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斗花
2024年3月29日 01:29
卒業式が終わって、陽と家に向かっていたら、陽の妹の瑠璃ちゃんが陽の家の前に立っていた。相変わらず、セーラー服がコスプレみたいで全く似合っていない。「瑠璃が自分の足で道路に立ってるの久々に見た」陽は隣で変なことを言っている。「毎日、通学してるだろ」「あいつ、よく分からない男に車で送迎させてるから」相変わらず陽の家族は全員モテすぎて価値観が狂ってしまっている。いまも陽はブレザ
2023年1月11日 09:53
皆川と義旭が付き合ったことでその日の野球部の部室は話題持ちきりだった。「あぁ…。とうとう皆川の恋が叶ってしまった…。」「俺たちの明日香ちゃん…。」「まぁ、あの子変人だから伊達と付き合っても別にショックはないけどな」皆川は当時から高みの見物されるタイプの美女で、明日香ちゃーん、とか言って大騒ぎはするものの、彼女にする勇気のあるやつは、いなかった。皆川の朝や帰り
2022年12月15日 21:23
スズは相変わらずアホさを露呈しながら俺の質問に首を傾げている。「竹沢せんぱいぃー?」「こないだの決定戦で三位だった先輩。さすがにお前も知ってるだろ?」「知ってるけどさー。そもそも調理部の先輩じゃなかった?私よりも大澤のが仲良しでしょ?」「仲良くないから!敵だから!」えぇー?とスズは再びアホさを爆発させながら面倒臭そうに頬杖をつく。「竹沢先輩は絶対に本宮さん狙い
2022年12月2日 11:05
疾風は私のことを見てさぁー、と小さく首を傾けた。「義旭が関川のこと好きなんて聞いたこともないけど。」「でもめっちゃ仲イイじゃん!」「いやー…、まぁ、義旭にしては話してるかな。」疾風は私の質問攻めにうんざり半分恐れ半分といった様子だ。「つーか、皆川的に新沢はいいわけ?生徒会一緒だけど。」「あの子は他校に彼氏いる。」義旭くん調査メモ女性関係編、というページ
2022年9月21日 23:38
私の世界は狭い。そんなの昔から知ってたし、今さらそれを批判するほど労力も不満もないのだけれど、ただや、私の世界がもう少し広ければ大希の気持ちを理解できたかもしれない。あの夜、私たちは確かに違う世界を見ていた。「初音、」「…は?大希?あんた、こんな所でなにして、」「一緒にバッティングセンターに行こう。」大希の帽子は相変わらず深くてマスクをつけていた。
2022年9月12日 10:40
結衣は今日も屋上で奴がサッカーしているのをボーッと眺めている。「…結衣、お前なかなかのストーカー体質だな。」「星司先輩もなかなかのストーカーじゃないですか。どうしていつもいつもここにいるんです?私に会いたいからでしょ?」なんという自信家。しかも結衣が言うと、冗談には聞こえないから結果的にただの嫌味である。この高飛車な性格と極端なまでのかわいげのなさはなんなの
2022年9月3日 06:45
俺が中三の頃。学年が上がってすぐに担任に呼び出されて、父親に殴られた。迷惑かけるなって、どんだけ問題起こすんだって、すげー怒鳴られて。兄貴は引き止めてくれたんだけど俺は荷物をまとめて家から飛び出した。ギンの家に泊めてもらおうと思ったらそう言えばまだ塾だった。和泉先輩なら泊めてくれるかなって思ったら帰ってきてなかった。当時付き合ってた彼女に連絡してもその時に限
2022年6月25日 23:15
家に帰りたくない。私は空を見上げながら小さくため息をついた。息は白く吐き出されて私は楽しくなってもう一度、吐き出してみる。家に帰りたくない。その想いが再び白い息となって零れる。白い息を見るとよかった、私も生きてるんだと少し安心できた。「本当に私達の子なのかしら。」昨晩の、お父さんとお母さんの声を潜めた会話が蘇る。「なにバカなこと言ってるんだ。お前、
2022年6月15日 21:53
屋上で空を眺めていたらなにやらガチャガチャと扉の開く音がした。なにごとか、と慌ててそちらを見るとそこには一つ下の後輩の結衣が立っていた。結衣とは部活が同じででも、別に仲良くはなくてただ、その整った外見は俺達の学年からも評判が良かった。「…よぉ。」最初に出た言葉はそれだった。どう見ても彼女は切羽詰まっていたし、チャームポイントみたいな黒くて長い髪は乱
2022年5月25日 12:04
美波は校庭を見ながらため息をついている。「どーした。」「…べつに。」その視線の先には案の定、野上がいた。俺がニヤリと美波を見るとバシバシ腕を叩かれる。「なによーっ!!」「いってぇなー。なんも言ってねぇだろ。」「目が言ってるもんっ」こいつのこういうとこ、確かに可愛いなぁとは思う。女には沢山会ってきたがあんまり見たことないタイプ。「好き??」
2022年5月24日 20:10
初めて見たとき??可愛いなー、って思ったよ。割とタイプだったし。その後、一緒にいる時間が長くなって俺だってまだ14とかだしさ。そりゃあ、意識するって。「梶先輩っ!!こんにちはっ!!」「あ、蘭ちゃん。」「今日も秀と遊ぶんですかー??」学校帰り、一緒になることも少なくなかった。というか俺は当時、蘭ちゃんの兄の秀ちゃんと遊んでたからなんなら米倉家まで一緒だった。
2022年5月20日 13:24
初めて出会ったのは高校二年の時。私は芸術クラスで大希は芸能クラス。なんか、そういう高校だった。当時から大希はすごく人気で。校門を通るのが奴のせいですごい大変で。私のクラスの子達はみんなかなり迷惑していた。けど、私はあのキャーキャーって声が割と好きで。確かに高音で聞き苦しい時もあるけど温かさの残るような、黄色い歓声っていうか、オレンジみたいな、あの
2022年4月17日 10:01
こうじゃない。偶然、街で会った男に抱かれながら心の中でそう呟いた。先輩の手はもっと、冷たくて。先輩の目はもっと暗いの。「どーだった??」情事後、笑いながら私の髪を触る男。「…なにが??」「なんかないの??後悔とか、満足とか。」別にない。やっぱり先輩は帰ってこないんだなって、ただ、それだけ。「…気持ち良かったって言えば良いんですか??
2022年4月16日 21:49
弱いよりは強い方が良いけど、強すぎるよりは弱い方が良い。目の前で倒れた男を見た時に素直にそう思った。何も手に入らないよりは何か掴める方が良いけど何もかも壊すよりは何も持てない方がマシだ。「ひかる、もう、良いって。」掠れた声で誰かが俺を止める。誰かの手が俺の腕を掴む。恐る恐る、掴む。「離せよ。」「もう…、やめろよ…。意識、飛んでるじゃん