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詩を書いています。2017年3月、七月堂より初詩集「死水晶」を刊行しました。 七月堂、…

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詩を書いています。2017年3月、七月堂より初詩集「死水晶」を刊行しました。 七月堂、Amazonいずれも在庫なしです。現在、手持ちの在庫も無くなりました。 https://twitter.com/shindesuyo53

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記事一覧

夏をみる人

あなたは夏をみる人だ うつむいたレースのカーテン越しに あなたは白い夏をみるひとだ 窓辺にもたれながら、口をすこし閉じて 花模様のレースの編み地には 猫の引っ掻き傷…

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1か月前
61

花の化石

    生きたまま花の化石になりたい という少女がいて 街は、霞のようにかすかに かそけく 輝いているのだった ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち 少女は母似の瞼…

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1か月前
45

雪豹

積乱雲を追って 暗い翳つくる地平を疾走するものがあった 川の古い祠の霊気を吸って 星辰のゆらぎを皮膚に烙印するものがあった    (立ち枯れた草木月下のふかい冷え込…

shindesuyo53
1か月前
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雪豹

積乱雲を追って 暗い翳つくる地平を疾走するものがあった 川の古い祠の霊気を吸って 星辰のゆらぎを皮膚に烙印するものがあった    (立ち枯れた草木月下のふかい冷え込…

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1か月前
50

剽窃

剽窃したい人はそこに居て、夏のセロリ をしっぽから齧っている。水は生温いが金魚鉢の赤い魚たちは夢を追わずきょうも元気だ。猫は背を丸めしっぽりと寝ている。 猫を抱き…

shindesuyo53
2か月前
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薔薇の痛み

沈黙して眠るほかない 鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で 帆軸を極北に向けた 難破船のようにふかく朽ちていく 沈黙して眠るほかない 世界の清しい涯てを むなしくも夢みて …

shindesuyo53
2か月前
51

朗読上達法(詩村あかねによるレッスン講座)

★脱力 肩幅に足を開き、空をつかむイメージで両手を上げる。その緊張した状態から、首、肩、胸、腰、膝と順に緊張をゆるめていく。 ★「ひらいた声」を出す 「ひらいた…

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1年前
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この状況を奇貨として

          白島 真  2020年3月号より当誌の詩誌評を担当することになり、年間を通して毎月100冊から150冊の詩誌を読み込んだ。  筆者が詩誌を友…

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3年前
100

詩の感性は風と聲に乗って

            白島 真  前号では100号を越える詩誌を取り上げたが、その後、さらに8冊をご恵送戴いた。  詩人会議系の詩誌「沃野」632、「軸」137…

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3年前
114

100号越え詩誌の重み

           白島 真  今回は詩誌の号数に留意してみた。100号を越えている詩誌に絞って書いてみようと考えたが、何と6月から9月中旬に発行され、たまた…

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3年前
53

次世代への継承とネット

                     白島 真  今回はインターネット(以下ネット)における詩の世界に少し触れてみたい。  ネットの普及は1995年のWindows…

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3年前
61

息苦しさを超えて

                   白島 真  いきなりの私事で恐縮だが、私は新聞もテレビも見ない。ニュースソースはもっぱらツィッターである。コロナ禍について…

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3年前
43

個人誌という思想の器

                   白島 真  今回はいつもよりやや個人誌が目立ったので取り上げてみたい。その利点は、思うがままに自己主張でき、詩と散文の配分…

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3年前
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様々なる衣装(意匠)

                   白島 真  毎月多くの詩誌が届けられ読んでいるが、その形状や装幀も様々である。ハッと目を引く表紙もあれば、ワード出力用紙を…

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3年前
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人の生き死にのように詩誌の歴史も

            白島 真  コロナウイルスが猛威をふるっている。4月1日現在で感染者数521人の東京を筆頭に大阪・愛知・北海道・千葉・兵庫・神奈川・埼玉…

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3年前
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喉に刺さる小骨を胸に

