Gomibuchi Noritsugu

大学教員。専攻は日本語の近現代文学・文化(とくに日中戦争期、アジア・太平洋戦争期の戦争…

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大学教員。専攻は日本語の近現代文学・文化(とくに日中戦争期、アジア・太平洋戦争期の戦争と表現)。Twitterのアカウントは https://twitter.com/nori_gomibuchi

最近の記事

参議院文教科学委員会(2019年11月19日)参考人陳述・質疑まとめ(2)

[後半の質疑応答部分のまとめです。前半に比べてちょっとざっくりした感じになることをおゆるしください。]   佐藤啓さん(自民党)  比較的「英語4技能」問題に焦点を当てた質疑でしたが、国家公務員試験でも民間英語試験を活用しているのにどうして大学入試では使えないのか? と主張する吉田参考人に、TOEFLを例に高額の受験料負担の問題を指摘されていたのは、評価できるポイントだったと思います。  今後の高大接続のあり方について問われた萩原参考人が、大学・大学入試センター・文部科学省

    • 参議院文教科学委員会(2019年11月19日)参考人陳述・質疑まとめ(1)

      [昨日twitterに連投した内容をまとめてみました。一部誤字を訂正しましたが、内容はそのままです。私見が入りまくった「まとめ」ではありますが、よろしければご参照ください。] ※参議院ウェブサイトより引用 開会日 2019年11月19日 会議名 文教科学委員会 審議時間 約2時間30分 文教科学委員会(第三回)    高大接続改革に関する件について参考人全国高等学校長協会会長    萩原聡君、日本私立中学高等学校連合会会長・学校法人富士見丘    学園理事長・富士見丘中学

      • 日本学術会議公開シンポジウム「国語教育の将来―新学習指導要領を問う」印象記②

        *①からの続きです。  5人目は文科省視学官の大滝さん「高等学校新学習指導要領国語科の目指す授業改善」。お忙しいお立場にもかかわらず、大部のパワーポイント資料を使って、文科省の立場からこの間の批判に応答する、というスタンスでのお話でした。とくにありがたかったのは、資料で「新科目についての正確でない理解」として、8項目の「正確な理解」を教示くださったこと。 ・ 「言葉を「論理」と「文学」に分けることなどできる?」という批判には、「科目名は当該科目で重点的に育成する資質・能力

        • 日本学術会議公開シンポジウム「国語教育の将来―新学習指導要領を問う」印象記①

          *twiter(https://twitter.com/nori_gomibuchi)に連投した記事をまとめました。こちらの方が読みやすいと思いますので、ご参照ください。 *より詳細な「まとめ」は、横浜国立大学国語教育研究会のブログに掲げられています。合わせてご確認いただければ。 https://ynukokugo.blogspot.com/2019/08/blog-post_2.html  昨日は酷暑の中、乃木坂の日本学術会議講堂での公開シンポジウム「国語教育の将来—新学

        参議院文教科学委員会(2019年11月19日)参考人陳述・質疑まとめ(2)

          日本大学国文学会研究集会「「国語」の現在、「国語」のゆくえ」印象記

          ※ Twitterで「まとめ」を発信しましたが、長くて読みづらいものになってしまいました(申し訳ありません。。)こちらで一括して読めるようにしておきます。Twitterの方では、字数制限のために一部表現を改めていますが、内容的には同一のものです。  昨日(2月23日)は日大国文学会研究集会「「国語」の現在、「国語」のゆくえ」に参加。高校大学入試等の重なるタイミングでしたが、150人ほどの参加者で盛況でした。見知った顔と再会すると、何やら「同志」的感覚も生まれますね。内容的に

          日本大学国文学会研究集会「「国語」の現在、「国語」のゆくえ」印象記

          緊急ワークショップ「これからの「国語科」の話をしよう!」を終えて(2)

          (2)高校カリキュラムの中での「国語科」の位置  以前にも書いたことと重なりますが、改めて。論点を明確にしたいので、ひとまず問題を「現代文」に絞ります。  佐藤泉さんに『国語教科書の戦後史』(勁草書房)という刺激的な著書がありますが、高等学校用「国語」教科書(とくに「現代文」分野)は、それ自体なかなか興味深いメディアです。佐藤さんのご本では、主に教科書の中での「文学」の位置・役割の変化が問題化されていました。しばしば誤解されるのですが、現在の「国語」の教科書で「文学」が占め

          緊急ワークショップ「これからの「国語科」の話をしよう!」を終えて(2)

          緊急ワークショップ「これからの「国語科」の話をしよう!」を終えて(1)

           今週はお目にかかる方ご連絡くださる方と、口々に先日の「国語科」ワークショップのお話になる、そんな一週間でした。こんかいはたまたまわたしが準備する立場でしたが、それだけ、「新しい国語科」や大学入学共通テストをめぐって、率直に議論する場所が求められていたのだと思います。文学通信さんのご厚意で急遽アップロードしていただいた動画も、多くの方の目に触れているようです(1)。ご参加くださった皆さま、関心を寄せてくださった皆さまに改めてお礼を申し上げます。  また、当日も告知タイムを取り

