ただかぜ

幼い頃から本を読むのが好きです。ハラハラドキドキしていただければ幸いです。 よろしくお…

ただかぜ

幼い頃から本を読むのが好きです。ハラハラドキドキしていただければ幸いです。 よろしくお願いします。

記事一覧

時(坂村真民作)

日の昇るにも 手を合わさず 月の沈むにも 心ひかれず あくせくとして 人世を終えし人の いかに多きことぞ 道のべに花咲けど見ず 梢に鳥鳴けど聞かず せかせかとして 過ぎ…

ただかぜ
5か月前
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張込26加藤との死闘⑦

「佐川巡査部長、動かないでください、まもなく救出が来ます」 「ああ、そうだな」 「安西から翔子、救出開始する」 「了解」 大盾を持った隊員5名が佐川と翔子を取り囲み…

ただかぜ
2年前
3

戦争

人は何の為に戦うのでしょう 領土拡大ですか 国の名誉ですか 欲を満たすためですか 自分の命は大事で他人の命はゴミのように排除する そこに人を思いやる心はありません 貴…

ただかぜ
2年前
10

張込25大学

 愛も新聞配達をしながら苦労の末に大学進学を果たす。しかし、そこはパラダイスではなかった。巨大レジャーランド、受験戦争から解放され、目標を見失なった親のすねかじ…

ただかぜ
3年前
23

仁義(斉藤一人作)

たった一度の人生を 世間の顔色うかがって やりたいことも やらないで 死んでいく身の 口惜しさ どうせもらった命なら ひと花咲かせて散っていく 桜の花の潔よさ 一度散…

ただかぜ
3年前
21

忘人歌

今 目を閉じて全てを忘れよう 時の流れに乗って夢の果てまで 旅路の終わりにたどり着いたら そこには何故か 君がポツンとたたずんでいる まるで過ぎた季節を惜しむように …

ただかぜ
3年前
20

張込24小田原愛の過去

 バラックのような家。東北の雪深い冬。 小田原愛の父親は日雇い。冬になると仕事がない。毎日一升酒を飲んで不平不満。  父親は、 「どうせ俺なんか何をしてもダメなの…

ただかぜ
3年前
5

張込23加藤との死闘⑥

 若い隊員が、 「安西班長、加藤は格闘中といえど丸腰です、身柄確保も楽勝ですね」 「そうかな、愛が拳銃を握っている、他にも佐川巡査部長の拳銃と江藤警部の拳銃が地面…

ただかぜ
3年前
8

張込22加藤との死闘⑤

「安西から本部、現場到着」 「本部了解、安西班長、人員配置知らせよ」 「ライフル狙撃手1名、パトカー10台、ヘリ1機、警察犬2頭、警察官25名配置完了」 「マルヒ(加藤毅…

ただかぜ
3年前
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張込21加藤との死闘④

 江藤は加藤と対峙している。 「加藤、法の裁きを受けろ」 「うるさい、権力の犬」  2人は間合いをジリジリ詰める。ビューと加藤は下段蹴りを放った。江藤は十字受けでサ…

ただかぜ
3年前
8

張込20加藤との死闘③

「まずい、この状況で加藤が拳銃を発射したら大変なことになる」 「加藤は佐川巡査部長に気が付いていない」 「そこの2人なにこそこれ話している、両手を上げて俺の前に来…

ただかぜ
3年前
11

張込19加藤との死闘②

 加藤は愛を盾にしている。  廻りにいるアベックに大声で、 「幸せな奴ら、携帯を捨てろ、動くなよ」  江藤に銃口を向け、 「お前らは拳銃、無線機を捨てろ、当然、携帯…

ただかぜ
3年前
11

張込18加藤との死闘①

 江藤、翔子、佐川が、愛と武者小路を尾行している。張り込みの任務も今日を含めて残り3日だ。 「江藤先輩、武者小路と愛が横浜でデートとは珍しいですね」  江藤と翔子…

ただかぜ
3年前
10

張込17不審者

 夜、交代交代で佐川がアパートで小田原愛のアパートを張り込み中、 「江藤警部、起きて下さい、誰か愛の玄関ドアに来ました」  江藤はガバッと仮眠から起き上がり、 「…

