stominaga

はじめまして!

stominaga

はじめまして!

マガジン

  • PJ Novelフリー投稿マガジン

    • 92本

    PJ Novelとは「小説」を 軸に活動する “クリエイターズ コミュニティーです。 このマガジンにはメンバーの自由投稿作品を集めています。

  • てのひら小説作品集

    • 213本

    愛媛の作家によるてのひらサイズの短い小説。 500文字以下の小物に印刷したら映えるサイズ。 それが「てのひら小説」です。 1000文字超えてても2000文字以上でも「いや、これが私のてのひらサイズなんじゃい」と言い張る気持ちがあればそれでOK。 広がれてのひら小説の輪。

  • PJ Novel 素材壁打ちアラカルト

    • 541本

    たてヨコ愛媛クリエイターグループ「PJ Novel」メンバーのチャレンジ作品や素材を集めたマガジンです。

  • IYO夢みらい館てのひら小説講座専用マガジン

    • 124本

    2020年からIYO夢みらい館で開催している「てのひら小説講座」受講生作品のマガジンです。

記事一覧

牛乳パックの秘密

 「あれ、なぜだ?」  牛乳パックを再利用して作った金魚鉢の中の金魚が、いつのまにか水に浮いている。  瑛二は小学生六年生ながら、新進気鋭の発明家である。牛乳パッ…

stominaga
11日前
5

入学式

 生まれて初めてのスーツ。親から依頼を受けた背広の仕立て屋さんが、自分のアパートにやってきた。採寸の途中で、男の一物をズボンの右側に置くか、左側に置くかによって…

stominaga
12日前
6

田舎町のタクシー

 「来月からうちの町のタクシー、午後10時までだってさ」  「え〜、じゃあゆっくり飲んでもいられねえな」  「わざわざ隣の町のタクシー呼ぶやつもいるくらいだからなあ…

stominaga
3か月前
4

猫と一緒に暮らす犬の悩み相談

 私は8歳のバーニーズとニューファンドランドのミックス犬である。体重も40kgほどある。ご主人様のペットとして、一人気ままに暮らしていたが、3年前、新入りがやってき…

stominaga
3か月前
9

宝くじに当たったら

 私の母は宝くじマニアだ。若い頃は1回に5万円ほど使っていたらしい。定期的に5万円購入するのが、最も効率の良い買い方だと聞いたことがあるが、母も10万円の当たり…

stominaga
3か月前
3

「ワイルドターキー、ロックで」

 バーボンはロックに限る。やや太めのグラスに氷を入れ、コトコトと手で揺らす。しばらくなじませた後、しばし口の中に含み、そのまま息を吸い込む。気化したアルコール分…

stominaga
3か月前
5

由布岳の輝き

 四国愛媛から一路湯布院を目指す。1時間のフェリー乗船の後、一般道路から高速道路に乗る。しかし、あいにくの雪模様の中、高速道路は通行止めに。仕方なく高速道路を降…

stominaga
3か月前
4

名前の由来

「佐藤正一君、6票」  クラス委員長選挙の結果、私は選ばれなかった。ほっとしたと同時に自分の得票数が気になる。誰も気づいていないようだ。  授業で、自分の名前の由…

stominaga
4か月前
5

クリスマスはクルシミマス

 ミスターパウェルは悩んでいた。クリスマスシーズンが近づいていたからだ。  日本では、クリスマスは楽しい行事だと思われているが、欧米ではそれだけではない。妻や夫…

stominaga
5か月前
2

北の工作員

 私は、羽田空港から島根出雲空港に向かっていた。取引先の工場に、あいさつがてら営業活動をするためだ。私の旅の楽しみといえば、旅先の温泉宿に泊まること。レンタカー…

stominaga
7か月前
7

芋煮会

 芋煮会のことを、わが故郷、愛媛では芋炊きという。私が芋煮会という言葉を知ったのは、東京で会社勤めをしていた頃である。私は人事部に配属され、会社の福利厚生全般を…

stominaga
8か月前
7

線香花火

 二本の線香花火が火花を散らしている。  あっと思った瞬間、ジュッと音をたてて、線香花火の玉が落ちた。 「あ〜あ、まだ途中なのに。」 「俺のを少しやるよ。」 彼が自…

stominaga
9か月前
6

ゾンビレンズ

ゾンビレンズ   これはリアルなのか、バーチャルなのか。  時は20xx年、地球上ではゾンビウイルスが猛威をふるっていた。ワクチンはまもなく開発されたが、ウイルスの…