          緊急ワークショップ「これからの「国語科」の話をしよう!」を終えて(1)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(終)

           最後に、今後の議論に向けて、2つのことを書いておきたいと思います。  見てきたとおり、今回の新指導要領は、高校国語科の制度設計を大きく変えるものです。制度を変えることは、生徒の側にも教員の側にも、それなりの負担となってのしかかります。「それだけの負担を背負ってでも、その制度を変えるだけのメリットがあるのか?」――。現在、さまざまな問題が指摘されている「大学入学共通テスト」(新テスト)も同様ですが、制度をいじることによって最も影響を受けるのは、その変更によって翻弄される生徒

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(終)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(10)

           ひとまずこの段階で、今回の学習指導要領が提示する「新しい国語科」の問題点をまとめておきたいと思います。 [1]「読むこと」の削減  見られる通り、今回の指導要領では、「話す・聞く」「書く」活動にかなりの授業時間を割くことが求められています。国語科の授業時間数は基本的にはそう変わらないはずですから、新しい国語科のプログラムが文字通りに実施されれば、「読む」時間が相当削られることは間違いない。  ですが、それ以上に問題と思うのは、何を「読む」のか、という中身、教材の質の部分

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(10)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(9)

           ここまで、「論理国語」の想定する「論理」が、かなり独特なニュアンスを持っていることについて論じてきました。では、「論理国語」と対になるかたちで新設された科目「文学国語」(これもまた奇妙な名称です)では、いったい何が、どのように学ばれるのか。『解説』は、文学を「人々の心の機微を描き、日常の世界を見つめなおす契機として、我々の文化を築く上で重要な役割を果たしてきた」と述べたうえで、この科目のねらいを、次のように記しています。  ……共通必履修科目である「現代の国語」及び「言語

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(9)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(8)

           各方面からの圧力を意識し忖度して、どうにかそれにすべて応えようとした結果、さまざまな矛盾と混乱を抱えた設計図ができあがってしまう――。こうした今回の新指導要領がはらむ矛盾は、現行の「現代文B」に代わる選択科目「論理国語」(4単位)と「文学国語」(4単位)にも大きな影を落としています。  おそらく普通科の高校では、高2・高3の2年間で学ばれるだろう選択科目「論理国語」(それにしても不思議な名称です。果たして「論理」を欠いた言語があるのでしょうか?)は、「現代の国語」と並んで

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(8)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(7)

           では、新しい国語科は、日本語の文化や伝統を軽視しているのか? ――おそらく、そうしたありうべき批判に対応すべく作られたのが、科目「言語文化」だと思います。  この科目は、「国際社会に対する理解を深めるとともに、自らのアイデンティティーを見極め、我が国の一員として責任と自覚を深めること」「先人が築き上げてきた伝統と文化を尊重し、豊かな感性や情緒を養い、我が国の言語文化に対する幅広い知識や教養を活用する資質・能力を育成」することを目指すものと定義されたうえで、「上代から近現代

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(7)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(6)

           さて、ずいぶん遠回りをしてしまいましたが、ようやく高校国語科の新しい中身を批判的に検討する土台を整えることができました。今回示された国語科の科目編成は、(ア)全体的な方向性としてはPISA対応に強く引っ張られる一方で、(イ)そこで取り落とされたものを無理に取り繕おうとした結果、(ウ)これまで高校国語科が積み上げてきた知見や蓄積を空洞化・形骸化させかねないものとなっているように思うからです。  そのことは、新設された必履修科目「現代の国語」(2単位)と「言語文化」(2単位)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(6)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(5)

           PISA(Programme for International Student Assessment=生徒の国際学習到達度比較調査)。2000年代以降、「学力低下」をめぐる議論ではしばしば言及されるので、実際の問題は見たことがなかったとしても、名前は聞いたことがある方も多いはずです。2000年に始まり、以後3年ごとに行われている比較的新しい調査ですが、2003年調査で、日本の生徒(15歳)の「読解力」が14位に下がった(2000年調査は8位)ことは、大きな衝撃をもって受け

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(5)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(4)

           前回までの投稿が思いがけず多くの方の目に止まったようで、うれしくもありがたくも感じています。拡散にご協力くださったみなさまに、心よりお礼を申し上げます。  週末の合宿研究会から無事戻ってまいりましたので、相変わらずのペースではありますが、少しずつ書いていきたいと思います。引き続きおつき合いいただければさいわいです。                ***                     現状に何か問題や課題があるとして、それらを「改善」したり「解決」したりするために

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(4)

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(3)

           本稿では主に現行の「現代文」の分野を問題にしたいので、手前味噌で恐縮ですが、わたしが編集のお手伝いをした教科書(筑摩書房版『現代文B 改訂版』=高2・高3生向け)を例に見ていきましょう。「第1部」が主に2年生、「第2部」が3年生の授業で使われることを想定した内容となっています。以下のリンク先から、見てみてください。 【筑摩書房版『現代文B 改訂版』もくじ】  まず一目で分かるのは、教材となる文章の多さです(1部、2部合わせて29本)。これだけの文章を収録するわけですから

          高等学校国語科が大きく変えられようとしています(3)