ただかぜ
3年前
11

総合病院

杖をついている人 腰が曲がっている人 酸素チューブで鼻から吸引している人 車椅子に乗っている人 ベッドに横たわり移動している人 奥さんの肩に手を添えて歩いている目の…

ただかぜ
3年前
7

幼いあの日

遠いあの日 弟と2人夕暮れまで 蝉取りをした ランニングに半ズボン 麦わら帽子をかぶって 時間の経つのも忘れて 蝉取りをした 赤とんぼが空に舞い上がり コウモリが飛び始…

ただかぜ
3年前
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時(坂村真民作)

日の昇るにも 手を合わさず
月の沈むにも 心ひかれず
あくせくとして 人世を終えし人の
いかに多きことぞ

道のべに花咲けど見ず
梢に鳥鳴けど聞かず
せかせかとして 過ぎ行く人の
いかに多きことぞ
二度とないこの人生を
いかに生き いかに死するか
耳かたむけることもなく
うかうかとして 老いたる人の
いかに多きことぞ

張込26加藤との死闘⑦

「佐川巡査部長、動かないでください、まもなく救出が来ます」
「ああ、そうだな」
「安西から翔子、救出開始する」
「了解」
大盾を持った隊員5名が佐川と翔子を取り囲み始める。
「出血がひどい、ここで応急処置を開始」
「翔子は江藤警部を応援しろ」

戦争

人は何の為に戦うのでしょう
領土拡大ですか
国の名誉ですか
欲を満たすためですか
自分の命は大事で他人の命はゴミのように排除する
そこに人を思いやる心はありません
貴方の家族が同じ目に遭ったらどうでしょうか
幼いとき、貴方は愛の中で育ったはずです
輝く太陽、そよ風、笑い声
思い出して下さい
あの頃を!

張込25大学

 愛も新聞配達をしながら苦労の末に大学進学を果たす。しかし、そこはパラダイスではなかった。巨大レジャーランド、受験戦争から解放され、目標を見失なった親のすねかじりの学生がゴロゴロ。麻雀にパチンコ、コンパ。愛の居場所はここにもない。
 そんな時、極左の天才学生闘士の演説を偶然聞く。その男は一般学生に向かい、
「皆んな、こんな社会でいいのか」
 その男は夕陽を背にして演説している。話し始めるまで40秒

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仁義(斉藤一人作)

たった一度の人生を
世間の顔色うかがって
やりたいことも やらないで
死んでいく身の 口惜しさ
どうせもらった命なら
ひと花咲かせて散っていく
桜の花の潔よさ
一度散っても翌年に
みごとに咲いて満開の
花の命の素晴らしさ
ひと花どころか百花も
咲いて咲いて咲きまくる
上で見ている神様よ
私のみごとな生きざまを
隅から隅までご覧あれ

私の好きな詩です!

忘人歌

今 目を閉じて全てを忘れよう
時の流れに乗って夢の果てまで
旅路の終わりにたどり着いたら
そこには何故か
君がポツンとたたずんでいる
まるで過ぎた季節を惜しむように

二度と再び逢うこともない
君が独りたたずんでいる
今 目を閉じて全てを忘れよう

 作者忘れました、私の好きな詩です!

張込24小田原愛の過去

 バラックのような家。東北の雪深い冬。
小田原愛の父親は日雇い。冬になると仕事がない。毎日一升酒を飲んで不平不満。
 父親は、
「どうせ俺なんか何をしてもダメなのさ、学歴もコネもない、日本は金持ちの社会、搾取されるだけだ」
 母親は、
「嫌だ嫌だ、こんな惨めな暮らし、毎日毎日酒ばかり呑んでダメな話」
「うるさい」
やがて父親は酔い潰れいびきをかいて寝てしまう。
「愛、お前は頭がいい、父ちゃんのよう

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張込23加藤との死闘⑥

 若い隊員が、
「安西班長、加藤は格闘中といえど丸腰です、身柄確保も楽勝ですね」
「そうかな、愛が拳銃を握っている、他にも佐川巡査部長の拳銃と江藤警部の拳銃が地面に転がっている、加藤が何か別の凶器を所持している可能性も捨てきれない」
「了解」
「ようーし、最初に重傷の佐川巡査部長を確保する」

