マガジンのカバー画像

ピリカ文庫

245
テーマを指定して、 noterさんに執筆してもらう、という企画のマガジンです。
運営しているクリエイター

記事一覧

今回のピリカ文庫、白鉛筆的にはこんな感じ。
是非、ヱリさんの作品だけでもお読みください。^_^

https://note.com/saori0717/n/n1f1e2eba8a7a

次のピリカ文庫は、文フリ東京でお会いした方のなかで、直感でこの人だ!ときた方に直オファーします。

noterでない可能性もありますね!

お題を書いたメモをお渡ししますので、優しくして(笑)

ピリカ文庫~「コインランドリー」

ピリカ文庫~「コインランドリー」

文学フリマ直前の本日、ピリカ文庫の新刊が届きましたよ!
お題はヒネってヒネって、「コインランドリー」です。

難問にも負けず、さすがのクオリティでしあげてくださったのは、このふたり!

ヱリさん/ミッドナイト・ランドリーもう、この二行で心を鷲掴みされた方も多いのではないでしょうか。
ユニークなイントロダクションから始まり、物語を追っていくうちにどんどん引き込まれていきます。
登場人物の醸し出す独特

もっとみる
【ピリカ文庫】可逆性セレナーデ弍號機

【ピリカ文庫】可逆性セレナーデ弍號機

深夜だと言うのに、コインランドリーには人がいた。

四車線の大通りに面したガラス張りの店内、中央のベンチに女性が一人座っている。洗濯が終わるのを待っているのだろう、傍らに大きな袋を置き、スマートフォンで動画を見ているようだった。

この時間なら誰もいない、と高を括っていたところ、失敗した。今から他の店舗に行こうにも、時間がかかる。何より外は雨。入ってきた扉側、無数の水滴が張り付いた全面ガラスを見や

もっとみる
ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

ミッドナイト・ランドリー【ピリカ文庫】

すすぎの音を立てるドラム式の洗濯乾燥機の中で、元気に泳いでいるのは河童だった。

洗濯槽が右に左に回転するたびに生み出される、ねじれた水流の中をほとんど転がるようにして、河童は短い手足で気持ちよさそうに水を掻いている。ウィルキンソン炭酸のずんぐりとした1Lペットボトルほどの大きさしかないので、河童はまだ子どもなのだろう。マンションの一階部分に完備されたコインランドリーの、二台並べ置かれたうちの右側

もっとみる

祈る

祈りというお題でちょっとした文章を書かせていただいた。

それとは別に、祈るということにまつわるはなしを書いていた。

祈るというのは、個人の思う「そこにくるべき未来・期待」といったものを引き寄せようとする行為なんじゃないかと思う。引き寄せようとすることがらをしまっておくための箱をあつらえて、「ここに箱がありますよ」とアピールし、それが箱におさまるのをじっと待つ行為ではないか。

それは、自分の中

もっとみる
【ピリカ文庫】『眠れない四月の夜に』

【ピリカ文庫】『眠れない四月の夜に』

イントロ

真夜中の電話は、リオンからだった。

「前によく行ったあの映画館で例の映画がかかるみたいよ。見に行かない?」

年に数回、忘れたころにかかってくる電話。リオンと僕を繋いでいるものは、今はもうそれだけになった。

「悪いけど先約があってさ。ごめん」

いつも週末は散々暇を持て余しているくせに、予定が被る偶然を嘆く現実も時にはやってくるのだ。

次に彼女が僕に電話する気になるとしたら、たぶ

もっとみる
【ピリカ文庫】ミニトマト

【ピリカ文庫】ミニトマト

お母さんは私がトマトを好きでないことを知っていた。それなのに、いつもお弁当にはミニトマトがあった。「残してもいいのよ。赤が足りないでしょ。見た目のためにいれるの」そういいながら太い指でつまみ、弁当箱に入れる。私以外の誰かに見られることを前提にお弁当は作られていた。

それなのに、私にはお弁当を一緒に食べる友達がいなかった。給食のある日は決まった班で食べるのに、午前授業で終わる日は違う。「好きなもの

もっとみる
ピリカ文庫~「スケッチブック」

ピリカ文庫~「スケッチブック」

春ですね。
ポカポカ陽気に誘われて、ピリカ文庫の新作が届きましたよ!

