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シン映画日記『世界の終わりから』

新宿バルト9にて伊東蒼主演、紀里谷和明監督最新作『世界の終わりから』を見てきた。

ポスター/フライヤーに主演の伊東蒼のアップで監督に『CASSHERN』や『GOEMON』を手掛けた紀里谷和明監督と、正直見る前はどこに期待をしたらいいのか分からなかった紀里谷和明監督・脚本・原作・製作総指揮・編集の最新作『世界の終わりから』。
正直、予告編の段階では地雷臭さえした。


ところが、見てビックリ、
孤独な女子高生の生活と異世界を巧みに掛け合わせたマルチバースな展開で、現在進行のドラマを軸に過酷、未来、夢の世界を融合した異色の近未来SFに仕上がっている!

両親を交通事故で亡くした女子高生のハナは高校でも自分の居場所がない孤独な少女だが、ある日、ハナは政府関連組織の江崎らにある場所に連れて行かれ、そこで世界に起こりつつある衝撃の未来と、それに対するあるミッションを与えられる。

『CASSHERN』や『GOEMON』でも独自の異世界を描いていた紀里谷和明監督だが、ここに来て女子高生の普段の生活と夢の異世界を行き来する、いわゆるマルチバースものでピタリとハマった。元々異世界を描くのが得意な紀里谷和明監督だけにディフォルメした戦国時代は派手な夢の世界として認識出来るから本作は楽しめる。

まるで黒澤明監督の『七人の侍』や『隠し砦の三悪人』、『用心棒』を思わせる世界観にセーラ服を来た女子高生が逃げ惑い、そのお供にジブリのアニメ映画に出てきそうな5歳前後の女の子と『スター・ウォーズ』シリーズのチューバッカみたいな巨体の謎生物と一緒に野武士や侍とバトルを繰り広げる。

それらはあくまでも主人公の夢の世界で、要はその夢を見ることで近くに起きるかもしれない世界の危機を書き換え、回避しようとする話で、一見出鱈目そうでいて、軸を主人公ハナの女子高生の私生活に置くことで、辛うじて映画としての整合性は取れている。その私生活というのがバイトでギリギリの生活を強いれながら、学校では同級生にある秘密を握られていじめられるというわりと辛いもので、単に世界の終わりというだけでなくて、ハナの辛い現実を変えようとする願望がハナの行動には秘められている。

また、ハナのある過去の辛い記憶もハナが見る夢や政府関連組織に対抗する敵組織の動きにも関連し、そこでも整合性がとれている。

戦国時代のような夢の世界は基本的にはモノクロで、炎や血がパートカラーというスタイリッシュな映像。夢の世界に行くトリガーは基本は眠りに落ちてからだが、そうでないシーンもあり若干曖昧。現実世界のシーンに内閣と繋がる政府関連組織や夏木マリが演じる謎老婆がいて、そこがまた荒唐無稽ではあるが映画らしいダイナミズムがある。

紀里谷和明監督のスタイリッシュな映像と世界観がマルチバースと相性抜群で、邦画発の異色の近未来SFを楽しめる。

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