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自民党「ネット世論工作」: 大金を投じて ネトウヨ煽動 : 『紙の爆弾』2022年2月号

雑誌評:『紙の爆弾』2022年2月号(鹿砦社)

「タブーなきラディカルスキャンダルマガジン」を謳う『紙の爆弾』誌の、本年2月号。
表紙に記された記事の見出しに、面白そうなものが多かったので購読してみた。フォントサイズの大きい順から、

(1)自民党「裏金」体質 泉田裕彦議員の告発が暴いた「買収の状態化」
(2)自民党「ネット世論工作」 大金を投じてネトウヨ煽動
(3)政府とエセ保守勢力の「北朝鮮拉致問題」利用
(4)維新の会は嘘だらけ 言うだけ吉村 逆ギレ松井
(5)岸田文雄〝安倍晋三外し〟 参院選イヤー〝戦略〟の全貌
(6)北海道新幹線「有害土」問題
(7)「共産党アレルギー」の正体 総選挙〝反共キャンペーン〟の裏を読む
(以下略)

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一一と、こんな感じで、私の興味を引いたのは、(1)(2)(4)(5)といったところ。

(1)は、あのモロな「録音テープ」が提出された件だが、あんなにハッキリした証拠が出されても、本人はヌケヌケと否認して、それで済まされてしまうのが、今の日本の「自民党政治」なのである。
狂っているのでなければ、自民党支持者が、日本人としてあまりに恥知らずであろう。それにしても、その後はどうなっているのか、追跡報道が欲しいところだ。泉田氏を孤立させてはならない。

(2)は、最も参考になったので、後で詳しく。

(3)は、大筋で知っているので「今更?」という感じだった。

(4)については、大阪人として、腹に据えかねているので、知っていても気になった。

(5)は、噂には聞いているが、どの程度の本気度かと。

(6)は、「リニア中央新幹線」問題だけではなく、北海道でもかと。

(7)は、今の政治を変えられるのは、善かれ悪しかれ「共産党」しかない。となれば、古い話を持ち出して、難癖をつけるくらいのキャンペーンを張るのは当然のことだろう。問題は、それに乗せられる日本国民の、知的「民度」の低さだ。

 ○ ○ ○

そんなわけで、そのままこの記事のタイトルにもさせていただいた、(2)の記事「自民党「ネット世論工作」 大金を投じてネトウヨ煽動」を紹介させていただこう(なお、表紙の記事見出しと違って、記事本文のタイトルは「「Dappi」だけじゃない、自民党「ネット世論工作」20年史」となっている)。

これは、私が解説を加えたり、感想を述べることなど蛇足にしかならない、事実をして語らしめる力のある記事だから、ほとんどそのまま、引用紹介させてもらおうと思う。興味を持たれた方は、ぜひ本誌を(バックナンバーになるだろうが)ご購読いただきたい。

『 「「Dappi」だけじゃない、自民党「ネット世論工作」20年史」
   ( 画像は、引用者が適宜挿入した。)

(前略)
多数のアカウントを持っていたワンズ社
(前略)
 昨秋の衆院総選挙直前、プロフィールに「日本が大好きです。偏向報道するマスコミは嫌いです」と掲げ、野党議員の言動を捏造してしつこく攻撃していたツイッターのアカウント「Dappi」に開示請求がなされた。そこで明らかになったのは、アカウントの持ち主が「ワンズクエスト」なる東京都内のIT企業で、自民党を得意先にもち、同党の有力議員たちとも深い繋がりがあったこと。Dappiの流していたデマは自民党にとって好都合なものばかりで、一七万人超のフォロワーがそれを拡散させていた。

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 この件は議員側が名誉棄損で提訴、昨年十二月十日から東京地裁で争われている。原告の一人である立憲民主党の小西洋之参院議員は、「フライデーデジタル」(十二月十二日付)で次のような疑問を呈していた。
「このアカウントの書き込みは、例えば、国会閉会中の委員会で行った質問に対しても、即対応しているんです。これは『ふつうの人』にできる作業ではないでしょう。その日、私が質問に立つことは、一部の人が前日または当日に知るんです。(中略)なにか、高度な専門性をもった人が、たとえば国政に関わった人がやっているように思います」
 同じく原告である立憲民主党の杉尾秀哉さん参院議員は、「民間企業を隠れ蓑にしたフェイクの拡散に見える」と語っている。
 もはやデマ拡散は珍しくない時代でも、判明したアカウントの所持者が個人ではなく、法人であったことにはあらためて驚くが、このワンズクエストには自民党の小渕優子元経産相やら複数の有力議員たちが、政治資金収支報告書に支払い先として記載。さらに岸田文雄首相、甘利明元幹事長が取締役に名を連ねた「システム収納センター」なる企業と取引関係にあることも判明した。

