持田瀞 Mochida Toro

ショートショートを描いています。時々、長編。受賞歴:『旅する日本語2018』企業賞、『…

持田瀞 Mochida Toro

ショートショートを描いています。時々、長編。受賞歴:『旅する日本語2018』企業賞、『渋谷ショートショートコンテストsupported by SHIBUYA TSUTAYA』優秀賞。

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    長編連載小説『pxxxxxx』のハコ。 現在、第三話まで公開。気長にお楽しみくださいませ。 近未来SFです。 人間が三大欲求およびそれに付随する器官を失う代わりに、精霊の力を手に入れ、新たな生物『ファントム』となった世界。

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    SF小説『サイバー・C・プロジェクト』のハコ。

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夢の中で今日も、ごはん │ ショートショート

目が覚めると、野原の真ん中にいた。 屋外の筈なのに、何の音もしない。 ぐるりと辺りを見回すと、店が一軒。彼は迷わず歩き出した。 ここは、彼の夢の中なのだ。 彼は、…

ただの日記

最近、やりたいことについて考える。 やりたいことは無い、 けど、やりたくないことはいっぱいある。 やりたくないことを、毎日減らしていきたいなぁ。 例えば、無駄遣い…

好きなこと
料理
子供と出かける
肌髪メンテ

やりたくないこと
掃除
洗濯
片付け

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今日買ったもの
カラーシャンプー
トリートメント

子供の靴下

野菜と豆腐

うなぎ

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気がする屋 day.7|連載小説

遠くで、娘たちが駆け回っているのが見える。 年の瀬だなぁ。 公園の人はまばら。 普段ここは人気があるので、たまにびっくりするほど大勢の親子で溢れている。 そこに小…

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気がする屋 day.6|連載小説

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気がする屋 day.5|連載小説

喉の痛みで目が覚めて、ああ、とうとうアデノウィルスが喉に来てしまったと、ノブコは朝から暗澹とする。 今日は土曜日だった。 仕事が休みなのは良いが、声を出すことが…

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夫と、仲直りをした。

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月曜日。 朝ごはんを食べた。 ヨーグルトとパン。 相変わらずの結膜炎だから、メイクをほどほどにして、眼鏡をかける。 髪は買ったばかりのリボンで結く。 うん、なかなか…

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生活において、『可愛い』はすごく重要なキーだと、ノブコは次女が体操教室でトランポリンを楽しげに跳ねるのを見ながら考える。 仕事に夢中になっていると、『可愛い』は…

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気がする屋 day.1|連載小説

1.仕事のSlackを開かないこと。 2.ご飯は3食、自炊したものを食べること。 この2つについて、まずはこの土日やることにした。 と、ゆうのも仕事が忙しすぎるのである。 …

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朝子さん|ショートショート

耳裏にひと吹き、左手首にひと吹き。 ついでに左手首は、そのまま腰元をスススと擦って。 ふわ、と香るムスク。こっそりと隠れるように舞うのはハチミツ。 ほんの少し目を…

ひさしぶりにちょっと書いた。でも終わりまでは書けなかった。書けると良いなと思う。リハビリ。別に何にも悪くなってないから、違うか。再発。これで良いか。

君の沼|短編小説

生まれてこの方、あんなに美しいものをみたのはあれが初めてだった。 月の明かりが反射して、きら、きら、と光る。 ねえ、知ってる? 本当に美しいものを見たとき、人は泣…

ALL!!|ショートショート

『フラペチーノ行かんか?』 『行くでござる〜』 連休中日。響子からのお誘いメッセージに奏子は即レスした。 外は暑っつい暑っつい猛暑とやらで、ここは本当に日本?温帯…

見知らぬ街(ある日の日記)

久しぶりに見知らぬ街に来た。 どんな街でも図書館と郵便局は在って、それらを見かけると安心して、公共機関って凄いななどと思った。郵便局はもう今は公共機関ではないけ…

夢の中で今日も、ごはん │ ショートショート

夢の中で今日も、ごはん │ ショートショート

目が覚めると、野原の真ん中にいた。
屋外の筈なのに、何の音もしない。
ぐるりと辺りを見回すと、店が一軒。彼は迷わず歩き出した。
ここは、彼の夢の中なのだ。

彼は、いつも同じ夢を見る。
夢の中で、彼はまず野原にやってくる。
そして、この店に入るのだ。
暖簾の出た戸口の横の表札には、大きくこう書かれている。
『定食屋ササミ』。
この定食屋は、現実も夢も含めて、彼の唯一の行きつけの店であった。

「い

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ただの日記

最近、やりたいことについて考える。

やりたいことは無い、
けど、やりたくないことはいっぱいある。

やりたくないことを、毎日減らしていきたいなぁ。
例えば、無駄遣いとか。
コンビニで無駄にお菓子買ったり、読みたく無いけどダラダラ電子漫画買ったり、タクシーバンバン乗ったり、カラオケ行きたく無いのに暇つぶしに行ったり。

逆にしたい無駄遣いもある。
週に一回しかメイクしないけど、気になるメイクグッズ

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好きなこと
料理
子供と出かける
肌髪メンテ

やりたくないこと
掃除
洗濯
片付け

今日買ったもの
カラーシャンプー
トリートメント

子供の靴下

野菜と豆腐

うなぎ

気がする屋 day.7|連載小説

気がする屋 day.7|連載小説

遠くで、娘たちが駆け回っているのが見える。

年の瀬だなぁ。

公園の人はまばら。
普段ここは人気があるので、たまにびっくりするほど大勢の親子で溢れている。
そこに小学生グループなど来たら、小さい子連れは退散、退散。
でも今日は、年末だからか、スカスカ。
可愛らしい雲梯も、広場も、思う存分娘二人は堪能していた。
ついでに同じ年くらいの女の子と仲良くなったようで三人で遊んでいる。