stominaga
9か月前
6

点滴ヒーロー

 シュワッチ!  彼は正義の味方、地球の平和を守る、子供達のアイドル、宇宙人ヒーローだ。今日も1匹、怪獣を退治してきた。テレビ局の都合とはいえ、週一で怪獣を始末す…

stominaga
10か月前
5

さらば人類

「ご臨終です。」  医者の乾いた言葉が響いた。私の人生が終わった。長かったような短かったような、つらかったけれど、自分なりにがんばった人生。妹とその家族が、悲し…

stominaga
1年前
5

タイムマシンにお願い

 読経が続いている。ここは愛媛県、今治市。多島美を誇る瀬戸内海の中でも、ひときわ大きい島の中の小高い丘の中腹にある寺である。そこに百人ほどの人々が集まり、神妙な…

stominaga
1年前
4

牛乳パックの秘密

 「あれ、なぜだ?」
 牛乳パックを再利用して作った金魚鉢の中の金魚が、いつのまにか水に浮いている。
 瑛二は小学生六年生ながら、新進気鋭の発明家である。牛乳パックを再利用して家事に活用。お皿やスプーンの代用品として、特許を取得した。昨今のSDGsブームの中、牛乳パックメーカーと提携し、マスコミにも取り上げられ、小学生にして巨万の富を築くこととなった。
 さらなる活用をということで、瑛二は金魚鉢に

もっとみる

入学式

 生まれて初めてのスーツ。親から依頼を受けた背広の仕立て屋さんが、自分のアパートにやってきた。採寸の途中で、男の一物をズボンの右側に置くか、左側に置くかによって、スーツの寸法が変わることを知った。そして、青地に縦縞の、若者にしては渋いスーツが出来上がった。
 そのスーツを着ての大学の入学式だ。電車に乗る。運賃は90円。病院前の駅停でおりる。大学はすぐそこ。多くの新入生で歩道は埋め尽くされている。大

もっとみる

田舎町のタクシー

 「来月からうちの町のタクシー、午後10時までだってさ」
 「え〜、じゃあゆっくり飲んでもいられねえな」
 「わざわざ隣の町のタクシー呼ぶやつもいるくらいだからなあ」
 田舎のタクシーは台数も少ない。夜間だと1〜2台くらい。電車はというと午後10時台で終電である。そもそも田舎では、電車に乗って飲みに行くという感覚がない。
 遠い昔、私は深夜、彼女にふられ、タクシーで帰路についたことがある。手持ちが

もっとみる

猫と一緒に暮らす犬の悩み相談

 私は8歳のバーニーズとニューファンドランドのミックス犬である。体重も40kgほどある。ご主人様のペットとして、一人気ままに暮らしていたが、3年前、新入りがやってきた。生後1ヶ月の保護猫である。とってもちっちゃくて、ご主人様の手のひらに乗るほどの大きさだった。なので、私はてっきり私のおやつなのかと、思いっきりおすわりして待っていたくらいだ。
 ところがこの新入り、なかなかに図々しい。もうすっかり大

もっとみる

宝くじに当たったら

 私の母は宝くじマニアだ。若い頃は1回に5万円ほど使っていたらしい。定期的に5万円購入するのが、最も効率の良い買い方だと聞いたことがあるが、母も10万円の当たりくじを当てたことはあるらしい。
 今は年老いて、往年の勢いはないが、それでも宝くじのシーズンになると、「宝くじを買いたい」と言い出す。そして宝くじが当たったら、あの人にいくら、この人にいくらあげる、などと算段を始める。
 宝くじを当てる人よ

もっとみる

「ワイルドターキー、ロックで」

 バーボンはロックに限る。やや太めのグラスに氷を入れ、コトコトと手で揺らす。しばらくなじませた後、しばし口の中に含み、そのまま息を吸い込む。気化したアルコール分が肺の中に入り、続いてバーボン特有の苦味を感じながら、アルコールが体の中に染み渡る。キラキラと輝くグラスを眺めながら、だんだんと自分が壊れていくのが、心地良かった。
 あれから40年、今ではロックはおろか、水で十分だ。

由布岳の輝き

 四国愛媛から一路湯布院を目指す。1時間のフェリー乗船の後、一般道路から高速道路に乗る。しかし、あいにくの雪模様の中、高速道路は通行止めに。仕方なく高速道路を降り、車のナビを頼りに別ルートを行くこととなった。
 道は山道、山越えである。当然の如く、雪は深い。しかし、私の車は四輪駆動でスタッドレスタイヤをはき、南国愛媛にもかかわらず、寒冷地仕様の車だ。かつてタイヤチェーンを装着するのに2時間かけた上

