襾漫 敏彦(アマントシヒコ)

美術作品を見に行って、そこで会った作家さんに、襾漫 敏彦のペンネームで、評論の形式の感…

襾漫 敏彦(アマントシヒコ)

美術作品を見に行って、そこで会った作家さんに、襾漫 敏彦のペンネームで、評論の形式の感想作って渡してます。その一部を紹介していきます。画廊を訪ねて、絵を直接みて、作家さん達と話をすると豊かな世界が広がります。自分の見方を一緒に見つけていきましょう。

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固定された記事

襾漫敏彦と美術評論についてーー付)画廊探訪 索引

 自己紹介の前に、【画廊探訪】の索引をあげておきます。   襾漫敏彦というのは、美術関連の文章を書く時のペンネームです。  美術評論家の鷹見明彦氏は、2011年に震…

【画廊探訪 No.172】わたしの中にあらわれるわたし――世田谷ピンポンズ絵画展『ポンチ!』に寄せて―― 

わたしの中にあらわれるわたし ――コクテイル書房企画『ポンチ!』世田谷ピンポンズ絵画に寄せて――  襾漫敏彦  むかし語りは「かの谷に、おのこありけり」という語…

表現再考:衣更

 中古、平安時代、宮中では、四月一日と十月一日を衣更の日としてきたそうです。 これは、旧暦のことですから、今年の旧暦、四月一日に当たるのは、5月8日です。ですから…

展示感想: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」Gallery Face to Face その2

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展示感想: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」その1

山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」に行って来ました。  山内さんの作品は、子供の頃に住んでいた家が取り壊しになるということで、最後の姿を見に行ったことから…

画廊に行くようになって気がついたこと その48

 デジタル技術による製作は、作者の肉体や具材の物質性の影響の残渣のようなものが残らないと説明してきました。  作者が、イメージを創造するのですが、それを物質に固…

ほんのしょうかい:水谷雅彦『共に在ること――会話と社交の倫理学』〈『思想の科学研究会 年報 やまびこ』より〉

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展示紹介: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」Gallery Face to Face 5.10Fri.〜5.19

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展示紹介:八木原由美個展 ーー猫と女ーー バーラストチャンス5月16日から31日

八木原由美さんが下北沢のバーラストチャンスで個展を開きます。 八木原由美個展ーー猫と女ーー 5月16日から31日(火曜は定休日) 18時から26時 作家在廊は16、20、…

表現再考:立夏 2024年は5月5日

 昨日は暦の上では、夏、立夏でした。火の気が始まります。    立夏の時期、本朝七十二候では、蛙始鳴(かわずはじめてなく)、蚯蚓出(みみずいづる)、竹笋生(たけの…

【画廊探訪 No.171】水面は、自然を受肉して、光を写す――風早小雪個展“Spirit of the forest”に寄せて――

水面は、自然を受肉して、光を写す ――風早小雪個展“Spirit of the forest”Gallery FACE to FACに寄せて―― 襾漫敏彦  樹々や陽光、自然は、森にたたずむ僕等の心…

マテ茶の日々、皐月四日

 五月になりました。YERBA MATE FD La Mejorから、SELECTAに変えてみました。 これはパラグアイで生産されたもののようです。  割と粉っぽい感じですが、僕の扱いが今ひ…

ほんのしょうかい:司修『戦争と美術』〈『思想の科学研究会 年報 やまびこ』より〉

司修『戦争と美術』(岩波新書) 『戦争と美術』この本は、画家の司修氏によって書かれ、ソ連崩壊後の1992年刊行された本である。三〇年たった今日、今こそ読み返す本のよ…

思想の科学研究会『思想の科学研究会 年報』について、ご意見をいただきたいです

 思想の科学研究会では、一年に一冊、『思想の科学研究会年報』(以下、『年報』で表記)を出しています。   第五号『やまびこ』がだせて、なんとなく落ち着いてきまし…

表現再考:八十八夜、旧暦三月二十三日、5月1日

 今日は5月1日ですが、八十八夜です。旧暦では、三月二十三日になります。これは、立春から数えるので、春の土用の最後の数日のタイミングになります。  ”夏も近づく八…

画廊に行くようになって気がついたこと その47

 3Dプリンターが、出現したとき、仏師の知り合いが、画家にとって、写真があらわれたときのようなインパクトが、彫刻の世界にあらわれるのだろうと言ってました。  木…

襾漫敏彦と美術評論についてーー付)画廊探訪 索引

襾漫敏彦と美術評論についてーー付)画廊探訪 索引

 自己紹介の前に、【画廊探訪】の索引をあげておきます。

  襾漫敏彦というのは、美術関連の文章を書く時のペンネームです。

 美術評論家の鷹見明彦氏は、2011年に震災の後、病で亡くなりました。
わたしは、彼ともうひとりの友人と1980年後半『砂洲』という同人を組みました。襾漫というのは、その頃、書こうとしていた詩の主人公の名前です。

