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雑文

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主に読書感想文を載せています。ネタバレしない内容を心がけてますが、気にする人は避けてください。批評ではなく、感想文です。
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#柴田元幸

岩波書店編集部編 『翻訳家の仕事』



★★★★☆

 2006年に岩波新書から出た本書は、雑誌『図書』に掲載されていた「だから翻訳はおもしろい」という連載をまとめたものです。名だたる翻訳家総勢37名が翻訳について語っています。

 主な翻訳者は亀山郁夫、柴田元幸、高見浩、野崎歓などなど。今年、全米図書賞翻訳部門を受賞した多和田葉子や、村上春樹を英訳しているアルフレッド・バーンバウムもいます。

 翻訳というのはどういう行為なのか?

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エドワード・ゴーリー 『音叉』

★★★★☆

 6月から始まったエドワード・ゴーリーの新作3点連続刊行のラストを飾る本作。原題は『The Tuning Fork』。訳者はもちろん柴田元幸。

 いつものことながら、あらゆる点で安定したクオリティが保たれています。これまでのゴーリー作品が好きなら、楽しめるでしょう。
 ただ、解説でも触れられているとおり、話の筋はいたってストレートです。条理に添わないのがゴーリー節ですが、わりかしふ

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エドワード・ゴーリー 『失敬な招喚』

★★★★☆

 せっかくなので、先々週に引き続き、先日出たばかりのエドワード・ゴーリーの新刊をご紹介します。訳者はもちろん柴田元幸。

 原題は『THE Disrespectful Summons』。直訳すると「失礼な呼び出し」といった意味です。悪魔がやって来る話なので、上記のようなタイトルになったのでしょう。的確です。

 ちなみに、裁判などで証人を呼ぶのは『召喚』、悪魔を呼び出すのは『招喚』の

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[展覧会] 特別展『エドワード・ゴーリーの優雅な秘密』

★★★★★

 八王子市夢美術館で開催されている特別展『エドワード・ゴーリーの優雅な秘密』に行ってきました。

 開催期間が7月13日から9月2日までなので、この週末までやっています。また来年の1月から新潟市の新津美術館でも開催されるそうです。

 展示のことは知っていたのですが、出不精なので、べつに行かなくてもいいかなと思っていました。けれども、終了期間が迫るにつれて、やっぱり原画を見ておきたい

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エドワード・ゴーリー 『ずぶぬれの木曜日』

★★★★☆

 柴田元幸が翻訳を手がけるエドワード・ゴーリーの絵本もこれで20冊目。2000年に1冊目が出版されてから18年が経ち、人気も認知度も年々増していることでしょう。

 線を重ねて描かれる独特のタッチとセンス、ビターで条理に落とし込まない作話が病みつきになります。
 僕もその昔『うろんな客』を本屋で見つけた瞬間、一発でやられてしまいました(It killed me.)。それからは翻訳され

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『MONKEY vol.15』

★★★★★

 柴田元幸が責任編集長を務める雑誌MONKEYの最新号です。6月発売なのでわりと時間が経ってしまいましたが、内容がすばらしかったので触れずにはいられません。

 毎号興味深い特集と高い質が保たれている雑誌ですが、今号は群を抜いていました。隅から隅まで読んでしまうほどに。

 特集は「アメリカ短篇小説の黄金時代」です。

 村上春樹訳ジョン・チーヴァー5作品(+エッセイ)と柴田元幸訳の

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J.D.サリンジャー 『ナイン・ストーリーズ』

★★★★☆

 2009年にヴィレッジブックスから出た新訳版(といっても、もう9年も前ですが)。訳者は柴田元幸。
 いまでは文庫化されています。僕は当時買ったハードカバーを引っぱりだしてきて再読しました。

 シンプルな装丁とやわらかいクリーム色が素敵です。サリンジャーは自著の装丁には滅法うるさかったようで、それは翻訳本でも変わりません。写真や絵を載せるのもだめだし、解説をつけるのもNGだそうです

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トム・ジョーンズ 『コールド・スナップ』

★★★★☆

 1995年に刊行されたトム・ジョーンズの2作目の短篇集。1作目の『拳闘士の休息』は岸本佐知子訳でしたが、こちらは小説家の舞城王太郎訳です。

 表紙にどどーんと翻訳者の名前が載っています(トム・ジョーンズの名前よりも大きい)。正直いって、そういうのってどうかと思います。村上春樹訳でもここまで露骨ではありません。「舞城王太郎」の名前で売りたいという下心が透けて見えます。わからなくはな

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柴田元幸 『代表質問 16のインタビュー』

★★★★☆

 翻訳者である柴田元幸が小説家を中心に13人の方にインタビューをしています。内容は主に小説や文学についてと、翻訳についてです。イベントでのトークショーの文字起こしと雑誌に掲載されたインタビューがほとんどです。
 僕はソフトカバーで読みましたが、文庫化もされています。

 主な作家は、スチュアート・ダイベック、村上春樹、バリー・ユアグロー、内田樹などです。翻訳家の岸本佐知子へのインタビ

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アーネスト・ヘミングウェイ 『こころ朗らなれ、誰もみな』

★★★★☆

 ヘミングウェイの短編を集めた選書です。19篇収録。柴田元幸翻訳叢書のシリーズです。

 全集を読んでしまったので、当然、読んだことのある作品しか収録されていませんでした。
 なんで読んだの? バカなの?という声が聞こえてきそうですが、訳者が変わるとどうなるのかな?という好奇心が湧いてきて手に取った次第です、はい。

 選んだ作品は概ねよいと思いますが、『キリマンジャロの雪』と『フラ

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