りみっとさん/新しいクレヨン読みながらついつい昔の思い出に浸ってしまいました。
爽やかな風と草の香り。
そして、子どもたち。
りみっとさんの生き生きとした描写が素晴らしいです。
春らしさが満喫できる作品。

こーたさん/スケッチブックこーたさん、久々にピリカ文庫に登場です。
夢を諦めた孤独な青年と、後輩の女性の会話にどんどん引

もっとみる
【ピリカ文庫】新しいクレヨン

【ピリカ文庫】新しいクレヨン

 子供会のイベントで、大きな公園に来た。春の日差しを浴びて、公園の花壇はきれいな花盛り。木々も芽吹いて生き生きとしている。たくさんの家族が青空の下で地面にシートを広げ、お茶をしたりとピクニックを楽しんでいる。

 公園の真ん中にある広場に集合し、お弁当やお菓子が入ったリュックを背負ったまま私たちは全員しゃがんだ。引率係のコウちゃんママが、紙を丸めたメガホンを持って大きな声で挨拶をする。

「たんぽ

もっとみる
【ピリカ文庫】スケッチブック

【ピリカ文庫】スケッチブック

ここ数年、人生の目標を見失ってからの自分は、無機質なアンドロイドのようだ。いや、人工知能が感情を持ち始めた時代に、この例えはもう古いのかも知れない。

名ばかりの休日、増え続ける業務。時間と体力を仕事に全振りして、生活ギリギリの給料で日々を凌ぐ。今日も仕事で残った資料を家に持ち帰ろうとしたその時、2年後輩の丸山京香が首を傾けてこちらを覗きこんだ。
 

「あっ、スケッチブックじゃないですか!」

もっとみる
ピリカ文庫~「窓」

ピリカ文庫~「窓」

こんにちは!ピリカです。
わたしの街では黄砂の嵐が吹いていますが、みなさまの街はどうですか?

とっても春らしいお名前のお二人に書いていただきましたよ!

みなとせはるさん/バス停と猫バスに乗り込む人たちの織り成す朝の風景を見守り、心を寄せる語り手。
窓が隔てる外の世界に心乱されるのは、いったい誰?

窓を全開して、気持ちいい風をめいっぱい吸い込みたくなるような、あたたかな作品。

震わすのは/さ

もっとみる
【ピリカ文庫】短編小説「バス停と猫」(テーマ「窓」)

【ピリカ文庫】短編小説「バス停と猫」(テーマ「窓」)

 朝七時半。
 二階の窓から外を眺めると、道路の向かいにバス停がある。通勤や通学のためにバスを待つ人達が列を作り、たった一つある青いベンチには額に白い富士を持つ白黒柄の猫が鎮座していた。
 小さなセーラー服を身に着けた女の子が、スーツ姿のお母さんに手を引かれて列に並ぶ。お母さんは膝を曲げて女の子と視線を合わせると、「気をつけてね」と言ってから道路の反対側にあるバス停へと向かっていった。
 マコちゃ

もっとみる
震わすのは【ピリカ文庫】

震わすのは【ピリカ文庫】

 あれは15歳の夏休みだった。俺は町の花火大会の会場に急いで向かっていた。住宅街を走っていると、ドーンという爆音が空気を震わし、俺は空を見上げた。

「あ~、始まっちゃったか!」

 俺は民家の2階の窓から身を乗り出している少女に気が付いた。その少女は同じクラスの福元美羽だった。あまり話したことはないが、福元も花火が観たいのだろうと思い、誘うことにした。

「福元!一緒に花火を観に行かないか?」

もっとみる