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BCGが読む経営の論点2024⑧:「プライシング」(+稲盛さんの「値決めは経営」)

読書ノート(158日目)
昨日に引き続き、今日も
こちらの本を紹介していきます。

もはや毎年恒例とも言える
「BCGの経営の論点」シリーズ
2024年版の注目テーマ(目次)は
以下の通りです。

・2024年に注目すべき大きな潮目の変化
第1章 エネルギーシフト:日本企業は”賢い需要家”を目指せ
第2章 生成AI:日本の”勝ち筋”と導入の5つのポイント
第3章 サーキュラーエコノミー:気候変動の次は生物多様性が問われる
第4章 経済安全保障とサプライチェーン:
 リスクの見える化で意思決定の仕組みづくりを

・競争優位を築くために必要な組織の能力
第5章 事業開発力:新たな成長に向けM&Aをどう活用するか
第6章 イノベーション:進化する手法と日本企業復活へのポイント
第7章 プライシング:インフレ時代の「値付け」戦略
第8章 人材戦略:「人事」を越えた経営課題へ発想の転換を

そして本日も
本書の後半のテーマ
競争優位を築くための組織の能力から
第7章  プライシング
についてです。

第7章:プライシング
 インフレ時代の「値付け」戦略
・プライシングの巧拙によって企業の業績は大きく左右され、
 グローバル環境で戦う上でもプライシング能力向上は必須
・AIをはじめとするデジタルテクノロジーを組み合わせれば、
 ダイナミック化やパーソナライズなどの高度なプライシングが
 可能であり、中期的にさらなる進化も見込まれる

・B2C(一般消費者向けビジネス)、B2B(法人企業向けビジネス)を
 問わず、企業にとって値上げは避けて通れない
・原料費の上昇分をそのまま値上げする「守りの値上げ」ではなく、
 企業が努力して生み出した付加価値に見合ったリターンを得る
 「戦略的な値付け」が重要

・顧客価値を起点に考える
・BCGではCustomer(顧客)、Competitor(競合企業)、Cost(コスト)
 という3つのレンズを組み合わせてプライシングを考える
・日本企業は現状では、コストと競合に比重を置く傾向がある
・B2Cの場合、顧客価値を起点にするとは、
 顧客が払っても構わないと思う価格、Willing to Pay(WTP)から
 逆算すると消費者が良いと思っている商品・サービスは現状よりも
 適正価格を上乗せする余地が見つかる可能性がある
・B2Bの場合、適正価格は基本的に競争環境に基づく市場価格、
 もしくは企業が提供する付加価値によって決まる
・その企業のみが提供できる商材であれば、
 顧客企業は高いプレミアム(上乗せ分)を払ってでも購入するが、
 同等品質の商材を複数社が提供していれば競争になる
・B2BでもB2Cでも、顧客や顧客企業が何を付加価値と感じるか
 捉え方を的確に把握し納得してもらえるプレミアムを設定することが重要

・BCGが行った調査では、消費者への値上げの説明として「人件費」よりも
 「原材料」の高騰が理由として受け入れられやすい
ことが分かった。
 日本のように値上げへの抵抗感が強い市場では、新商品・サービスを
 出すタイミングで「このような努力をして付加価値をこのように高めた
 ので、価格も上げる」
のように顧客にとっての価値と組み合わせて
 説明するなど、納得性を高める工夫が求められる
・裏切られた、フェアな企業ではないと顧客が感じた瞬間に
 顧客の心は離れ、ひどい場合は不買運動など悪影響につながる

・B2Cのプライシング手法
・プライシング戦略の基本はPOSデータや消費者調査などを利用した
 科学的分析が重要
・商品の中には顧客の価格認識(「あの店は高い/安い」など)を
 形作っているKVI(Key Value Items)と、その他の商品がある
・KVIはコンビニでのおにぎりやコーヒーや家電量販店でのテレビなど、
 購入頻度が高い商品や旗艦商品
・消費者にとってのKVIを分析により特定し、
 KVIについては競合も見ながら集中的に勝負をかける一方、
 KVI以外の商品では懸命に利益を確保していくメリハリのある戦略が必要
・顧客の実態として「高くなったと感じるが買ってもよい価格」
 「値段が高すぎて買うのをやめる」などの指標から
 立体的に消費者のWTPを算出する
・WTPには多くの場合、いわゆる「崖」が存在し、
 一定の値段を越えるとWTPが急激に落ちる現象がある

・科学的なマークダウン(セール・値引き)
・BCGの経験では、固定ルールや人の判断だけで値引きしている場合と、
 過去データを見ながらAIがタイミングや適切な値引き率を予測し、
 それを現場の感覚知と掛け合わせた場合とで比較すると、
 後者の方が収益性が15%以上高かった

・価格変更の応用編として、枠組みを変える
 リフレーミングの戦略も効果が期待できる
・ペットボトルの水を販売する場合、サブスクリプション方式で
 月額飲み放題のサービスにすれば、1本いくらという既存の競争から
 抜け出せるなど、価値の提供方法も含めてクリエイティブに検討が可能

