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かきもの

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目を開けてお祈りしましょう

目を開けてお祈りしましょう

中学の入学式のとき、彼に初めて出会った。

百合みたいに真っ白で素朴なチャペルでのこと。建物の中にあるオルガンの音が、神聖に響く。

建物に入ったとき、上級生がピンクのバラをくれた。緊張している新入生たちの胸ポケットに、花を挿していく。自分の存在が歓迎されているのを感じて嬉しくなった。

そこには受験戦争を終えた少女たちが集まっていた。期待と不安でいっぱいの子。ここにくるつもりは無かった、というプ

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【詩】森を駆けて。

【詩】森を駆けて。

正しさがわからなくて
感情のまま
獣のまま
生きている時がある

どちらが正しいかなんて
わかりたくもない
突き進みたい

一抹の不安にふたをして
それがいつか
ふくらんで
爆発するんじゃないかって

そう思うなら
向き合うしかないのだ
向き合うしかないのだ

【小説】朝、出かける準備をするだけでも。

【小説】朝、出かける準備をするだけでも。

※ウツと診断された登場人物が出てきます。症状に関する描写があるので、気になる方は読むのをお控えください。

朝、今日は出社できるかも、とヨウコは枕元のスマホを開く。目覚ましより、少し早い。

目覚ましを少し過ぎただけで、起きる気力が無くなった日もあった。今日はまだマシだ。

ひんやりした空気。

上着をひっかけ、洗面所に向かう。いつからか、顔を洗う時、手で水をすくうのではなく、両方の手のひらを濡ら

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【詩】明日。

【詩】明日。

君が消えたくなるたびに
僕は無力を自覚する

君が絶望するたびに
僕は無力を自覚する

君が明日から逃げようとして
それでもダメな時

僕はそばに駆け寄る
君はもっともっと離れていく

あなたに明日を望むのは私のエゴです

あなたの幸せの中に入れて欲しくて

あなたの生きる理由を一つでも作りたくて

けれどもそんなことはできなくて

あなたがただ、自分で歩んで
自分の幸せを見つけた

私はそれを眺

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【詩】恋人。

【詩】恋人。

私は恋人に逢いたくてしかたがなかった
逢って抱きしめたかった
抱きしめられたかった
恋人のそばで何も考えず
ただ目を閉じて眠っていたかった

家族と抱き合うことが減ったのは
夏の暑さのせいだけではない

あの人と抱き合う時の感動を
感じることができないのが辛いから

けれども何年かたてば
私たちは今ほど、抱き合うことに重きを置かなくなる
それ以外のもので満たされるから
それはとても
幸せなことだ

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小説を書き直す作業。

小説を書き直す作業。

今日は昨日より、どこか憂うつで。

外に生えている木々が日に照らされ、窓のブラインドに陰をつくっている。時々風に吹かれ、陰がゆらゆら揺れていて、それを眺めていると、心が外を散歩しているような、そんな心持ちになる。

以前書いた小説「蝉しぐれ。」を書き直している。読み返すうちに、物足りなくなったというか、もっと作り込みたくなった。

梶井基次郎の「檸檬」などは、京都の街並みを見て歩き、そこで過ごした

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【小説】蝉しぐれ。

【小説】蝉しぐれ。

プールの次の授業が古文というのは、どうかしている。案の定、クラスの半数は寝こけていて、その他の人も普段ほどは集中できず、ゆるんだ空気が流れている。

初夏は好きだ。まださほど蒸し暑くなく、風が心地よい。ほんの少し湿った、新緑の空気をはこんでくる。木陰にすわって、本を読みながらまどろむのなんて、最高に違いない。

朱里はふと窓辺に目をやった。学は窓ぎわの、前から三番目の席。頬づえをついて、窓のそとを

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年上の恋人よ。(「年下の男の子」の替え歌)

年上の恋人よ。(「年下の男の子」の替え歌)

さんひさんの「年上の男の子」を聴いて書いてみました。
キャンディーズさんが大元ですが。

片手に握ったタオルと
ネルシャツ リュックかポシェット
あの人 あの人 素敵な
年上の恋人よ

口下手で 正直で
嘘付けないとこ 好きだよ
L O V E 言えないね
私のこと好きならば
はっきり聞かせて

繋いだその手は汗ばみ
視線はなかなか合わない
この人 この人 愛おしい
年上の恋人よ

ちっちゃいバッ

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何にもしたくない時もある。

何にもしたくない時もある。

今日はとてもしんどい。英検の勉強ができたのでまあよしとする。

恋人に生きるのが辛いと打ち明けたら、なんというだろうか。恋人も生きるのが辛いだろうな、と思う。

私は短気なくせに、それを全て内側に押し込もうとしてしまう。それで体を壊す。家族とか、甘えられる人には当たってしまう。

いつもそうというわけではないけど、今日は調子が悪かった。

私を傷つけてきた人たちに、思いっきり怒れたら、何か変わるの

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好きな人が好きだけど。

好きな人がとても好きだ
誰よりも好きだ
でもそんな時
私は相手のことを考えていなくて
恋している自分に
酔っているだけのことがある

意味ありげなあなたの視線に
私は心を捉えられてしまう

好きな人が好きだ
何度も、なんどもそんなことをいう

壊れてしまいそうになる時がある
今はまだ あなたを頼れない
頼ってはいるけれど
全ての体重をあなたに預ける勇気はない

愛している
この言葉

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好きな人への詩。

私は 悲しい時にしか
歌が作れないものだとばかり
ちかごろ感じていたけれど
貴方を思いながら
詩を作ることにしました

遠く離れた貴方
その道のりを苦ともせず
私に会いに来てくれた

はっきりとは伝えない
でも行動やさりげない言葉で
私への気持ちがわかる

私は臆病だから
はっきりと分からないままで
貴方に気持ちを伝えることはできません

けれど少しずつ 伝えていくから

辛い時に筆を取る。

辛い気持ちを吐き出したいとき、
どうしようもない時に私は
筆をとってしまうらしい。
決めつけは良くないかもしれないが、
嵐のように渦巻く気持ちを飼い慣らせない時に、
私は言葉を紡いでいる。
私のことばは全て、
私のものだけれど、
私だけでは産まれない。
あなたがいて、
あの人がいて、
重く湿った残暑の空気があって、
そういう中で産まれる。

愛とは、恋とは、何なのか。
ラジオで、
「作家にとって現

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ことば。

人のことばに
嫉妬している
あの人が
私だけのものであればいいのに
この人みたいに
ことばを操れたらいいのに
それなら
もっとひたむきに
ことばを使うトレーニングをすれば?
とも思うけれど
サボり続けて
ここまで来た。
ことばで遊ぶ貴方を見て
羨ましさと
自分の保守的さに
肩を落とす
あなたみたいに
気さくに人の心に入りたい
重くなく
気取らず
「あなたと会えて
会話できて嬉しい」
それだけの気

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夜明けと夕焼けの直前の濃紺の空の色が部屋に差し込んで白い天井を染めるとき、布団に入ることの、なんと幸せなことか。