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STINGY SOUVENIR AND SPECTACULAR SCENERY 4 - Izumi Origins EP2
【2-1】【2-2】【2-3】
有翼の巨大な魔物——ゾーナ・シーカーは僅かに首を傾げるような仕草を見せたが、次の瞬間びくりと身体を仰け反らして絶叫した。あの妖異が魔物の体を乗っ取ろうとしているのだ。それが完了するまでにどれほどの時間が掛かるのか定かではない。——いま仕留めなければ。イズミは己を強いて刀を構え、一歩踏み込んだ。その瞬間、ゾーナ・シーカーの巨大な尾が凄まじい速度でイズミの目の前に叩き
STINGY SOUVENIR AND SPECTACULAR SCENERY 3 - Izumi Origins EP2
【2-1】【2-2】
イズミは数日前の記憶を辿る。黒衣森の奥深くに潜んでいた憎き仇の一柱、妖異グシオン。苦闘の末に討ち果たしたその妖異を、神と崇める集団がいた。逆上し真っ先に斬りかかってきたエレゼンの教祖を、イズミは一太刀のもとに斬り捨てた。殺到する狂信者達も来た順に殺した。あとは新聞記事の通り。
ならばこちらへ近付いてくるあの教祖の男は殺し損じか、ゾンビーか。死体が動き出す事などさほど珍しく
STINGY SOUVENIR AND SPECTACULAR SCENERY 2 - Izumi Origins EP2
【承前】
トトリは己の背丈より大きな背嚢を開け、中に詰め込まれている品物を検めていく。粗皮、角片、甲殻、翼膜。アイスシャードの詰まった箱には大小様々な肉塊が詰め込まれている。イズミは己が狩ってきた戦利品が並べられていく様を、ソファからぼんやり見つめていた。一服したい欲求が首をもたげたが、壁に貼られた「禁煙」の張り紙を思い出し、己を律した。
野に出て獣を狩り、糧を得る。古来より続く冒険者の営みは
STINGY SOUVENIR AND SPECTACULAR SCENERY 1 - Izumi Origins EP2
黒鉄の生贄台に振り下ろされた鉈の音が、夜の黒衣森に響き渡る。幾度も鳴り響くそれに骨肉を断つ音が混ざっている事を、冒険者ネル・リナラーは暗闇の中で否応無く理解した。出来ることなら目だけでなく耳も塞ぎ、その悍ましき所業すべてを拒絶したかった。だが塞ぐための腕は血濡れた枷を嵌められている。不気味な太鼓の音と人々のざわめきの中、檻の扉がぎぃと鳴り、靴音が近づいてくる。靴音はネルの側で止まり、足枷を外す音が
もっとみる餅を機械でこねながら
「オッ!こりゃスゲェ!2等!」
カランカランと鐘を鳴らしながら、福引会場の店員が大きな声を張り上げた。その声は歳末で賑わうラザハンバザールによく響く。
「景品はこちら!全自動餅つき機【メチャモーチモチスルゾークン】!」
ダァン!と勢いよく置かれた箱を前に、当選者たるイズミは当たりくじを片手に怪訝な顔をしていた。
「メチャ……なにて?」
「いやぁおっちゃんもよくわからねぇんだけど、ちょっと
激突!青葉イズミ対イ・メルダ・リコ
「我が槍の!サビとなるがよグワーッ!」
男の腹に女の重い蹴りが叩き込まれる。自慢の槍を振り回す暇すらなかった。男は膝から崩れ落ち、ばたりと倒れた。その身体には黒い鱗と山羊めいた角があった。
対する白い鱗と角を備えた小柄な女は、念の為もう一度男の頭を踏みつける。そしてエデンモーン装束の開いた胸元から縄を取り出して男を拘束した。慈悲をかけたわけではない。雇い主から殺しはやめろと言われているからだ。
CURSED LEAF AND DAUNTLESS BLADE 4
