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読んでない本の書評

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表紙見て、あとがき読んで、数行目を通したら、だいたいわかる気がしてきた。 より深く理解するために、重さも測ることにする。
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#イギリス文学

117「オリヴァー・トゥイスト」 ディケンズ

117「オリヴァー・トゥイスト」 ディケンズ

 上下巻415グラム。どうも筋道が見えにくい、と思ったら、月刊雑誌に2年にわたって連載されたものだった。なるほど連続ドラマを見てるときの印象に似てる。
 「面白かったけどストーリー上は捨て回だったな」とか「ダレ気味であると踏んで強引なてこ入れをしてきたな」とか、意図を邪推しながら読むのが楽しい。当初のテーマがどこへ行こうがとにかく一回ずつの盛り上がりに全力を尽くす人気者ディケンズ、ちょっとクドカン

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読んでない本の書評54「四つの署名」

読んでない本の書評54「四つの署名」

116グラム。文庫とは思えないくらい凝った綺麗な装丁である、シャーロックホームズのロゴも、その下によくみれば印刷されている隠し数字も浮き上がった加工になっている。真っ青でつるつるした表紙を指でなぞるだけでなんとなく楽しくなる。

川端康成でなくても、雪国というものは一瞬でできあがるものだ。気付いたら世界が銀色だった。朝カーテンを開けて、「あーあ、昨日までなら自転車で行けたのになあ」と思う、真冬の始

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読んでない本の書評37「木曜日だった男 一つの悪夢」

読んでない本の書評37「木曜日だった男 一つの悪夢」

192グラム。タイトルからして早くも意味が分からない。しかし、不可解な状況に追い込まれたときこそ落ち着いて考えてみるべきだ。

 北海道の人は電話口で名乗るとき、なぜか過去形になるものだ。
「あ、黒川でした」などと言いながら電話を掛ける。出たほうも、「『黒川だった』んなら、今は何なんだ」なんていう無茶な返答はしない。「どうも、おばんでした」などと愛想よく返すものだ。
 私自身は使わないが、いまで

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読んでない本の書評39「宇宙戦争」

読んでない本の書評39「宇宙戦争」

141グラム。ただし地球の重力で。

「火星探査機もさんざん着陸する時代になってから読むタコ型火星人の襲来物語、とほほ…」と言うつもりで読んでたら普通に面白い。人類が想定する地球外生命体の形って科学の発展に伴ってしかるべく変わっていくのだろうけど、人類のパニックの起こりかたは100年変わってないらしいところがいい。

 最近、少し大きな地震があって三日間停電した。たったそれだけのことで、思いがけな

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読んでない本の書評29「ボートの三人男 もちろん犬も」

読んでない本の書評29「ボートの三人男 もちろん犬も」

199グラム。読みやすいが徐々に何を読んでるのかよく分らなくなるので頭から順番に読んでいく必要はないようだ。

 缶詰が発明されてから缶切りが発明されるまで半世紀かかってる、という話が好きだ。
 あの素晴らしい食品保存技術の発明のあとで50年も人類は何やっていたのか。家の中に伝説のように缶詰がただあって、人々に見つめられながらいっさい役にも立ったことがない風景を想像すると心が安らぐ。

 事情をわ

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読んでない本の書評20「ハリーの災難」

読んでない本の書評20「ハリーの災難」

 102グラム。小さい文字で2段組みだがずいぶん読みやすい。人が死んでるいるところからはじまって死体のやり場に困るドタバタ劇と言えば、日本人には落語「らくだ」でなじみ深いのだ。

 しかしイメージに困るのは「ヒース(荒野)」である。
 ヒースと言えば殺風景で訪れる人もない荒れ地であり、愛憎もろともこってり煮詰まって自己増殖し、二代も三代もたたった挙句に取り殺されたりする風土のことではなかったか。

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読んでない本の書評8「マクベス」

読んでない本の書評8「マクベス」

108グラム。煩悩を連想させる重さに合わせてくるあたり、目のつけどころがシェイクスピア。

「もう眠りはないぞ!マクベスが眠りを殺してしまった。マクベスはもう眠れないぞ」

 惚れ惚れするほどかっこいいセリフで、マクベスはこの一行でいいかな、と思うのだ。とはいえ、「かっこいい」には文脈というものがあり、このセリフがどうかっこいいのかを知るには結局108グラムを読まねばならぬ。読書とはそのように成り

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