限界太郎

中堅大学で運営/教育業務に忙殺されているMD研究者です。新しく承認された医薬品について…

限界太郎

中堅大学で運営/教育業務に忙殺されているMD研究者です。新しく承認された医薬品について、分子生物学・薬理学に詳しい医師としての観点から記事を書いていこうと思います。臨床研究については一般的な医師程度の知識しかありません。投資は資産形成というよりは息抜きの趣味としてやっています。

最近の記事

WINREVAIR (sotaterept-csrk)が肺動脈性高血圧症の治療薬としてFDAに承認された

【肺動脈性肺高血圧症】  肺高血圧症は心臓から肺に向かう血管である肺動脈の圧力が高くなる病気です。原因により大きく5つに分類されており、肺動脈性肺高血圧症はその名の通り、肺動脈の異常により肺高血圧症が生じる病気です。  動脈(全身を走る動脈も肺動脈も)は内膜、中膜、外膜の3層構造をしています。内膜は1層の血管内皮細胞とそれを支持する組織で構成されています。中膜は血管の円周方向に走行する平滑筋と弾性線維が存在しています。外膜は血管を栄養する血管を含む結合組織で構成されています。

    • Duvyzat (givinostat)がデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬として承認された

      Duvyzat (givinostat)がデュシェンヌ型筋ジストロフィーの治療薬としてFDAに承認されました。 【デュシェンヌ型筋ジストロフィーとは】  デュシェンヌ型筋ジストロフィー(Duchhene muscular dystrophy: DMD)はジストロフィン遺伝子の異常により引き起こされる遺伝性疾患です。ジストロフィン遺伝子はX染色体上に存在するため、X連鎖性遺伝形式で遺伝し、通常はX染色体が一本しかない男性で発症する疾患です。女性の場合はもう一本正常なX染色体を

      • Tryvio (aprocitentan)が高血圧の治療薬として承認された

         Tryvio (aprocitentan)が他の薬物によっても血圧が十分に低下しない治療抵抗性高血圧に対する治療薬としてFDAに承認されました。 【高血圧】  高血圧とは安静時の血圧が一定の値を超えている状態です。世界で13億人近くが高血圧だと考えられています。高血圧が続くと血管および臓器が障害され、心筋梗塞や脳梗塞などの心血管疾患を発症する危険性が高まります。このような心血管疾患の発症を防ぐことが高血圧を治療する目的です。  高血圧の原因は明らかになっていません。遺伝的

        • Rezdiffra (resmetirom)がNASH (非アルコール性脂肪肝炎)の治療薬として承認された

          Rezdiffra (resmetirom)が肝硬変に進行する前のNASH (非アルコール性脂肪肝炎)に対する治療薬としてFDAに承認されました。 【NASH (非アルコール性脂肪肝炎)とは】  脂肪肝とは脂肪が肝臓の肝細胞に蓄積する疾患です。大きく、アルコールの過剰摂取によるものとそれ以外によるもの分けることができます。肥満や過食、糖尿病などの生活習慣(病)が原因で肝臓に脂肪が貯まる脂肪肝は非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)と分類され、世界で10億人の患者がいると考

        WINREVAIR (sotaterept-csrk)が肺動脈性高血圧症の治療薬としてFDAに承認された

          2024年2月

          大学に勤務していると、この時期は入学試験や学生たちの進級に関する会議で忙しい。 加えて現在は学生たちの面倒をより積極的にみる立場なので、保護者からのものを含め面談の申し込みがとても多い。 ステレオタイプに特定の年代に生まれた人を分類するのはナンセンスだけど、「自分の要求はするけれども他人の要求はきかない」学生が増えてきている。 要求もかなりの無理筋をダメ元で主張してみる、悪意をもって集団で特定の教員をキャンセルする要求を行う、などなかなか過激。 ただ、こういったタイプはこれ

          2024年1月雑感

          子供2人が受験なので今年の元旦は1人で実家に帰省。地震には驚いた。 復興をどうするか立憲の米山議員が鋭い話題を提供。新潟で嫌というほど悩んできたやろし、思索の蓄積もあるだろう。米山さんは他のボンクラ議員とはIQ違いすぎてめちゃくちゃ嫌われてそうだけどアホみたいにイライラしてしょうもない敵ばっかり作らんとしっかり仲間を作ってもっと実行力のある立場にたってほしい。これから先に待ち受ける日本の撤退戦には官僚だけじゃなく十分にIQの高い政治家も必要なので頑張ってほしい。 アメリカ

          2024年1月雑感

          Zelsuvmi (berdazimer)が伝染性軟属腫(水いぼ)の治療薬として承認された

          Zelsuvmi (berdazimer)が水いぼに対する治療薬としてFDAに承認されました。 【水いぼとは】 水いぼは伝染性軟属腫ウイルスが皮膚に感染することが原因で生じる病気です。 小児で発症することが多く(小児の5〜10%)、特にアトピー性皮膚炎などで皮膚のバリア機能が低下している小児で発症しやすいです。成人においては稀ですが、HIV感染症などで免疫機能が低下している患者で認められることがあります。 1~2年程度で自然治癒しますが、接触やタオル等の共有により伝染するこ

          Zelsuvmi (berdazimer)が伝染性軟属腫(水いぼ)の治療薬として承認された

          Wainua (eplontersen)がトランスサイレチン型家族性アミロイドーシスの治療薬として承認された

          Wainua (eplontersen)がトランスサイレチン型家族性アミロイドーシスに伴う神経障害に対する治療薬としてFDAに承認されました。 【トランスサイレチンアミロイドーシスとは】 アミロイドーシスはアミロイドと呼ばれる線維状で難溶性のタンパク質の凝集体が様々な臓器に沈着して臓器障害を引き起こす病気です。アミロイドが神経に沈着することで、感覚の異常や筋力低下、起立性低血圧や下痢・便秘、排尿障害が症状として出現します。心臓へのアミロイド沈着は心不全や様々な不整脈を引き起