【承前1】【承前2】【承前3】
暗く湿った地下通路に響いていた弱々しい足音が止む。襤褸をまとったミコッテの少女はひとり途方に暮れていた。恐ろしい化け物の餌食になる寸前、誰だかわからない女に助けられ、必死で階段を駆け上がった。しかし、先の見えない通路と扉のどこへ進もうとも、彼女は自分が助かる光景を思い描く事が出来ない。闇は何より恐ろしい。
それでもなお、少女は壁に手をつきながら、一歩一歩歩みを進
CURSED LEAF AND DAUNTLESS BLADE 3
【承前1】【承前2】
「垣間見させてやるよ……私の……悪夢を!」
小鬼の足を、闇色の腕が掴んだ。長い長いその腕は瞬く間に小鬼の身体を駆け上がり、獲物を捉える蛇のように小鬼をぎりぎりと縛り上げる。
「ヒィアァーッ?!こ、これはなんだねェー?!」
「うわぁぁッ!離すんだねェー!!」
闇の中で小鬼達が悲鳴を上げるが、それが叶うはずもない。小鬼にまとわりつく《妖異》の行動原理は実にシンプルだ。
CURSED LEAF AND DAUNTLESS BLADE 2
【承前】
「ナルザル」「ご当地」「紅蓮の解放者」「陛下御用達」「買うしかない」イズミは派手な看板を飛び渡り、夜の砂都を駆け抜けていく。目指すは古美術商会《ヘールゲーツ》社屋。その最奥にある禁書だ。目の前のひときわ大きな看板。鉤縄を用いて乗り越えにかかる。看板に描かれた屈強な女戦士には、アラミゴ解放戦争を勝利に導いた英雄の名が添えられている。
英雄は丸太のような腕で剣を掲げている。ギガース族の如
CURSED LEAF AND DAUNTLESS BLADE 1
男は部屋の扉を閉めると、連れ込んだ女を後ろから抱きしめた。服の上から乱暴に胸を弄ると女はわずかに抵抗を見せたが、酩酊した女の力などたかが知れていた。男は構わず乳房を揉みしだく。酒場で呑んでいた時に想像した柔らかさより数段上だった。
闇の中で吐息が重ねられていく。男はさらにもう一方の手を女の腰に回した。衣服の下に滑り込ませた指が、肌と異なる硬い感触を見つける。鱗だ。男が鱗の流れに沿って指を這わせる
崖から落ちた光の戦士
「あっ」
ふわりと浮かんだわたしの身体が重力に捉えられて落ちていく。さっきまで歩いていた崖が崩れているのが見えた。ぬかるみ。地滑り。滑落事故。抱えた素材を投げ出して手を伸ばす。掴んだのは空気。だめだ。この下、どうなってたっけ。たしか、鉱石がたくさん。まずい。
ソウルクリスタルを掲げてジョブチェンジ——できない。いつもの装備はぜんぶ麓だ。今のわたしが着ているのは堅牢な鎧じゃなく、うかれた水着とシ
スナック身の上ばなし・二次会リプレイ
「……で、今の私はひとりの冒険者。英雄様に追いつき追い越したい…そんな日々だよ」
私は身の上を語り終え、ステージの上からぺこりと一礼した。混み合う店内から喝采や拍手が返ってくる。なんだかむず痒い気分だった。「スナック身の上ばなし」。それぞれが語る半生を肴に呑む酒はなかなか美味しかった。しかし呑み足りないからと二次会まで来てしまえば、さすがに自分にもお鉢が回ってくるというものだ。私は酒の力を頼りに
願わくは花の下にて・異聞
「でやぁぁぁーーーッ!」
雄叫びと共に繰り出されたイズミの刀が鉄塊と交錯し、その衝突音が林間に響き渡る。イズミは舌打ちし、即座に地面を蹴って飛び離れた。瞬間、別の鉄塊が振り下ろされ、イズミのいた地面が大きく抉り飛ばされる。暗黒騎士が振るう大剣と見紛うそれは、巨大な苦無だった。
イズミは受け身を取って愛刀を構え直し、相手を見つめた。土煙の中で怪しく光る桜色の双眸。巨大な女がぐるると獣じみた唸り声