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「システム社は自民党のダミー会社で、党の名前を使いたくないときに用いられるトンネルです。所在地は、石原伸晃元幹事長が会長を務めていた派閥・近未来政治研究所と同じビルにあります。同社には、党本部から寄付として四千万円以上の金が出ており、おそらくワンズクエストに迂回して金を与えて与えたのではないでしょうか。いずれにせよ、公金を投じ世論操作をしているわけです」(全国紙政治部記者)
 さらに、ワンズクエストはほかにも多数のアカウントを持っていると思われる。ネットウォッチャーは、少なくとも四八のアカウントが似た主張を同時期に発していたと指摘。さらに気になるのが、そのうちの四つが、前述の櫻井の質問に、執拗な批判を行っていたことだ。
「別に櫻井翔や日本テレビにを標的にしたいわけではないでしょう。おそらく、憲法改正の邪魔になりそうなメディアや放送に、片っ端から噛み付いているのではないでしょうか。大手メディア、有名タレントということで、良いネタだと思われたのでしょうね」(同前)
 問題のワンズクエストは、社長が自民党本部事務総長の親戚であることも、しんぶん赤旗の取材で判明している。さらに社長が自宅を新築した際のローンは、国会の通行証がないと使えない「りそな銀行衆議院支店」。ここまでいけば単に自民党から仕事をもらっていただけではなく、党の関係者による運営と言っていい。

自民党ネット工作の歴史

 こうした自民党によるネット工作自体は、実は過去から存在が指摘されていたものだ。
 たとえば第二次安倍晋三政権では安倍首相自ら、大手IT企業「ランサーズ」の秋好陽介社長と、コロナ禍そっちのけで、しばしば会食。同社が運営するクラウドソーシングサイトでは一七年に、「政治系サイトのコメント欄への書き込み。保守系の思想を持っている方」「安倍政権を応援している方」「テレビや新聞の左翼的な偏向報道が許せない方」との仕事募集が掲載されて話題になった。
 その翌月には、安倍氏応援の新規アカウントが急増し、似たような内容の文章多数投稿する、という奇妙な現象も起きていた。さらに一部アカウントは二〇年のはじめにも、「コロナにかかっても日常生活問題なくすごせます」「インフルエンザより症状軽いです」という、これまた同じ文面の奇妙な投稿を拡散していた。よく聞く「コロナはただの風邪」論の一種のようにも見えるが、当時の政府がコロナウィルスの検査対象を「入院を要する肺炎が疑われる者」に限定し、事態を実際より縮小して伝えていたことを考えれば、まさにその方針に沿う投稿だった。

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 ちなみに、この話が広まったさなか、ランサーズの公式ホームページの主要取引先から「内閣府」が消失するという怪しい動きもあった。
「この手の自民党ネット工作部隊は、〇四年にはすでにあった」と語るのは、ネット専門のPR企業の幹部役員A氏。なんと彼自身がネット工作を請け負ったことがあるという。
「小泉純一郎政権の時代、『グリーンピア』をはじめ、厚労官僚たちの天下りのため、過疎地に無駄な施設が続々と建てられた問題がありましたよね。あれを問題にする記事をネットに拡散するようウチの会社が頼まれたんです。一記事三〇万円で請け負い、ライターに依頼して書いてもらっていました」
 この仕事を持ってきたのは自民党系のシンクタンクで、小泉政権が「改革」の必要性を強調し、「抵抗勢力」と位置付けた党内のライバルを蹴落とすための話題作りを、自ら行ってなっていたということだ。
 民主党に政権交代すると、同シンクタンクがプロの記者に依頼して、鳩山由紀夫首相(当時)への露骨なバッシング記事を書かせていた、という話もある。安倍元首相が大好きなフレーズ「悪夢の民主党政権」も、そうした連中があみだしたのかもしれない。
 〇六年末にサービス開始した「ニコニコ動画」は、新たなネットメディアとして、いまでは政治取材に参入している。しかしA氏によると、「これも実は当時、自民党のネットメディア局長の肩書きだった平井卓也氏(初代デジタル担当大臣)が主導したネット工作の一環だった」という。
 平井氏は、ネットユーザーを組織化する目的で、自民党が野党だった一〇年に設立された「自民党ネットサポーターズクラブ」(J-NSC)の代表も務めた人物。一三年の参院選の公示前には、ニコニコ動画の党首討論に出た社民党・福島瑞穂代表の発言に、自分のスマホから「黙れ、ばばあ」と書き込んだことが発覚して幼稚さを晒した。

