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子との生活

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幸福の箱

幸福の箱

「サンタクロースとの撮影会」は、結婚式のお色直しで夫婦が控え室に使うらしいホテルの一室で行われた。8畳ほどに煌びやかなクリスマスツリーとプレゼント、美しいアンティーク風の布張りのソファが並べられ、その一つにお決まりのサンタクロース服を着た外国人が座る。
彼が「ほっほっほ」と笑い声をあげる。そういえばサンタクロースはそう笑うんだった。

サンタクロースの隣に腰掛ける。
「はーい、こっちだよー!」

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子は今日も走り回る

子は今日も走り回る

寝かしつけでは、1時間くらい絵本の読み聞かせをする。毎日続けると喉がガラガラになるから、正直つらい時もある。

それで先延ばししようとして、あの手この手で子どもを釣る。すると突然、子どもが「寝ない」と言って絵本を抱えて寝る部屋から出て行ってしまった。

「もしかして怒ってる?」

尋ねたけれど返事はない。

「ごめんね。絵本を読もう。持っておいで」

声をかけると、絵本を何冊か増やして戻ってきた。

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子がしがみつくための体

子がしがみつくための体

トロトロに溶けて霧散したい。ひどく疲れた夜に、そういう思いに駆られる。

一方、子どもが2歳になってから、肉体として存在する必要性を強く感じる。子どもが、「ママー!」と抱きついてくる時。思想、思い、能力。そんなものに意味がなくなり、ただひっしとしがみつかれるための体がそこにある。

子どもと一緒にいると、これまで人とコミュニケーションを取るために大切にしてきたあれこれが消えてしまうのだ。「話を相手

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星を見つけた(子:1歳10か月)

星を見つけた(子:1歳10か月)

夫と私、子の3人で日が暮れる前に外出して、レストランで夕食を食べた。すっかり暗くなった街が窓から見える。
一度来たことがあるレストランだけど、子は落ち着かない様子。もしかすると、外から太陽の光が入らない分、蛍光灯の明るさを強く感じているのかもしれない。食事が来てもソワソワして、いつもなら一瞬でなくなるカレーライスが、いつまでも残っていた。

その帰り道、私はふと、「子が産まれてから外で夕食をとるの

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勤務する世界線と私

勤務する世界線と私

7月の最終週は、子どもが体調を崩しててんやわんやしていた。

幸い(?)コロナではなかったものの、仕事を抱えながら看病を続けるのは思ったよりもつらい。何より、子どもがしんどそうなのを見るのは堪える。

仕事が忙しい時は病児保育に預けるのも選択肢の一つだが、これも悩みどころで、普段通っていない保育士の方々と体調不良の時に子どもが打ち解けられず、泣きまくって悪化するのではなかろうか、と二の足を踏んでし

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ベビーカー de 見えてくる視点

ベビーカー de 見えてくる視点

ベビーカーを使っていると、一人ですいすいと行けたはずの道に戸惑うことが増えました。横断歩道では段差に躓き、歩道橋はあきらめて遠回り。電車とホームの間にすき間が開いている場合は、子を抱っこ紐で抱き、ベビーカーを持ち上げることも。

今回紹介した「ホームと列車のすき間をせまくしています」という乗降口は、「東京2020オリンピック・パラリンピック」の開催がきっかけでできたようです。車いすに乗った人が一人

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母ha時々、トド

母ha時々、トド

1歳1か月になる子ども。成長著しく、最近は歩くのも上手になってきて、起きてから眠るまで、ずっと部屋を駆け回っている。早朝に目を覚ますことも少なくなく、私と夫は打ち上げられたトドのように部屋の真ん中で横になりながら、子を見守っている。「一緒に遊んであげれば」と思う人も、いるかもしれない。遊ぶ時だってある。けれど、大人も眠気にあらがうのは難しいのだ。

「もう少ししたら、どこかへ子を放ちに行こう」。ト

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ベビーのスイミングはまるでイルカの様子

ベビーのスイミングはまるでイルカの様子

先日、子を連れてベビースイミングへ行った。

ベビースイミングというのは生後6か月程度から参加できるプール教室だ。我が家は1歳を過ぎての参加となった。

ベビースイミング用に2レーンほどが解放されるのかと思ったら、プール全体を貸し切っての教室だった。時間になると父や母に連れられたベビーたちが、わさわさと現れ、慣れている子は口角をニンッとあげたままザブンと、まるで水の中に飛び降りるように入水していく

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