・B2Bのプライシングの実践
・B2Bのプライシングで主に考えるのは、
 どのように付加価値を反映させた価格にできるか、
 また、どのように市場価格にプレミアムを乗せられるかという2つ

・自社製品の「価値」を把握する
・顧客製品のコスト構造に占める自社製品の割合などから、
 自社の提供している価値を推定する
・特に、代替品が無いほどの競争力の高い製品であれば、
 有利な値決め構造に持ち込むことができる

・コストの見える化と脱平均化
・競争環境で市場価格に上乗せするために欠かせないのは、
 自社製品のコストや収益を製品ごとに「見える化」すること
・製品群や事業部門単位ごとに利益率を捉えることができれば、
 次のステップは脱平均化
・例えば、ある事業部門の利益率が5%でも、
 細かく見ると利益率10%の製品があったり
 損失が出ている製品が混在していることも多い
・そのような平均からの逸脱に着目するのが脱平均化で
 「プライシングクラウド」というマップ作成が有効
・横軸に数量、縦軸に価格をプロットし、
 本来は数量が大きいほど価格は下がり右肩下がりの分布になるはずだが、
 実際には星雲状になることが多い
・顧客に泣きつかれて値下げをしたり、数量に応じた規律ある
 ディスカウントが徹底されないなどで価格にばらつきが生じることが原因
・価格のバラつきを本来あるべき姿に戻せば、確実に収益改善につながる

・日本企業への提言
・いま、マクロ環境の変曲点を迎え、現状の値付けでは限界があることを
 多くの人々が認識している
・これまで適正な利益を取りそびれていた企業にとって、
 絶好の機会が訪れていると考えることもできる
・良いものを作って、それに対して適切なリターンを取れるように
 値付けし、そのリターンを原資に再投資して企業が競争力を高めていく
 それによって、給与や物価が適切に上がり
 経済全体が上手く回る方向へと移行させる
・そのためにも企業はプライシング筋力を鍛え直して、
 顧客起点で価値に見合った利益を実現していくことが求められる

今回のテーマは
プライシングでした。

本書で書かれていた、
「このような努力をして付加価値を
 このように高めたので、価格も上げる」
という事例で思い浮かんだのが
USJのチケット代の値付け戦略でした。

ハリーポッターやスーパーマリオなど
様々なコンテンツやアトラクションを
パーク内に追加することで、
唯一無二の付加価値を高め、結果として
チケット代も継続的に上げていく

以前に森岡毅さんの本や講演でも、
日本のテーマパークのチケット代は
海外(主にアメリカ)と比べると安い
との話も出ていましたので、
どのくらいまでの価格なら日本でも
値上げ余地があるかという計算は
当然されていたのでしょう。

また、本書の中での
プライシングクラウドについては、
こちらの図が分かりやすかったので
合わせて紹介しておきます。

横軸に数量、縦軸に価格をプロットしています。
本来はスケールメリットが効き、数量が上がるほどに価格が下がる右肩下がりになるはず…
ですが、数量が少ないのに価格が低いなどの「異常値」に注目して価格を見直すきっかけに。

話は変わりますが、
私自身がプライシング戦略に興味を
持ったのは、2つのきっかけがあり、

1つ目は、マッキンゼーの「価格優位戦略」
という本を読み、
価格を1%改善した場合、
平均23.2%も営業利益が改善する
という調査結果から、
値上げの威力を知ったこと。

そして2つ目は、稲盛和夫さんの
「値決めは経営」という言葉でした。

経営の死命を制するのは値決めです。値決めにあたっては、利幅を少なくして大量に売るのか、それとも少量であっても利幅を多く取るのか、その価格設定は無段階でいくらでもあると言えます。

どれほどの利幅を取ったときに、どれだけの量が売れるのか、またどれだけの利益が出るのかということを予測するのは非常に難しいことですが、自分の製品の価値を正確に認識した上で、量と利幅との積が極大値になる一点を求めることです。その点はまた、お客様にとっても京セラにとっても、共にハッピーである値でなければなりません。

この一点を求めて値決めは熟慮を重ねて行われなければならないのです。

今後、データ分析のサービスを
パッケージ化したりコンサルして、
個人で仕事を頂くならば
値決めは避けられないテーマです。

ともすれば、自分の時給分だけで
安めの値決めをしてしまうと、
付加価値を生むデータ分析や
インサイトの発見だけではなく、
多くの時間を要する割には
人による差(付加価値)がつきにくい
データの前処理業務から任されてしまう。
など、値決めによって受ける業務を
コントロールできると感じます。

顧客の付加価値を起点とする。
ということにフォーカスしつつ、
究極的な値決めとは、
ブランディング化して
唯一無二の存在になる
ことなのかな。
と感じた、今日この頃でした。

ということで今日はこの辺で!
それではまた―!😉✨

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