こうゆうの、とて

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気がする屋 day.6|連載小説

気がする屋 day.6|連載小説

ああ、なんで美味しいんだろう。

ノブコは思わずほう、と溜息をはいた。

今日は、仕事終わりにタイ料理屋に来ていた。
なお、1人で、である。

ノブコは自分から誰かをご飯に誘えない。
親しい友人にすらそうで、だから、同僚なんてもってのほか。
1人で食べるのが好きだから、というよりも、誰も誘うことが出来ないから1人で食べているのだった。

それでも、ノブコはとっても幸せだった。
周りはカップルや仕事

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気がする屋 day.5|連載小説

気がする屋 day.5|連載小説

喉の痛みで目が覚めて、ああ、とうとうアデノウィルスが喉に来てしまったと、ノブコは朝から暗澹とする。

今日は土曜日だった。
仕事が休みなのは良いが、声を出すことが出来ないほどに痛い。

子供とも夫とも、話しかけられはしてもこちらからはにっこりと返すことのみにする。

「喉が痛い 食材」でググってみる。
抗炎症作用や殺菌作用があるのは、大根、ネギ、ショウガなど。レンコンも良いらしい。
あとはうどんな

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気がする屋 day.3|連載小説

気がする屋 day.3|連載小説

月曜日。

朝ごはんを食べた。
ヨーグルトとパン。
相変わらずの結膜炎だから、メイクをほどほどにして、眼鏡をかける。
髪は買ったばかりのリボンで結く。
うん、なかなか良い感じ。

さて、生活を大事にすると決めてから、初めての月曜日。
仕事を17:30に切り上げると心に決めたものの、心配だ。
まずは今日のスケジュールチェック。
今日中にやらなくて良いものは明日に回し、今日中のものは夕方までに終えるよ

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気がする屋 day.2|連載小説

気がする屋 day.2|連載小説

生活において、『可愛い』はすごく重要なキーだと、ノブコは次女が体操教室でトランポリンを楽しげに跳ねるのを見ながら考える。

仕事に夢中になっていると、『可愛い』は二の次だ。
リモート勤務の日はノーメイク眼鏡だし、なんなら寝癖もついている。
机の上は埃まみれ。いつ届いたか覚えのない手紙が散乱し(そのうちのいつくかには、期日までに提出が必要な書類が含まれている)、買ったまま未だ手付かずの書籍が並ぶ。

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気がする屋 day.1|連載小説

気がする屋 day.1|連載小説

1.仕事のSlackを開かないこと。
2.ご飯は3食、自炊したものを食べること。

この2つについて、まずはこの土日やることにした。

と、ゆうのも仕事が忙しすぎるのである。
このままでは家庭が崩壊する、という危機感を、40年余り生きてきてノブコは初めて感じた。

今週は、夫がずっと体調が悪かった。
先週は、長女の調子が悪く、先々週は次女。
そして今日、ついにノブコにもそれはやってきた。目やにと涙

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朝子さん|ショートショート

朝子さん|ショートショート

耳裏にひと吹き、左手首にひと吹き。
ついでに左手首は、そのまま腰元をスススと擦って。
ふわ、と香るムスク。こっそりと隠れるように舞うのはハチミツ。
ほんの少し目をつぶって、ぱちりと開ける。
さあ、今日も仕事をしなくては。

山田朝子は、会社員である。
社会人歴は12年、そのうち転職は3回。今の会社は勤めて1年と半年だ。
リモートワークがこれほどまでに浸透した昨今、朝子も例に漏れずと、自宅で仕事をし

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ひさしぶりにちょっと書いた。でも終わりまでは書けなかった。書けると良いなと思う。リハビリ。別に何にも悪くなってないから、違うか。再発。これで良いか。

君の沼|短編小説

君の沼|短編小説

生まれてこの方、あんなに美しいものをみたのはあれが初めてだった。
月の明かりが反射して、きら、きら、と光る。
ねえ、知ってる?
本当に美しいものを見たとき、人は泣くんだ。

一 蓮の章

僕の住む村のすぐ後ろには大きな沼があって、僕らは農作物を育てて暮らしていた。沼の水は大地を伝って村の田畑を潤し豊かにする。僕らの村では、沼には水神様が住んでいると古くから言い伝えられていた。

「おい、なにボサッ

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ALL!!|ショートショート

ALL!!|ショートショート

『フラペチーノ行かんか?』
『行くでござる〜』
連休中日。響子からのお誘いメッセージに奏子は即レスした。
外は暑っつい暑っつい猛暑とやらで、ここは本当に日本?温帯気候?本当は熱帯地域なんじゃない?なんなら地球じゃないんじゃない?なんて思うほどに、暑かった。絶好のフラペチーノ日和である。
去年買ったノースリーブの長ワンピ1枚を着て、ペチペチと日焼け止めを顔から身体に塗りたくっていると、ピコン、とスマ

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見知らぬ街(ある日の日記)

見知らぬ街(ある日の日記)

久しぶりに見知らぬ街に来た。
どんな街でも図書館と郵便局は在って、それらを見かけると安心して、公共機関って凄いななどと思った。郵便局はもう今は公共機関ではないけれど。
それで私の見知らぬ街での目的地のそばが図書館だったので、図書館に暫く滞在した。

驚いたのは、私が高校生の頃、散々に読み漁った作家の本が一冊もなかったこと。
最初は書架の所々に挟まる見出し?にその作家の名前がなくて『あの頃は凄く人気

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