          Wainua (eplontersen)がトランスサイレチン型家族性アミロイドーシスの治療薬として承認された

          2023年にFDAで承認された新薬のまとめ

          2023年には55個の新薬がFDAで承認されました。うち11個は日本でも承認されています。 55個のうち29個(53%)が低分子薬、11個(20%)が抗体薬、7個(13%)がタンパク質・ペプチド薬、4個(7%)が核酸薬、4個(7%)がその他でした。 核酸薬が増えてきましたね。 がん領域の新薬が16個(29%)、稀少疾患領域の新薬が10個(18%)、精神・神経領域の新薬が7個(13%)、感染症領域の新薬が5個(9%)でした。また、感覚器(全て眼科)領域、皮膚科領域、腎臓領域が

          2023年にFDAで承認された新薬のまとめ

          2023年振り返り+α

          本業での収入と支出は今年も残念ながら赤字。 引き続き子供達のお受験(今年は2人!)で教育費の年間400万が痛すぎるよね。 3人子供がいると教育関係の出費がなかなか厳しい。 当然、投資への追加資金は5年連続でゼロ。 子供達と過ごす日々は限られているから(最近とくに思う)引き続きマイルールをキープして、変に投資のために節約などはしない。 2023年はダウが13.7%、NASDAQが42%、S&P500が23.8%上昇。 自分の総資産は12%、Cashを除くリスク資産は28%の上

          2023年振り返り+α

          12月29日相場雑感

          ウクライナへのロシアの侵攻は膠着状態が続く中、「アメリカの支援が終わるかも」「停戦論へ方針転換」などのニュースやウクライナ内部の悶着などのニュースも目につくようになりました。おそらくロシア側のメディア工作の部分もあるとは思いますが、不況の目が見え始める中、潮目が変わってきたように感じます。 ロシアによる秩序の変更が認められることは中国という野心的な国家の標的になっている日本にも大きな影響を与えそう。結局のところ自分の身は自分で守れるようにならないとね。 先月の相場予想は大外

          12月29日相場雑感

          OGSIVEO (nirogacestat)がデスモイド腫瘍に対する治療薬として承認された。

          OGSIVEO (nirogacestat)がデスモイド腫瘍に対する新規治療薬としてFDAに承認されました。 【デスモイド腫瘍とは】 デスモイド腫瘍は筋肉や脂肪などの軟部組織に生じる希少がんの1種です。良性腫瘍と悪性腫瘍の中間の性質を示すとされ、大きくなった腫瘍が周囲の臓器を圧迫することによる疼痛などの症状が出現します。症状がある際には腫瘍を切除する手術が行われます。一般的には予後は良好ですが、再発を繰り返すためQOLを損ねます。 デスモイド腫瘍には孤発性のものと家族性の

          OGSIVEO (nirogacestat)がデスモイド腫瘍に対する治療薬として承認された。

          Fabhalta (iptacopan)が発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の新規治療薬として承認された

          Fabhalta /ファブハルタ(一般名 iptacopan / イプタコパン)が発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH: paroxysmal nocturnal hemoglobinuria)に対する治療薬としてFDAに承認されました。 【PNHとは】 PNHは厚生労働省から難病に指定されている疾患で(https://www.nanbyou.or.jp/entry/3784)、貧血や血栓、造血不全といった症状が認められます。 PNHはPIGAという遺伝子に変異をもつ造血幹

          Fabhalta (iptacopan)が発作性夜間ヘモグロビン尿症(PNH)の新規治療薬として承認された

          2023年11月26日 相場雑感

          ガザの紛争もお互いに人質を解放して、このまま手打ちにむけていい流れ?なのかな? イスラエルが爆撃した病院、予想していたほどの基地機能はなくて、イスラエルも叩かれそうな雰囲気を察してうまくアメリカが仲介してくれたんだろね。 このまま互いに鉾を収めてくれればいいけど、火種は残りっぱなし。イスラエルの国民が右派を支持している限り、互いに差別しあって憎み合って殺しあうんだろう。 宗教をベースにした紛争は本当に難しいね。悲しい。 あとバイデンwwwせっかく習さんがアメリカ来てくれた

          2023年11月26日 相場雑感

          2023年10月28日 相場雑感

          先月は中国回りでの戦争が起こりそうと書いていたが、中国ではなく中東で紛争が勃発。ハマスによるミサイル攻撃+殺戮行為に端を発して、イスラエルによるガザ侵攻が目の前に迫っている。 アラブ人もユダヤ人も宗教をベースにした民族だから選民思想が強くて、自分達以外は人間と思っていない節があるから、お互いに相容れないのは仕方ないよね。悲しいけど。 ロシアvs. ウクライナとは違って、あくまで宗教間の対立だから、キリスト教国や日本を含む第三国は関与すべきじゃない。 株式市場は先月に引き

          2023年10月28日 相場雑感

          2023年9月24日 相場雑感

          FOMCを機にようやく調整局面。金利のforward lookingが思ったよりタカ派だったから?きっかけを待っていただけのような気もする。 ソフトランディングを期待する声も大きいけど住宅ローンやクレジット残高の高騰を見るにまあ難しそう。回避できるとしたら中国周りで戦争、政変が起こるくらいかなと思う(起こりそうで怖い)。 Fed funds rate上昇の最終局面、2019年前半、2006年中ごろ、2000年後半、1995年前半、1989年前半あたり。 一番近い2006

          2023年9月24日 相場雑感