「夏机・雨宮琴陽 いちごつみ日記『旅路』」

ネプリ「夏机・雨宮琴陽 いちごつみ日記『旅路』」を拝読しました。
短歌と日記で構成されている作品です。
印象に残った歌と文章を引きます。

自分で自分を傷つける言葉を、頭の中で繰り返してしまうことってありますよね。
しんどさでぐちゃぐちゃになって、止められなくて。
自分を否定することは案外簡単で、しかもクセになりやすいからやっかいです。
自分から距離を取って、冷静に、公平に見ていくこと。
「より優

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ネプリ『短歌カフェ1号店』

ネプリ『短歌カフェ1号店』

短歌カフェ1号店に入店しました。
さっそく注文したいと思います。

お店がおすすめしているコーヒーが口に合わなかったらどうしましょう。
居心地も良いし、行きやすい場所にあるから、行きつけのお店にしたいのに、「当店のスペシャルブレンド」だけは好きになれない…。
この店の主役とも言える存在と馴染めない悲しさ。
拒絶されているような寂しさ。
下の句の言い回しにどうしようもない疎外感を感じて印象に残りまし

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堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』

堂園昌彦『やがて秋茄子へと到る』

堂園昌彦さんの『やがて秋茄子へと到る』(港の人)を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

自分から遠いどこかの草原で花が咲く。
自分とは関係のないところで、常に何かが起こっている。
それを自分は決して見ることはできない。
関係することのできないたくさんの出来事がこの世にあるという、途方もない恐怖が表現されていると思いました。

「護られて」という表記が印象に残ります。
「護る」という表記は、

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ネプリ『Supplement vol.0』

ネプリ『Supplement vol.0』

ネプリ『Supplement vol.0』(瀬生ゆう子さん、山田香ふみさん、桜庭紀子さん)を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

ぎゅうぎゅうのバスや電車って本当に辛いですよね。
高校生の頃なんかは、遠慮を知らなかったので、友達と「せまいせまい!」と言い合ったりしましたが、大人になった今は素知らぬ顔(できてるかしら?)で乗っています。
あの空間では、「全員が辛い」という謎の連帯感が生まれま

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岩倉曰『ハンチング帽のエビ』

岩倉曰『ハンチング帽のエビ』

岩倉曰さんの『ハンチング帽のエビ』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

あるある!と嬉しくなりました。
私もこの間、「コーヒーミルク」が聞き取れなくて聞き返したんですけど、同じ声量と速さで返されて、一拍置いて脳が追いついて理解しました。 
マニュアルっぽい対応だと、起こりやすい気がします。
伝わるように言っていると思っている人と、聞き取りたいのに聞き取れない人。
すれ違いは切ないものです

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ネプリ『珈琲日和 Vol.14』

ネプリ『珈琲日和 Vol.14』

ネプリ『珈琲日和 Vol.14』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

上の句に込められている、「あなたの触れたものに触れたい」という、とても純粋な願いに惹かれました。
同じコーヒーを飲むことではなく、その前段階の「ボタンを押す」にフォーカスを当てているのが面白いなと思いました。

下の句の柔らかさに惹かれました。
「ぬるくなったと思われる」なので、ぬるくなったかどうかまだ分かりません。

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ネプリ『第一回 不穏婦人会』

ネプリ『第一回 不穏婦人会』

ネプリ『第一回 不穏婦人会』を拝読しました。
印象に残った歌を引きます。

10,000ピースのジグソーパズルでしょうか。
一つとして同じものはなく、全てが等しく全体を構成する要素になっている。
意味のないものがないということは、余白や余裕がないということでもあります。
余分なものが入るから、人生は面白くなる。
意味のあることだけをしていたら、つまらない。
そんなメッセージを受け取ったような気がし

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ネプリ『さざなみ紀行 Vol.0』

ネプリ『さざなみ紀行 Vol.0』

ネプリ『さざなみ紀行 Vol.0』(石村まいさん、早月くらさん)を拝読しました。
さざなみ紀行は、短歌+エッセイ+写真で構成されています。
今回は、エッセイから印象に残った文章を引きます。

鳥取砂丘いいですね。
いつか行ってみたいです。
私もテーマパークみたいなものを想像してしまっていて、この記述に惹かれました。
「砂丘」は自然にあるんですものね。
囲いも何もなく、ただそこにある。
そこが観光地

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ネプリ『Vol.2 あめふる』

ネプリ『Vol.2 あめふる』

ネプリ『Vol.2 あめふる』(八幡氷雨さん、鈴木智花さん)を読みました。
印象に残った歌を引きます。

カーナビが案内するのは、あくまで道順です。
運転手が目的地に着くことだけを目的に、設置されているからです。
それが主体には不思議にも感じてしまっている。
普段なら気にならないものに、違和感を感じる。
それは、主体に何らかの変化があったからでしょう。
下の句の「ルートを外れてもなお」は、実際の運

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