もっとみる

名前の由来

「佐藤正一君、6票」
 クラス委員長選挙の結果、私は選ばれなかった。ほっとしたと同時に自分の得票数が気になる。誰も気づいていないようだ。
 授業で、自分の名前の由来を親に尋ねてくるように言われた時の、親の答えに愕然とした。正月一月一日に生まれたから、正一にしたんだよ。そんな理由で正一に、、、、。キラキラネームの友人が、自分の名前の由来を滔々と語る中で、自分は進んで語る気にはなれなかった。
「正一君

もっとみる

クリスマスはクルシミマス

 ミスターパウェルは悩んでいた。クリスマスシーズンが近づいていたからだ。
 日本では、クリスマスは楽しい行事だと思われているが、欧米ではそれだけではない。妻や夫、恋人に限らず、家族、親族、友人にまでプレゼントを贈らなければならない。デパートやスーパー、通販業者にとって、クリスマスは一大商戦であり、家のクリスマスツリーの下には、届けられたプレゼントが、すずなりに置かれる。
 しかし、アメリカの片田舎

もっとみる

北の工作員

 私は、羽田空港から島根出雲空港に向かっていた。取引先の工場に、あいさつがてら営業活動をするためだ。私の旅の楽しみといえば、旅先の温泉宿に泊まること。レンタカーを借り、営業活動を終えた後、その日の宿泊先を決めるため、車を止めた。
 しかし、止めた場所が悪かった。小学校のすぐ近くである。小学生の女の子が、何人かで連れ立って下校中だった。停車中の大きなダンプカーの横を通り過ぎ、その先に車を止めて、あら

もっとみる

芋煮会

 芋煮会のことを、わが故郷、愛媛では芋炊きという。私が芋煮会という言葉を知ったのは、東京で会社勤めをしていた頃である。私は人事部に配属され、会社の福利厚生全般を担当していた。その会社には、社員旅行の代わりに各部署単位で親睦会を開いており、一定の割合で会社から補助が出る。その手続きを私が取り仕切っていた。
 そして、補助のために申請される、様々な活動計画書の中に、芋煮会という言葉があった。芋煮会?芋

もっとみる

線香花火

 二本の線香花火が火花を散らしている。
 あっと思った瞬間、ジュッと音をたてて、線香花火の玉が落ちた。
「あ〜あ、まだ途中なのに。」
「俺のを少しやるよ。」
彼が自分の線香花火を突き出し、くっつける。一つの玉が二つになり、また二本の線香花火になった。

ゾンビレンズ

ゾンビレンズ 

 これはリアルなのか、バーチャルなのか。
 時は20xx年、地球上ではゾンビウイルスが猛威をふるっていた。ワクチンはまもなく開発されたが、ウイルスの変異も早く、なかなか収束のめどが立たない。そんな中、日本のベンチャー企業、オプティカルテックジャパンが、画期的な商品を開発した。
 ゾンビレンズ、コンタクトレンズにバーチャルリアリティを用いた特殊な加工を施し、そのレンズを通すとゾンビ

もっとみる

点滴ヒーロー

 シュワッチ!
 彼は正義の味方、地球の平和を守る、子供達のアイドル、宇宙人ヒーローだ。今日も1匹、怪獣を退治してきた。テレビ局の都合とはいえ、週一で怪獣を始末するのは、なかなか大変なことである。
 しかし、みんなは知らない。彼が戦いの後、空に飛び立った後、月の裏側で点滴を受けていることを。月の裏側では、看護師たちが待ち構え、宇宙人ヒーローの片腕に針をさす。地球で受けたダメージを、点滴で補うのだ。

もっとみる

さらば人類

「ご臨終です。」
 医者の乾いた言葉が響いた。私の人生が終わった。長かったような短かったような、つらかったけれど、自分なりにがんばった人生。妹とその家族が、悲しそうに私を見守っていた。
 これからどこに行くのだろう。私は自分の肉体から離れ、上に昇り始めた。昔、夢で見たあの感覚、幽体離脱というやつだ。病院の壁を突き抜け、空へ向かっていた。透き通ったような青空を抜け、日本列島を見下ろし、やがて青い地球

もっとみる

タイムマシンにお願い

 読経が続いている。ここは愛媛県、今治市。多島美を誇る瀬戸内海の中でも、ひときわ大きい島の中の小高い丘の中腹にある寺である。そこに百人ほどの人々が集まり、神妙な面持ちで和尚の背中を見つめていた。
 戦後まもない1945年11月6日、ここ今治沖で復員軍人や一般人580人を乗せた船、第10東予丸が転覆し、死者・行方不明者397名を出す一大海難事故となった。そして毎年11月に遺族が集まり、犠牲者の鎮魂の

もっとみる