 別の隊員が、慌てて安西班長に近寄って、
「安西班長、公安部長から警察電話です」
「なんだ、この緊急事態

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張込22加藤との死闘⑤

「安西から本部、現場到着」
「本部了解、安西班長、人員配置知らせよ」
「ライフル狙撃手1名、パトカー10台、ヘリ1機、警察犬2頭、警察官25名配置完了」
「マルヒ(加藤毅)の状況知らせよ」
「マルヒと江藤警部格闘中」
「負傷者の状況」
「負傷者2名、1名は佐川巡査部長腹から出血、もう1名は結婚詐欺師の武者小路と思われる足から出血」
「本部了解、現場の状況知らせよ」
「他に佐川巡査部長の側に翔子巡査

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張込21加藤との死闘④

 江藤は加藤と対峙している。
「加藤、法の裁きを受けろ」
「うるさい、権力の犬」
 2人は間合いをジリジリ詰める。ビューと加藤は下段蹴りを放った。江藤は十字受けでサバくと、ウリャーと右正拳突きと右回し蹴りの連続攻撃。加藤は倒巻肱(太極拳で猿が後ろに下がりながらも攻撃する技)で応戦。実力伯仲。
 小雨が降り、浜風が吹いている。夜空に流れ星。遠くでパトカーのサイレンが鳴る。
 江藤の後頭部は妙に冷めて

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張込20加藤との死闘③

「まずい、この状況で加藤が拳銃を発射したら大変なことになる」
「加藤は佐川巡査部長に気が付いていない」
「そこの2人なにこそこれ話している、両手を上げて俺の前に来い」
「江藤先輩、佐川さんが加藤の背後に」
「頼む、佐川さん」
 佐川は加藤の背後から拳銃を打った。通常では犯人の背後から拳銃を犯人に向けて発射することはありえない。前代未聞の拳銃使用。佐川にも一瞬のためらいがあった。
そのとき、愛が、と

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張込19加藤との死闘②

 加藤は愛を盾にしている。
 廻りにいるアベックに大声で、
「幸せな奴ら、携帯を捨てろ、動くなよ」
 江藤に銃口を向け、
「お前らは拳銃、無線機を捨てろ、当然、携帯もだ」
 「早まるな、加藤」
 江藤と翔子は拳銃を地面に置いた。
「俺は、どうせ助からない、死を覚悟した人間に怖いものはない、山奥でひっそり1人で拳銃自殺しようと思ったが、このまま1人死んだら俺は惨め過ぎる、俺の存在意義はどこにある、こ

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張込18加藤との死闘①

 江藤、翔子、佐川が、愛と武者小路を尾行している。張り込みの任務も今日を含めて残り3日だ。
「江藤先輩、武者小路と愛が横浜でデートとは珍しいですね」
 江藤と翔子は変装して恋人同士。佐川はサラリーマン風を装って遠方から距離を置いて尾行している。

 夕暮れになり、海に太陽が沈みかける。
 愛たちは横浜の港が見える公園のベンチに座っている。デートスポットらしく付近には大勢のアベックがいる。江藤たちは

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張込17不審者

 夜、交代交代で佐川がアパートで小田原愛のアパートを張り込み中、
「江藤警部、起きて下さい、誰か愛の玄関ドアに来ました」
 江藤はガバッと仮眠から起き上がり、
「加藤ですか?」
と愛のアパートのドア方向を見る。ドア付近に多分男だと思われる者が屈んでいる。この者は帽子をかぶってマスクに手袋着用している。
「何者なんだ、こいつは、侵入盗?このままだと小田原愛が危ない」
 江藤はドアを開けて外に飛び出し

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総合病院

杖をついている人
腰が曲がっている人
酸素チューブで鼻から吸引している人
車椅子に乗っている人
ベッドに横たわり移動している人
奥さんの肩に手を添えて歩いている目の見えない人

目も見え耳も聞こえ足で歩ける私
なんと幸せなことか!

幼いあの日

遠いあの日
弟と2人夕暮れまで
蝉取りをした
ランニングに半ズボン
麦わら帽子をかぶって
時間の経つのも忘れて
蝉取りをした

赤とんぼが空に舞い上がり
コウモリが飛び始め
太陽が沈みかける夕暮れ

遠くで母さんが
「ご飯だよー、戻って来い」
時は過ぎ、時は去り
あの楽しかった幼いあの日には
誰も戻れない