鷹見さんは、画廊を廻り若い作家の話を聞きさまざま

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【画廊探訪 No.172】わたしの中にあらわれるわたし――世田谷ピンポンズ絵画展『ポンチ!』に寄せて―― 

【画廊探訪 No.172】わたしの中にあらわれるわたし――世田谷ピンポンズ絵画展『ポンチ!』に寄せて―― 

わたしの中にあらわれるわたし
――コクテイル書房企画『ポンチ!』世田谷ピンポンズ絵画に寄せて―― 

襾漫敏彦

 むかし語りは「かの谷に、おのこありけり」という語りからよくはじまる。それは、そこにヌッと“おのこ”がでてくることだと、ある本に書いてあった。“ある”は存在をあらわすというが、その場にあらわれるという使い方もある。

 世田谷ピンポンズは、フォークシンガーである。彼は数年前から、細めの

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表現再考:衣更

表現再考:衣更

 中古、平安時代、宮中では、四月一日と十月一日を衣更の日としてきたそうです。
これは、旧暦のことですから、今年の旧暦、四月一日に当たるのは、5月8日です。ですから、衣替えというのは、立夏に応じた朔の日にあたります。

 衣更といっても、当時は、四季の衣装など無かったので、下着で調節していたそうで、室町以降に帷子をもちいたようです。
 ちなみに着物で、裏地のあるものが「袷(アワセ)」、一枚の布ででき

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展示感想: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」Gallery Face to Face その2

展示感想: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」Gallery Face to Face その2

Gallery Face to Face 、山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」感想その2です。

 河野志保さんは、DMの写真では、油絵かと想像していたのですが、基本的には、アクリル、油彩やミクストメディアを利用したコラージュの作家さんでした。

 様々な写像を、取り込んでは、自分のイメージを固めるように、デジタル機器を利用して組み合わせては作品の原型を作成していきます。そこから出力したも

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展示感想: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」その1

展示感想: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」その1

山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」に行って来ました。

 山内さんの作品は、子供の頃に住んでいた家が取り壊しになるということで、最後の姿を見に行ったことからインスパイアされた風景のシリーズです。

 

山内さんは、これまで、社会風刺や過去の名作をもとにした作品を作ってきました。

 それは、主観が投げ出された世界の表現でもありました。それは、作者の精神が作り出す風景画ともいえるでしょう。

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画廊に行くようになって気がついたこと その48

画廊に行くようになって気がついたこと その48

 デジタル技術による製作は、作者の肉体や具材の物質性の影響の残渣のようなものが残らないと説明してきました。

 作者が、イメージを創造するのですが、それを物質に固着する作業は、別のものが行うということです。

 建築士が、これから建てる家の設計図をつくるのですが、それを作っていくのは、大工さん達です。その作業における身体性は、大工さん達によるものになります。

 街路や地下道のタイルをみていると、

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ほんのしょうかい:水谷雅彦『共に在ること――会話と社交の倫理学』〈『思想の科学研究会 年報 やまびこ』より〉

ほんのしょうかい:水谷雅彦『共に在ること――会話と社交の倫理学』〈『思想の科学研究会 年報 やまびこ』より〉

水谷雅彦『共に在ること――会話と社交の倫理学』(岩波書店、2022年)

 本書は、(著者も述べているように)「人間的コミュニケーションの基底と実相を倫理学という観点から論じようとするもの」といえるだろう。テーマとしては、(副題にもあるように)「会話と社交」である。そして、本書で最も強く打ち出されているのは、(本書のタイトルでもある)「共に在ること」=「共在」(さらには、「共在感覚」)であろう。以

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展示紹介: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」Gallery Face to Face 5.10Fri.〜5.19

展示紹介: 山内康嗣 河野志保 展「景色の手ざわり 」Gallery Face to Face 5.10Fri.〜5.19

Gallery Face to Face で、グループ展が開催されます。

山内さんは、幼少の頃暮らしていた家を中心にした風景ですが、河野さんは、どんなものになるか楽しみです。

山内康嗣 河野志保 展
景色の手ざわり

2024.5.10Fri.〜5.19Sun.
5月14日火曜日・15日水曜日休廊
12:00 ~20:00
(最終日5/19は19:00まで)

山内さんへの評論も添付します。

展示紹介:八木原由美個展 ーー猫と女ーー バーラストチャンス5月16日から31日

展示紹介:八木原由美個展 ーー猫と女ーー バーラストチャンス5月16日から31日

八木原由美さんが下北沢のバーラストチャンスで個展を開きます。

八木原由美個展ーー猫と女ーー
5月16日から31日(火曜は定休日) 18時から26時
作家在廊は16、20、25、31(20、31は12時より開店)

