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【連載詩集】No.22 庵(いおり)にて


 地方在住フリイランスは、まるで、

 庵に住まう浪人のような暮らしである。


 都から遠く離れ、平素は盛り場にも顔を出さない。

 友は心の中におり、実際に会う機会は多くはない。


 主君は持たず、己の意志に見合う人とのみ、仕事をする。

 本差し、脇差しの代わりに、パソコンとスマアトフオン。


 調和を大切にしつつ、

 大義と礼節を重んじ、

 志に反する者とは争いもする。


 心眼の代わりに、インタアネツトと書物を睨みつけ、

 世相を感じ取りながら、己の思索を磨き上げる。


 生き延びる術は、剣術の代わりに、

 幾度も己の血を流して得てきたスキル。


 時には大きな組織とも渡り合い、

 成果を残して、食い扶持を得る。


 聖人のように、信念に正直でありながら、

 山賊のように、稼がねばならぬ時もある。



 このように、

 地方在住フリイランスとは、まるで、

 庵に住まう浪人のような暮らしである。


 私はこのような暮らしを求めていたし、

 また、満足しているわけであるが、

 万人にお勧めするようなものではない。


 地方在住フリイランスは、

 ハアドコアの精神なくしては、

 成り立たないものであると心得る。


 まじめくさつていても仕方があるまい。

 諸君、閑吟集の一句を思い出したまえ。


なにせうぞ くすんで 一期は夢よ ただ狂へ
閑吟集 近世室町歌謡より


 すましていても、どうせ、死ぬのだ。

 ならば、気持ちよく生きねばならぬ。


 野蛮なるインタアネツトの荒野で、

 庵に隠遁する浪人の如き暮らしを送る、

 地方フリイランスは、今日もひとり詩を詠む。


 詠み人死すとも、

 此処に記す言葉は残る。

 私の独り言も、誰かの心に届く。


 諸君、気高く生きろ。

 誰かに魂を遣われるな。


 本気で闘え、生き残れ。

 血を流せ、時に涙せよ。


 己の意志に正直であれ。

 己の生を誇らしく思え。




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