 70歳の古希ともなれば、いつお迎えが来てもいいころだ。 この歳で苦悩がどうの、真理がああのとぼやいていれば、仮にそれが心の裡だけのことであったとしても、お前ね、…

shindesuyo53
3年前
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夏をみる人

あなたは夏をみる人だ
うつむいたレースのカーテン越しに
あなたは白い夏をみるひとだ
窓辺にもたれながら、口をすこし閉じて

花模様のレースの編み地には
猫の引っ掻き傷ととれない汚れがほほえましい
編み目が透明なガラスをはさんで 庭を映す

手入れをしない原生林のようなみどりの庭を
あなたは好む 
それでもやや正面右の猫の墓たちの
周りはおしろい花や紫陽花を植えて

「移り気」という花言葉を思いなが

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花の化石

   
生きたまま花の化石になりたい
という少女がいて
街は、霞のようにかすかに
かそけく 輝いているのだった

ちちははの眠るやわらかな記憶の棺たち
少女は母似の瞼をとじた
人生を終えて新たな遊行の歩みを告げる釘の音   
 (釘もまたその命を灼熱の炎のなかで終える)
ちちははの顔を埋め尽くした花の来歴はわからない

 
街に立ち込める麝香の匂い 
牡鹿の内臓のすえた臭い
この街では、供花は不吉

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雪豹

積乱雲を追って
暗い翳つくる地平を疾走するものがあった
川の古い祠の霊気を吸って
星辰のゆらぎを皮膚に烙印するものがあった

   (立ち枯れた草木月下のふかい冷え込みのなか
   雪豹の仔は生まれた)

机の上の青白い囲みのなかに
閉じ込められた雪豹をみる
書きかけた詩篇のなかで
原野に放たれ
都市の肉を引き裂くおまえをみたかった
力強く疾走し
さ苦痛と不和を削ぎ殺してしまうおまえを見たかった

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雪豹

積乱雲を追って
暗い翳つくる地平を疾走するものがあった
川の古い祠の霊気を吸って
星辰のゆらぎを皮膚に烙印するものがあった

   (立ち枯れた草木月下のふかい冷え込みのなか
   雪豹の仔は生まれた)

机の上の青白い囲みのなかに
閉じ込められた雪豹をみる
書きかけた詩篇のなかで
原野に放たれ
都市の肉を引き裂くおまえを見たかった
力強く疾走し
苦痛と不和を削ぎ殺してしまうおまえを見たかった
 

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剽窃

剽窃したい人はそこに居て、夏のセロリ をしっぽから齧っている。水は生温いが金魚鉢の赤い魚たちは夢を追わずきょうも元気だ。猫は背を丸めしっぽりと寝ている。
猫を抱きしめる主体は私だが、猫は私に抱きしめられたとは思っていない。
そのように、あなたは私の透けた静脈をみつめる。セロリをほとんど食べ尽くして。

剽窃したい人はそこに居て、その時間には詩人たちの居場所がない。装飾された言葉がない。ただひとつの

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薔薇の痛み

沈黙して眠るほかない
鬱積を投げ合う蒼い人語の地穴で
帆軸を極北に向けた
難破船のようにふかく朽ちていく

沈黙して眠るほかない
世界の清しい涯てを
むなしくも夢みて
未だ塔のように屹立する痛み
薔薇の棘ばかりが名をもつ
ひそかに 
おごそかに
薔薇の根を抉る
内部の声をきく極北の郷土より
土をあつめ
根のようにわたしを移植する
しずかに発芽した赤い蕾をそっと閉じ
瞼を重くするのは
心音はるかとお

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朗読上達法(詩村あかねによるレッスン講座)

★脱力

肩幅に足を開き、空をつかむイメージで両手を上げる。その緊張した状態から、首、肩、胸、腰、膝と順に緊張をゆるめていく。

★「ひらいた声」を出す

「ひらいた声」とは一番リラックスした状態で出す声のこと。椅子に出来るだけ楽に腰掛け、「La」、「Ma」をひと呼吸いっぱいに発声しながら、今日一番の「ひらいた声」をさがす。

★呼吸する

鼻から深く息を吸い、口から長く吐く。その時、脇腹(横隔膜

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この状況を奇貨として

          白島 真

 2020年3月号より当誌の詩誌評を担当することになり、年間を通して毎月100冊から150冊の詩誌を読み込んだ。
 筆者が詩誌を友人と発行したのはもう半世紀も前の20代のころの一時期で、今回は全国で発行される量の多さと各々の充実した内容に圧倒された。
 初回3月号の詩誌評タイトルは「詩誌文化」とし、冒頭「詩誌の世界は百花繚乱、まさに詩誌文化と呼ぶにふさわしい活況を呈

