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マンガ&エイガ考察

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マンガや映画などの作品について考察したものです。
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人名を含んだタイトルなのに主人公が明らかに別の登場人物、という物語

人名を含んだタイトルなのに主人公が明らかに別の登場人物、という物語

ふと思い立って、Twitterで以下のような募集をかけてみたのですよ。

そもそもの発端は、上記ツイートにもある「鬼龍院花子の生涯」である。
あらためてちゃんと通して観たのはごく最近になってからだった。
この映画、ポスターでも予告でもヒロインはどう見ても夏目雅子なのだが、
夏目雅子が鬼龍院花子ではないのである。
(ちなみに鬼龍院花子役の高杉かほりはwikipediaに項目すらない)
この構造はあら

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一番いいジブリ映画。

一番いいジブリ映画。

「ジブリの映画の中で何が一番ッスか?」
会社での他愛もない会話のひとコマ。
ジブリ映画ねえ。

「やっぱり『カリオストロの城』とかになるんじゃないの?」と僕。
「それは確かに宮崎駿だけど、ジブリじゃないッスよ」と同僚。
「なんかさ、駿で『カリオストロの城』がいいって言うのって、
スピルバーグ映画で『激突』がナンバーワンって言うのと似てんね」
「そうッスね」
「なんだろうね、『ナウシカ』とかにな

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荒木飛呂彦『魔少年ビーティー』

荒木飛呂彦『魔少年ビーティー』

18歳の春、仙台にあるデザイン専門学校の見学に行った際、玄関横のロビーにあるソファで待つ間に渡されたのは「ジョジョの奇妙な冒険」のコミックスの束だった。
「当校の卒業生の作品です」
漫画読みなら知らないものはいない荒木飛呂彦とのそれが初めての出会い…というのは嘘で、「ジョジョ」の第一部も僕は「少年ジャンプ」でリアルタイムで読んでいたし、なんならその前のいくつかの短い連載作品もほとんどすべて読んでい

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映画「トニー滝谷」

映画「トニー滝谷」



映画「トニー滝谷(たきたに)」の監督は市川準だった。
市川準は「病院で死ぬということ」「トキワ荘の青春」などの、
非常に静謐な映画を撮る監督であり、
もともとはCMディレクターであった。
なるほど、各シーンへの入り方、研ぎすまされた映像、
この緊張感は確かにCM的かもしれない。

「トニー滝谷」の原作は村上春樹で、
音楽は坂本龍一で、
主演男優はイッセー尾形で、
主演女優は宮沢りえだ。
もう、

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さらばゴールデンカムイ

さらばゴールデンカムイ

[ご注意]本稿はネタバレを盛大に含みます。

まずは作品について『ゴールデンカムイ』は2014年から週刊ヤングジャンプに連載された漫画作品。作者は野田サトル。Wikipediaから引用すると「明治末期(日露戦争終結直後)の北海道・樺太を舞台にした、金塊をめぐるサバイバルバトル漫画」だそうである。「冒険・歴史・文化・狩猟グルメ・GAG&LOVE 和風闇鍋ウエスタン」というキャッチコピーもあったが、的

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20220522 ドラゴンタトゥーのソーシャルネットワーク

20220522 ドラゴンタトゥーのソーシャルネットワーク

土曜日の夜は「ドラゴン・タトゥーの女」を観てた。そして金曜の夜は「ゾディアック」を観ていたので、デヴィッド・フィンチャー監督の映画を立て続けに観ていたわけである。

なんでいきなりフィンチャー祭りなの?と言われると答えに窮するが、理由の一つは、以下の鼎談動画でSSこと佐藤くんがこう言っていたのを思い出したからでもある。
「デヴィッド・フィンチャーは、基本的にハズレがない。1本もない」
彼のこの強い

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よほど疲れている時でも序盤からスッと入って面白く観ていける映画