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 一方、ニコニコ動画といえば、麻生太郎元首相との関係も見逃せない。
「麻生さんの長男が取締役にいるのがニコニコ動画運営のドワンゴで、『ゴルゴ13』などの漫画好きの〝オタクに理解のある政治家〟というイメージは、ドワンゴが作ったものだよ」(同前)

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麻生太郎の長男・麻生将豊

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麻生太郎の甥・麻生巌 ドワンゴ取締役

 ネットメディアの世界でも、一九年、共産党議員のデマを流して問題となった「政治知新」の運営者は、安倍元首相主催の「桜を見る会」に招待され、自民党神奈川県議を兄に持つ人物だった。また、選挙前に自民党本部が、野党批判の見本となる文章を配布していたが、これはニュースサイト「テラスプレス」が基となっており、A氏は「ここも実態は、安倍政権のやることなすことすべてを持ち上げていたネット工作サイト」だと話す。
 それを見ると、自民党でも石破茂元幹事長は批判するなど、特定の党内勢力のために動いているのが露骨だ。
「そこで働くライターのひとりXは、以前には、政府の観光事業に都合の良いデータを並べた記事を書いていた。そうやって、予算をとるための口実を捏造する役割です。そういうインチキライターが、お金欲しさでネット工作に加担するパターンも多い」(A氏)

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高市早苗のネトウヨ人気の正体

 権力者による世論操作自体は、もともとインターネットがない時代からあった。世界で最も早い時期に「広告業」を発達させたアメリカでは、第一次大戦期、広報委員会が世論の巧みに誘導。ロシアでも旧ソビエト時代から「教育を受けた人には教義を吹き込み、教育を受けていない人は不平不満を利用する」という手法で、国内世論工作を行っている。
 この、人々の知的レベルに合わせて手法を変えるという手法は、現在まで、世界中の世論工作のベースとなっている。その目的は、政権政党への支持・ナショナリズムの強化・国家防衛の思想を刷り込むことが定番だ。
 これらを合わせて考えれば、日本で増加を続ける「ネトウヨ」と呼ばれる層も、権力側が格差社会の中で「教育を受けていない人」の不満を利用し、ヘイトを煽ることで特定の思想を刷り込み、つくり出した層といえる。
(中略)
 昨年九月の自民党総裁選で、〝ネトウヨの巣窟〟といわれるヤフーニュースのコメント欄は、極右的な主張を続ける高市早苗候補への絶賛で埋め尽くされる一方、党員票には結びつかないという奇妙な現象があった。さらに総裁選後には、高市氏に関連する記事へのコメント数が激減した。これをリサーチした広告代理店の担当者は「高市絶賛コメントには新規アカウントが多い。そして、それらはその後、投稿が止まっている」と語った。すなわち、高市支持のコメントをするためだけにつくられたアカウントの割合が高い、ということだ。先のA氏も「ネット工作の疑いが極めて強い」と見ている。
 当の政治家自身が「ほとんどの教科書に自衛隊は違憲と記述されている」(安倍元首相)などと大嘘を発し、それを盛んに拡散する工作機関が公益法人として認可されているという異常事態である。SNSで自動投稿を繰り返す「ボット」や、言い回しを変えて似た投稿する「サイボーグ」などが二十四時間体制で稼働、公金を使って現政権支持に加えて、嫌韓・嫌中・野党批判を繰り返している。
 昨年末には、国土交通省の統計データ改ざんが明らかになった。改ざんは一三年から八年間行われ、GDPの算出にも影響し、アベノミクスを評価する根拠のひとつになっていた。アベノミクスについては、正しい数値で計算し直すと、前三年間と変わらず、横ばいの数字となった。
 ことほどさように、「世論」も「ニュース」も信用ならないのが、現在の社会である。われわれの側にあるのは、嘘や作為を見破れるか、見破れないかの違いだけ。リテラシーを鍛えるしかないのだろう
(中略)
 自民党の総理・総裁が変わったくらいで一変するものではない、本当に深刻な事態である。』(P65〜69)

この記事を書いたのは、「片岡亮(かたおか りょう)」氏である。
記事末尾に記された、氏のプロフィールは、次のとおりである。

『米商社マン、スポーツ紙記者を経てジャーナリストに。K–1に出た元格闘家でもあり、マレーシアにも活動拠点を持つ、野良猫の保護活動を行う。』

氏は「強くて優しい、腕っ節も強い正義漢」。
検索してみたところ、まだ単著は無いようだが、要注目のジャーナリストである。

今回、長々と引用させていただいたお詫びというわけでもないが、単著刊行されたら、きっと購読させてもらおう。
この記事を読んでくださったみなさんにも、ぜひ「片岡亮」の名を記憶に留めておいていただきたい。

(2022年3月16日)

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