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【読書ノート】59「勇気ある女性たち: 性暴力サバイバーの回復する力」デニ・ムクウェゲ

原題は「女性の力:ある医師の希望と癒しの旅」。著者はコンゴ人医師でノーベル平和賞受賞者。本著を読み進めることで、コンゴ東部で恒常的に起きている性暴力と女性に対するあらゆる暴力の凄惨さを良く理解出来る。著者は紛争下において性暴力は必ず起きるためそのためのケアは必ず必要だという。そしてナチのホロコースト下での性暴力、また大戦中の日本の慰安婦問題にも言及している。性暴力を起こさないために何をするべきかの著者の提言も最後に述べられている。悲惨な内容も含まれているが、現実を知るために多くの人が読むべき一冊である。

[目次]
はじめに
1 母の勇気
2 女性の健康危機
3 危機と回復する力
4 痛みと力
5 元兵士の言葉から
6 声を上げる
7 正義を求める闘い
8 認識と記憶
9 男性とマスキュリニティ
10 リーダーシップ
おわりに


以下、気になった個所

私は女性は自分のために成功を求めないことを、自分の経験上、常々感じている。その成功を惜しまずに夫や子供たちコミュニティと分かち合うのだ。そのため女性は、意思決定の際に、個人よりも集団を考慮しようとする。男性は、個人的な富、成功、野心といった自分自身の関心事に動かされる傾向がある。
女性は、男性に欠けているスキルを提供することも多い。新型コロナウイルス危機への対応で、当初、国民から最も高い評価を得た国の多くで、指導者が女性だったことは特質するべきだ。ドイツ、ニュージーランド、デンマーク、ノルウェーなどだ。

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・・・最新のデータによると調査対象となった193カ国のうち、女性の国家元首や政府首脳はおよそ20人しかいない。OECDによる2019年の調査では、主要な民主主義国に36カ国のうち政府のジェンダーバリテを達成しているのは、カナダ、フランス、スウェーデン、スロベニアの4カ国だけだった。36カ国の平均では、閣僚は男性3人に対し女性は1人だった。

世界経済フォーラムが発表する「グローバル・ジェンダ・ギャップ・レポート」は、経済的機会、教育、健康、政治といった4項目で、153カ国の男女格差を測定している。世界的に最も大きな差が見られるのは政治的エンパワーメントだ。
2020年のレポートによれば、世界の国会議員3万5127人のうち、女性が占める割合はわずか25%だった。過去12ヶ月で改善が見られたと指摘するが、このレベルで進歩が持続したとしても、政治におけるジェンダーギャップを解消するには94.5年かかるとされる。

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政治に女性が参加すればするほど、歴史的なジェンダ不均衡の解消が進む。女性が他の女性たちに後に続く道を開けば開くほど、政治を安全で敬意を重んじる場所にすることができる。なぜなら国会でも地方議会でも、いまだに排外主義や性的虐待が蔓延しているからだ。

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女性にとってより安全な世界を実現するために、あなたもまた、さまざまな形で役割を果たすことができる。他者をサポートし、声を上げ、団体に参加し支援して欲しい。選挙で選ばれた議員や警察に圧力をかけて欲しい。自分の知識を生かして教育を提供して欲しい。
私たちはみな、子供や友人、家族、同僚やチームメンバーなど、まわりの人々にとっての教育者だ。性差別を訴える。利己的な行為を非難し、報告する。被害者非難に抵抗する。女児と男児に均等に配分されるように促す。

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(2024年2月27日)


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