よほど疲れている時でも序盤からスッと入って面白く観ていける映画

というなにげないツイートに、たくさんの映画をお勧めいただいたので、はなはだ簡易的ではありますがまとめます。

ひなぎくさんからは『ゆるキャン劇場版』。

みみくろさんのオススメは『ナチョリブレ』。

『クイーンズ・ギャンビット』はTLでオススメというのが流れてきたので。

まいんさんから『JUMANJI: WELCOME TO THE JUNGLE』。残念ながらNetflixにはきてないようでした

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Netflix「ドライブ・マイ・カー」視聴メモ【思考の断片】

Netflix「ドライブ・マイ・カー」視聴メモ【思考の断片】

監督:濱口竜介
脚本:濱口竜介、大江崇允
撮影:四宮秀俊
音楽:石橋英子

【キャスト】
家福悠介:西島秀俊
渡利みさき:三浦透子
家福音:霧島れいか
イ・ユナ:パク・ユリム
コン・ユンス:ジン・デヨン
ジャニス・チャン:ソニア・ユアン
ペリー・ディゾン
アン・フィテ
柚原:安部聡子
高槻耕史:岡田将生

2022年米アカデミー賞国際長編映画賞受賞
2021年カンヌ国際映画祭脚本賞
2022年ゴー

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難解な映画と「補助線」、そしてヒットする作品の話。

難解な映画と「補助線」、そしてヒットする作品の話。

タローさんの記事に触発されて書いてみる。これって昔のブログ文化でいうところの「トラックバック」というやつですね。懐かしい。
なお、Threadsに書いた内容の加筆修正となります。バラしちゃった。バラさなくていいのに。

難解な映画とはなんだろう。それは、平たく言えば「わかりやすい説明を省いた不親切な映画」となるだろうか。
古くは「2001年宇宙の旅」が難解と言われたし、デビッド・リンチの「マルホラ

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クライマックスがライブや演奏シーンで盛り上がる映画

クライマックスがライブや演奏シーンで盛り上がる映画

映画は体験である。体験であるから人間の五感に訴えかける。なのでストーリーや映像だけではなく「音楽」も重要な要素なのは必然だ。

そして映画の中には「演奏」や「ライブ」がクライマックスに用意された、ストーリーがその「本番」に向かっていくような構造の作品が存在する。そういうのを集めてみた。
なお「単に演奏シーンのある映画」は除外したい。部分的な演奏シーンまで含めてしまうとそういう映画は無数にあるからだ

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『宝石の国』考察(後編)

『宝石の国』考察(後編)

いよいよ後編です。
前編と中編のリンクも貼っておきますので、未読の方はどうぞ。

記事本編に入る前に、まず本作が12年間の連載を終えて完結したことを記さねばなりません。市川先生、お疲れさまでした。
「予定通り終わることができてよかった」というコメントそのままに、実にぴったり百八話での完結、物語としても美しくまとまって終われたことが素晴らしいと思います。

では、書いていきます。

深刻化する宝石た

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『宝石の国』考察(中編)

『宝石の国』考察(中編)

中編です。
前回の最後に「後編へ続く」と書いておきながら、とても2本には収まらないと思ったので訂正して3部構成(とりあえず)です。
前編の最後の1行も直しておきました。

イメージの圧倒的豊かさこの作品は一枚絵の完成度が高いと前編で書きました。
シンメトリックな構図、繊細な描写、キャラクターたちの美しいフォルム、モノクロなのに「色彩豊か」と言いたくなるような光と影の鮮やかな捉え方。どれも非常に見事

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『宝石の国』考察(前編)

『宝石の国』考察(前編)

先日、ふとしたご縁で教えてもらった漫画作品『宝石の国』。
最初こそ世界に入っていくのに苦労したものの、作中の「謎」が明らかになるにつれて惹き込まれていきました。作画といい、物語の象徴性の高さといい、好き嫌いはともかくこれは一つの傑作でしょう。

下のPVはアニメのものですが、ここでは原作漫画について言及します。

原作者は市川春子、月刊アフタヌーン連載。
2012年連載開始、コミックスは12巻まで

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