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深夜、堕落したブルーライト、ぼくら勝手に孤独になって輪廻。

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散文詩/自由詩まとめ。
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記事一覧

ドライブ・マイ・シー

発光したい、発行したい、発酵したい、
ビョウインには行かない、
ふくらんでいくからだを空にして、殻にして、
いのち以外のすべてを詰め込みたい。
波のように流れる胸に耳をつけると、
いつでもわたしの誕生日を祝う歌が聴こえる、
うるさい、
うるさいな、
耳をぎゅっとふさいだのは、
君以外のほとんどと手をつなぎたくないからだった。
 
 
信号が赤になったときじゃなくて、
青になったときに駄目になるんだ

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アンガーマネジメント

 
終わらないで
(ぜんぶ終わってしまえ)
 
 
 
夕暮れが嫌いなのは同族嫌悪で、カップラーメンは星になる。
3分待っても消えない怒りはこのまま一生残るのかもしれないけれど、簡単にわたしの言うことを聞くような感情はこんな世界ではどうせ生きていられない、
 
 
淘汰、
わたしを殺そうとする獣とわたしだけが適応する地獄、
眠りたくないことと起きたくないことは少しも同じじゃないのに、紺色のカーテ

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あくまのこ

心臓にまで染み込んでいる煙草の匂いが未だにどんな匂いか分からない、わたしは獣じゃない、かといって魔女でもない、
いつか魔女にあったとき、その甘い香りでそのことにきっと気づいてしまう、それがかなしい。
 
 
無花果をゆっくり食べる心臓に甘い匂いが染み込むように
 
 
指の先にまで流れている激情の炎のことを血液と言うのなら、わたしはやっぱり悪魔の子なのかもしれなかった、それならそのほうがずっとよ

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思い出せない花の蜜の味

 
ひらく
 
とじる
 

心臓のあまいかおりがする
血液のにがいかおりがする
 
記憶は血管を流れるから
怪我をするたび
さらさら滲み出ていく
どうでもいいことから順番に
どうでもいいことは
わたしのことがどうでもよくて
忘れたいことは
わたしのことをくるしめたいから
わたしが記憶をしまうとき
罰として
窓のない部屋に放り込んだから
 
 
 
ひらく
 
とじる
 
 
心臓は
帰り道

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雪解け水のシロップ

 
幸福の重さを上手に測れない
体重計は壊れていてほしい
はじめていくカフェの小さなテーブルに飾られた
もっと小さなシェットランドシープドッグに
知らない街の写真を見せて
ここが故郷なのと
ずっと嘘の話がしたい
 
 
(冬になるとあたりいちめん雪が降って
それが溶けるまでわたしたちは眠るんだよ)
 
 
淡い異国の街で産まれたことになって
優しいだけのホットケーキを食べる
毎日こうしていれば

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どれだけ泣いても海はできません

突然、わけのわからないことで死んでしまう以外に、あたしがきみを泣かせる方法なんてあるの。
 
 
きみが死ぬことをかなしむために生きているのではなくてあたしが死ぬことをきみにかなしんでほしいから生きているだけだって、気づいてしまった日の海が穏やかに凪いでいる。 
本物の灯台を見たことがないってこと、誰にも言えないまま皮膚はゆっくりと乾いていく。
それなのにお腹の中の海にぽつんと建った灯台はやけに鮮

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まだころしてないだけ

蹴らなかったガードレールはどうせわたしが蹴ったって曲がりも歪みもしないガードレールで、だから蹴らなかったわけじゃないけど、だから蹴らなくてもよかった。

(怒らないで、)
意味のないものを排除したとき、わたしの庭は更地になる、
(焦らないで、)
寝転がって部屋の隅の埃を見つけたとき、死神だけがわたしを抱きしめたがる、
(祈らないで、)
はつ恋のひと以外を信仰したとき、わたしはつまらない罪人になる、

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金木犀は永遠の香り

 
死ぬタイミングを間違えなければ永遠になれるから焦らなくていいよ、
永遠が君のかたちになることはないけれど、君が永遠のかたちになることはできるから焦ることないよ。
 
 
永遠は、世界一可愛くて世界一嫌いなあの子のかたちともまったく似ておらず、液体のふりをしてふくよかな土のなかに決して染み込まずに寝そべっている。
金木犀の木の下に埋まっているのは死体ではなくて永遠で、だから代替できない香りがする

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スパイス・オブ・ライフ

 
さみしさを重ねるたびに背は伸びてサンドイッチは整ってゆく
 
 
わかぞうはおやぶんになり君はずっと愛しい子どものまままた春が来る
 
 
Variety is the spice of life. 転がるボールはまた君の手へ
 
 
開かれた本は白紙で童話より近くで光るぼくらの宝
 
 
ミライへはゆっくり行こう思い出を詰めたリュックは重いだろうし


(愛してやまないポケモン

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猫になりたい / スピッツ短歌

猫になりたい / スピッツ短歌

薄闇の衛星みたいなダイニングきみの声ばかりひかってしまう

もう湯気はたたない青いマグのなか異国の浜辺に似ているミルク

さみしさは季節みたいにめぐるからだから言い訳にちょうどよかった

言葉など役にたたない肌寒いソファーのうえの甘いまぼろし

このあいだ猫に引っかかれたんだよねさわれない腕消えかけのキズ

『こいびとは犬と暮らしていたらしい』

胎教もスピッツにしたいねと笑ってはカラオケでわたし

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Home, Sweet Home

Home, Sweet Home

昼時のニュース刺したひと、刺されたひと、そのどちらにも似ているわたし

身を投げるならば綺麗な海がいいマイストローを洗う水音

焼いたことないものだけが永遠でつぶれたシフォンを思い出す犬

果物を切るためだけにつくられたナイフみたいに光りたかった

切りたての桃をひとかけ盗むようにこっそり大人になってゆくこと

つめたくてなめらかなひふ

 
おばあちゃんの家にある、古い、四角いマッチ箱の中には、わたしがこわがるもの(たとえば愛とか)が入っているって知っているから開けられない、火をつけたことがない、わたしは、命を、愛を、燃やしたことがない。 
 
 
息を吹きかけて蝋燭の炎を消す、
ゆっくりと短くなっていく線香の香りが消えるまで離れるとどこにあるか分からないそれぞれの(ほんとうの)心臓の香りが混ざった薄いにおいがして、この火をつけた

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ラクダの鳴き声を真似できない

 
なんかみんな乾いてない?
馬鹿みたいに暑いからかい
本当はわかっている
おれだけがとんでもない晴れ男で
干上がった泉の底で
死骸のふりをして寝そべっている
本当はわかっている
みんなオアシスにいる
おれが水の味を忘れてしまっただけ
乾ききった喉を鳴らして
流行りの歌をうたうだけ
 
 
シャッフル再生で流れてきた時にしか
聴きたくない歌を聴く
おれの砂漠はだだっ広いだけで
ラクダの1匹もいや

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死はさざなみのように

幸福は海で絶望は宇宙
孤独は魚みたいに幸福の中を泳いでいて
わたしは時折すべてを休んで
幼馴染の死神と海や星を見に行くためのドライブをする
それまであったことはみんな歌にして
死神だけがそれを聴いてくれる
死神だけがいつも
わたしに歌手になったらいいと言ってくれる
死神だけがいつも
わたしに期待して
わたしに失望もせず
わたしのそばを離れない
絶望は海で幸福は宇宙
愛情は干上がったくらげ

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