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出版社の仕事~営業~

「出版の世界はおもしろい。」

平凡な言葉だが、これが、出版社で働く私の素直な気持ちだ。

ふとそんなことを思ったので、出版社の仕事についてまとめてみる。今回取り上げるのは「営業」だ。

【営業】

どの企業でも、まずは営業が契約を取る。営業なくして事業の成功はあり得ない。

営業担当は、どんな人が本を出版してくれそうか、日夜アンテナを張り巡らせながらリストアップをし、手紙や電話、メールなど、あらゆる手段を用いてアプローチを行う。毎月3,000件リストアップをしても、毎日100件電話をしても、アポイントが取れなければ成果には繋がらない。当たり先や電話でのトーク、メールの文面など契約までのフロー全段階に気を配り、詰めが甘い点がないか日々見直しを行う。

いざアポイントが取れたとしても気は抜けない。全員が初めから出版する気で話を聞いてくれるわけではないからだ。営業としては、どうにかして本を出すメリットを理解してもらわなければならない。しかも、それだけではなく、相手に出版の必要性を感じてもらえるまで話をしなければならない。

そのために必要なのは、相手について知ることである。これまでどういうきっかけがあって、どういうことに関心を持ち、どういうことをやってきて、今後どういうことを成し遂げようとしているのかを、心の底からの興味をもって聞く。そうすれば自ずと、どのように伝えれば効果的に出版の魅力が伝わるかが見えてくる。

まさに、「敵を知り、己を知れば百戦危うからず」である。日常的な例えをするならば、目の前の料理をより辛い料理に仕上げたいときに大切なのは、まずは味見をしてみることと、もう一つは唐辛子、胡椒、山椒、わさびなど辛味となる材料を知っているということだ。この二つの条件が揃うことによって、自分が仕上げたい料理にはどんな調味料を加えればいいかが明確になるのである。

こう考えれば、営業は一つのアポイントを大切にしなければいけないことがわかる。しかし、大事なのはその母数である。銀河系なくして太陽系なく、太陽系なくして地球なく、地球なくして人類なく、人類なくして日本なく、日本なくして日本人なく、日本人なくして日本語なし。規模こそ違えど、何事においても分母を凌駕する分子はないのである。

だから、アポイントなくして商談なく、商談なくして契約なし。営業部長がアポイントにこだわる理由はそこにある。

営業は毎日が闘いである。受注確度を見極め、「出版してくれるかもしれない」可能性を高める方法を徹底的に考え抜き、実践し続けることで価値が生まれる。仮説と検証の繰り返しにより、営業という仕事に深みが生まれてくるのだ。

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