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映画『ロイ・ハーグローヴ 人生最期の音楽の旅』をみる。

『デヴィッド・ボウイ ムーンエイジ・デイドリーム』以来のTOHO梅田。

今年みたドキュメンタリー映画という意味では、『モリコーネ 映画が恋した音楽家』と合わせて3本目。ロイとも親交の長いエンリケ・アンリ監督が、図らずも自身最期となる2018年夏のヨーロッパ・ツアーに密着。「死に様は生き様」なんて言葉がある通り、彼がどんな人間であったのか、どんな哲学を持って、また"仲間達"はどんな風に彼を支え導きまた導かれていったか。

これはエンドロールで初めて明かされる事実ですので、いくらネタバレ注意を標榜しているとはいえできる限りオブラートに包んでお話してきますと。本作で登場するのは、宿泊先のホテルの一室でトランペットに興じる場面と袖から舞台へ向けられたハンディカメラの演奏シーンのみ。つまりそういうことです。ドキュメンタリーにおけるクリアランス問題は実に根が深い。

でいて、エンリケ・アンリにしか撮れない「真のロイ」あるいは「作為的な演出を持って描かれるロイ」異なる人物像が確かにそこにはあって。立場が変われば意見が変わる、それは観客や長年のファンとて同じ。90年代の初頭からトップランナーであり続けたがゆえ肥大した"実像と虚像"のギャップにあなたは何を思いますか。107分では到底、答えが出せないかもしれない。

Smalls Jazz Clubのセッションで、立ち寄ったアイスクリーム屋やスニーカーショップで、あるいはドラッグや腎障害について語るとき。インサート映像の撮影中に見せた表情からも。ロイの中では常に「YESとNOと、その中間」が三すくみの状態になっていて。運命を受け入れたがゆえのYESだったり、仲間を庇うためのNOだったり、誰にもわかりはしないとお茶を濁したり。

主宰がわずかに感じ取ることのできた「真のロイ」についてシェアして本稿を閉じたいと思います。"スタンダードジャズを演奏する時には、まず歌詞をキチンと覚えること。歌詞をキチンと覚えていれば正しくメロディを奏でることができる。"もがき苦しみ続けたトップランナーの言葉は端的で、重い。是非この6回忌、あなたの知らなかったロイに会えるまたとない機会です。


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