バーラストチャンス
所在地 :東京都世田谷区代沢4-41-8竹ビル1F
電話番号:03-3795-5292

イベントもいくつかあるようですので、バー・ラストチャンスのサイトを見てくだ

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表現再考:立夏 2024年は5月5日

表現再考:立夏 2024年は5月5日

 昨日は暦の上では、夏、立夏でした。火の気が始まります。
 
 立夏の時期、本朝七十二候では、蛙始鳴(かわずはじめてなく)、蚯蚓出(みみずいづる)、竹笋生(たけのこしょうず)で、凍っていた大地の水が緩み、生命が動き始めるというかたちで、縁側に座って土地を眺めている感じですね。

 宣明暦では、螻蟈鳴、蚯蚓出、王瓜生で、初候と末候が異なります。 螻蟈は、ケラ、オケラのことです。王瓜はカラスウリのこと

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【画廊探訪 No.171】水面は、自然を受肉して、光を写す――風早小雪個展“Spirit of the forest”に寄せて――

【画廊探訪 No.171】水面は、自然を受肉して、光を写す――風早小雪個展“Spirit of the forest”に寄せて――

水面は、自然を受肉して、光を写す
――風早小雪個展“Spirit of the forest”Gallery FACE to FACに寄せて――

襾漫敏彦

 樹々や陽光、自然は、森にたたずむ僕等の心のうちに何を伝え表すのだろうか。それは陰影であったり、光まばたく色の散乱だったり、水面に映る月かもしれない。それは、心の中で表されては現れながら、風や雲、水滴、そして細波によって静かに揺れ動く。

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マテ茶の日々、皐月四日

マテ茶の日々、皐月四日

 五月になりました。YERBA MATE FD La Mejorから、SELECTAに変えてみました。
これはパラグアイで生産されたもののようです。

 割と粉っぽい感じですが、僕の扱いが今ひとつなのかもしれません。

 グリーンマテ、ローストマテはわかるのですが、細かいところはやはりよくわかっていないようです。

 日本茶でみ、茎入り、茎なし、煎茶、ほうじ茶、粉茶、茎茶、抹茶、とさまざまにあり、

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ほんのしょうかい:司修『戦争と美術』〈『思想の科学研究会 年報 やまびこ』より〉

ほんのしょうかい:司修『戦争と美術』〈『思想の科学研究会 年報 やまびこ』より〉

司修『戦争と美術』(岩波新書)

『戦争と美術』この本は、画家の司修氏によって書かれ、ソ連崩壊後の1992年刊行された本である。三〇年たった今日、今こそ読み返す本のように思う。

『戦争と美術』、この本は、州之内徹との対話から生じた疑問から始まる。その躓きと逡巡から、そして出会いから「戦争画」について書くことが宿題となり、踏み出しては立ち止まること数年にして導き出された本である。

 松本竣介と藤

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思想の科学研究会『思想の科学研究会 年報』について、ご意見をいただきたいです

思想の科学研究会『思想の科学研究会 年報』について、ご意見をいただきたいです

 思想の科学研究会では、一年に一冊、『思想の科学研究会年報』(以下、『年報』で表記)を出しています。 
 第五号『やまびこ』がだせて、なんとなく落ち着いてきました。

『年報』では、【エッセイ・創作】のコーナーで、研究会員の関係の方から寄稿してもらった詩を掲載しています。

 いま、詩の投稿のページを作ろうと考えています。投稿の中から、10篇前後選んで掲載しようと企画しています。一般投稿は投稿料を

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表現再考:八十八夜、旧暦三月二十三日、5月1日

表現再考:八十八夜、旧暦三月二十三日、5月1日

 今日は5月1日ですが、八十八夜です。旧暦では、三月二十三日になります。これは、立春から数えるので、春の土用の最後の数日のタイミングになります。

 ”夏も近づく八十八夜”とありますが、先に書いたように、太陽暦に基づく二十四節気などからみればまだ春です。

 八十八夜は、彼岸とか、入梅、二百十日と共に雑節のひとつですが、「茶摘み」の歌謡のおかげで、まだ覚えられているものでしょう。

 今日、収穫し

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画廊に行くようになって気がついたこと その47

画廊に行くようになって気がついたこと その47

 3Dプリンターが、出現したとき、仏師の知り合いが、画家にとって、写真があらわれたときのようなインパクトが、彫刻の世界にあらわれるのだろうと言ってました。

 木彫りの場合、木材は、疎密があり木目としてあらわれます。木彫の作家は、そこをどのように作品の全体と調和させるかを考えながら作品をつくっています。そのあたりの工夫に、作家の技量や判断の個性がでてくるようです。
 普段、大工をされている方の作品

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