記事一覧
号泣する準備はできていた 江國香織
前進、もしくは前進のように思われるもの
でも、齟齬はおそらくもっと前から生じていたのだ。いくつもの口論と、そのあとの和解。物事は何一つ解決されない。かなしいのは口論ではなく和解だと、いまでは弥生も知ってしまった。
熱帯夜
バーと、中古レコード屋と、焼肉屋の多い街だ。夜の始まったばかりの、まだ群青色の空の下を、私と秋美はならんで歩いた。
東京の夜の空気に似た舌ざわりがする
でも秋美にあいた
鉄血のオルフェンズ 一期
1
例え罠でも、罠ごと噛み砕くまでさ
ねえ次はどうすれば良い?オルガ
どこにも逃げ場なんてねえぞ、はなっからな。なあミカ
で、次はどうすれば良い?オルガ
死なねえ死んでたまるかこのままじゃ、こんなところじゃ、終われねえ、だろ?ミカぁ!
ねえ次はどうすれば良い?オルガ
決まってんだろ。行くんだよ
どこに
ここじゃないどっか。俺たちの本当の居場所に。
うん。行こう。俺たち。みんなで
2
死んでしまう系のぼくらに 最果タヒ
きみが死んだ時ほど、夜空は美しいのだろうし、ぼくは、それを少しだけ、期待している。
きみが好きです。
死ぬこともあるのだという、その事実がとても好きです。
愛はいらない、さみしくないよ。ただきみに、わたしのせいでまっくろな孤独とさみしさを与えたい。
赤い夜景、それは故郷では見られないもの。それを目に焼き付けること、それが、きみがもしかしたら東京に、引っ越してきた理由なのかもしれない。
時間の
神様のボート 江國香織
子供のころに何度も読んでもらったおとぎばなしの影響かもしれないが、私には、自分が森のなかで道を見失い、ぐるぐるとやみくもにさまよっているという感じがある。つねに。
あたしのクレヨンはいつも黒と白ばかり減ってしまう。
風にちゃんと草や木の匂いがする。とくに帰りみちはいい。もう深夜なので、あたりに人っこひとりいない。夜空で星の凍っているその暗い道を、私は襟巻をなびかせて帰る。ときには腰を浮かせ、高
とかげ よしもとばなな
この記事読み返した私が、作品読み返してくれたらいいな。
らせんがお気に入り。
新婚さん確かに私の知っている顔だった。気にいっている芸能人や、初恋の子や、いとこや母や思春期に性欲を覚えた年上の人や、そういう「いつかのだれか」に似ている気がした。
「どうして?」
女が私の目を覗き込んだ。胸元の花が揺れた。大きな瞳にまつげがびっしりとはえているのが見えた。深く、どこまでも遠く、子供のとき初めてプラネ
あやかしの鼓 夢野久作
私はこれを私の思うた人に打たせて『生きながら死んでいる私』の心持ちを思い遣ってもらおうと思ったのだ。ちっとも怨んだ心持ちはなかった。
その声は非常に静かで女のような魅力があった。
この家中に充ち満ちている不思議さ……怪しさ……気味わるさ……が一時に私に襲いかかって頭の中で風車のように回転し初めた
私はその時何の意味もなくお辞儀をしたように思う。その婦人もしとやかにお辞儀をしてすれ違った。その
女生徒 最後の一文について
おやすみなさい。私は、王子さまのいないシンデレラ姫。あたし、東京の、どこにいるか、ごぞんじですか? もう、ふたたびお目にかかりません。
少女は少女のままではいられない
小さな決別の詩を彼女は感じたのだと思う。
2021/11/04の日記
世界をそのまま眺めたら案外一人になれること、忘れていた
ムーンライト・シャドウ よしもとばなな
彼はなにこれ、と笑いはしたが決して無造作にではなく、大切そうに手のひらからハンカチに包んだ。その年頃の男の子にはあまりにも不似合いな行動なので、私はとてもびっくりした。
恋なんて、そんなものだ。
そんな気がしたなんて、後からいくらでも言える乙女の感傷だ。しかし私は言う。そんな気がしました。
なるべくいたずらにひまな時間を作らないように必死で努力した。それはそれは不毛な努力だ。本当はしたいことな