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詩の感性は風と聲に乗って

            白島 真

 前号では100号を越える詩誌を取り上げたが、その後、さらに8冊をご恵送戴いた。
 詩人会議系の詩誌「沃野」632、「軸」137、「道標」178すふの3冊。そして「日本未来派」239、「山脈」通巻149、「菱」209、「RAVINE」210、「笛」293の8誌である。同人誌の世界でこれだけ100号を越える詩誌が存在することは驚きであると同時に、詩の未来にほのかな

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100号越え詩誌の重み

           白島 真

 今回は詩誌の号数に留意してみた。100号を越えている詩誌に絞って書いてみようと考えたが、何と6月から9月中旬に発行され、たまたま今、手元にあるだけでも30誌もある。当然、全部は掲載し切れないので、詩誌名と号数だけを列挙すると以下のごときである。その中からいくつか取り上げてみたい。(地域や発行者、編集者のお名前は文字数制限があり割愛させてもらった。順は不同です)

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次世代への継承とネット

 

                   白島 真

 今回はインターネット(以下ネット)における詩の世界に少し触れてみたい。
 ネットの普及は1995年のWindows95の発売から加速したと言われている。筆者が初めてパソコンを購入したのが2003年のことで、それ以前も以後も仕事で使うということは皆無であった。メールアカウントには53という数字が含まれているが、それは今から17年前の53歳の時

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息苦しさを超えて

                   白島 真

 いきなりの私事で恐縮だが、私は新聞もテレビも見ない。ニュースソースはもっぱらツィッターである。コロナ禍についてのワイドショーなどは幸いにして見たことがなく、徒な不安を煽り立てられることもない。最低限の防御だけはしている。

★「詩素」8(平塚市・洪水企画)野田新伍・南原充士・池田康による編集。読み物としては南原の「ベートーヴェンのピアノソナタ」が

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個人誌という思想の器

                   白島 真

 今回はいつもよりやや個人誌が目立ったので取り上げてみたい。その利点は、思うがままに自己主張でき、詩と散文の配分、発行時期、頁数など自由に決定できるところで、個性を全面に打ち出すことができる。難点としては余程工夫をした誌面作りをしないと画一化され、読者に物足りなさを感じさせる。今月手元に届いている個人誌は14誌。装幀もきちんと製本されたもの、中綴じ

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様々なる衣装(意匠)

                   白島 真

 毎月多くの詩誌が届けられ読んでいるが、その形状や装幀も様々である。ハッと目を引く表紙もあれば、ワード出力用紙をホチキスで止めただけのものもある。
これから詩誌を創刊される場合、やはり郵送料を考慮して制作する必要があることは言うまでもない。同人誌間の交互送付が盛んである現状を鑑みると、高額な郵送料は負担が大きい。
 よく目にする形状はA4用紙を三つ

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人の生き死にのように詩誌の歴史も

            白島 真

 コロナウイルスが猛威をふるっている。4月1日現在で感染者数521人の東京を筆頭に大阪・愛知・北海道・千葉・兵庫・神奈川・埼玉が100人越えである。詩誌名や発行場所、詩人名を新たに覚えてきているが、都市名が出ると具体的な詩誌も浮かび、大丈夫だろうかと心配にもなる。早く収束して欲しいものだ。エイプリルフールの日に、国がマスク2枚を全家庭に配布と決めた無策とも思える

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喉に刺さる小骨を胸に

 70歳の古希ともなれば、いつお迎えが来てもいいころだ。
この歳で苦悩がどうの、真理がああのとぼやいていれば、仮にそれが心の裡だけのことであったとしても、お前ね、いい加減観念して静かに終活でもして、身辺整理などもしろよ、ジタバタするのは見苦しくねっ?と、大人ずれしたもう一人の自分が語りかけてくる。そうすると書生っぽい私が項垂れて聞き取れないくらいの小声で言うのだ。でも、一応、私は詩を書いている人間

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