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入院

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記事一覧

警察官が精神科病院に連れて行ってくれる時

治療が必要と思われる状態なのに本人が受診を頑なに拒否しているときにどうするかは難しい問題である。

以下の記事では移送制度について書いた。

極めてまれに警察官が精神科病院に本人を半強制的に連れてきてくれることがある。

自分が経験したケースでは、
・入院中で外出や外泊したまま帰らないとごねだした人
・警察が逮捕・保護したものの取り調べにならず、本人も病院に連れて行けと騒いだ人(警察署を出るときは

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認知症の人の入院が長くなってしまう理由

精神科病院に入院している認知症の割合は増加傾向である。

私が働いている病院も以前に比べるとすっかり高齢の人、特に認知症の人が増えてきており、ホールは老人ホームのようである。

日本の精神科病院の入院期間が長いまま短くならない一つの理由として、日本では周辺症状の強い認知症の治療を精神科病院が担っており、さらに認知症の面倒を見るところのなかで精神科病院がもっとも安いからである。

認知症の治療は精神

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落ち着いているけれど退院できない人

落ち着いているけれど退院できない人

入退院を繰返しているAさん。

病棟内では何の問題もなく過ごし、時に他患のお世話もしてくれる。

といっても今は患者に他患のお世話をしてもらったり、掃除の手伝いをしてもらったりすることは保健所からダメといわれるため、見守りや声掛けや何か異変があればすぐに職員に教えてもらうという程度である。

普段は言わないものの、ごくまれに思い出したように「退院したい」と言うことがある。

病棟内では何の問題もな

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精神医療審査会と不当な入院が起きるとき

精神医療審査会と不当な入院が起きるとき

精神医療審査会というものがある

参照:東京都精神医療審査会

簡単に言えば、強制入院が妥当か判断し、退院などの請求を審査するところである。

実際の業務は、大量の書類をチェックすることが中心で、たまに退院などを希望する人の診察をする。

人権を守るという趣旨は良いものの、いろいろな課題がある制度である。

参照:精神医療審査会制度の現状と課題 平田豊明

上記のリンクと被ることも多いものの、実際

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入院したときに家族はどうしたら良いか 後編

入院したときに家族はどうしたら良いか 後編

入院した時に家族はどうしたら良いか 前編、中編 の続き。

7.待っているということを伝える病気を治療するために入院をするものの、いざ入院すると様々な苦しみを感じる。

病気の症状で苦しみ、
家族から離れている寂しさで苦しみ、
自分は病気ではないと苦しみ、
周りのちょっと変わった人の言動で苦しむ。

面会したときや、電話をかけてきたときに色々な苦しみを話し、「退院したい」「連れて帰って」「先生に退

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入院したときに家族はどうしたら良いか 中編

入院したときに家族はどうしたら良いか 中編

精神科病院に入院するということは、本人にとって大きな変化であると同時に家族にとっても大きな変化である。

入院したときに家族はどうしたら良いか 前編 の続きである。

4.定期的に様子を聞く入院治療は一種のブラックボックスである。

定期的に様子を聞くことで、少しでも不安を和らげることが大事である。

様子を聞くには、主治医に聞く、看護師やPSWに聞く、という方法がある。

主治医に聞くのは、医学

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退院請求や処遇改善請求が意味のあるものになるために

退院請求や処遇改善請求が意味のあるものになるために

入院している人と家族(の一部)は退院請求や処遇改善請求をすることができる。

自分の状態について不服申し立てをする権利を持っている、ということは重要である。

しかし現実的に意味のある制度にするのは難しい。

現在のチェック機能は実質的に機能していない医療保護入院の入院届、医療保護入院・措置入院の定期病状報告書は、一部 再提出を求めることがあるものの、基本的に全例で承認となる。

また退院請求や処

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ネット上の精神科医療に関する批判は冷静に見た方が良い

ネット上の精神科医療に関する批判は冷静に見た方が良い

ネット上では薬に対する批判、医師に対する批判、病院に対する批判にあふれている。

精神科病院に入院したときの体験として、
・ふん尿垂れ流しで放置された
・水がもらえず脱水で死ぬところだった
・性被害にあった
など。

クリニック批判には、
・長く待たされた上に話を全く聞いてくれない
・薬だけだされた
・自分のことを完全に否定された
など。

強く不満を感じた人だけが書き込みをする経営のことしか考え

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出入り禁止にすること

出入り禁止にすること

出入り禁止

いろいろな問題から、当院では今後治療をしないようにすること

多くの場合は、暴言や威嚇を繰返す、暴力、酔っ払って騒ぐ、病院のルールを全く守らない、治療上の説明を全く守らない、医療費の支払いをする気がない、などで出入り禁止にする。

自分は極力出入り禁止にしないようにしている。

一度出入り禁止にしてしまうと、当然 その人の治療はできなくなり、その人はまた一から治療関係を築かないといけ

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なぜ持ち物に名前を書くか?

精神科病院には不思議なルールがいくつかある。

その一つに入院するとありとあらゆる持ち物に名前を書くことを要求されるということがある。

コップ、ノート、服、靴 など、本当にありとあらゆるものに名前を書く。

ちょっとやりすぎでは?
退院したら使えないのでは?
と思ったりするものの、基本的に今まで働いた精神科病院ではそうである。

もちろん理由はある。

自分のものと他人のものの区別がつかない人が

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お金がないから入院させてくださいと言う人

お金がないから入院させてくださいと言う人

ごくまれに「お金がないから入院させてください」という人がいる。

お金が無く食べるものも無い状態が続き、絶望的になって死にたくなる人、気持ちが沈む人、不安になっている人、疲弊している人など 色々といる。

多くの人は抑うつ状態や不安焦燥状態や疲弊状態となっており、状態像からすると入院の適応になることが多い。

しかし考慮しないといけないことがある。

1.お金が無くなった理由は何か?・臨時のやむを

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1週間の夏休み

1週間の夏休み

医師になってから研修医のときを除いて、夏休みを1週間必ず取っている。

夏休みに限らず、長期休暇を積極的に取るようにしている。

さぼりたがりであることは確かながら、それ以外に理由がある。

ワーカーホリック予防ワーカーホリック=仕事中毒。

仕事ばかりしていて、仕事以外のことが考えられなくなる状態のことである。

ワーカーホリック予防の最良の方法は、自分がいなくても仕事は回る、という当たり前の事

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精神科病院が救急車を呼ぶとき

精神科病院が救急車を呼ぶとき

まれに病院が救急車を呼ぶことがある。

精神科病院の場合、身体疾患が悪化し、精神科病院では対応が無理で、一般科の病院に転院が必要なときである。

先日 身体的に急変した人を助ける処置をしていると、家族から「早く救急車を呼んでください」と何度も言われた。

気持ちは理解するものの・・・

すぐには救急車は呼べない。

看護師や医師は救急隊員より医療技術が高い(はず)医療的な知識や技術は、
医師>看護

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主治医が自分の言うことを聞いてくれないとき

主治医が自分の言うことを聞いてくれないとき

精神科医はひねくれ者と言われることが多い。

本人が「退院したい」と言えば、「この人は退院できないのではないか?」と考え、すぐに退院はさせず「本当に退院できるのか?」という視点で評価・検討する。

一方、本人が「退院したくない」と言えば、「この人は退院できるのではないか?」と考え「どうやったら退院させられるか?」という視点で評価・検討する。

「「退院したい」と言わなくなったら退院」という、半ば冗

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