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死因:鈴蘭

死因:鈴蘭

幼い頃から、スズランの毒で死にたいと思っていた。

幼稚園児の頃、親戚のおじさんのことが好きだった。母方の祖母の弟だから、大叔父と呼ぶはずだ。たぶん当時でも50代くらいだったんじゃないかな。正確な年齢を憶えていない。本名すら思い出せない。「●●くん」と呼んでいた気がする。ここでは仮に「健吾くん」と呼ぶことにする。なんとなくそんな感じの響きだった気がするから。

痩せ型のメガネで優しそうな風貌の健吾

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恋人と父親

恋人と父親

ちょっと前の下書き

「娘は父親に似た人を好きになる」という。その「似かた」は見た目だったり性格だったり、人それぞれ。同じ人間なのだから、探そうと思えばひとつくらい似たところがあってもいいような気がする。

さいきん、一番よく会う友だちに恋人ができた。喧嘩してぶつかって一喜一憂している姿がカワイイのと、わたしにあんまり構ってくれなくなって寂しいので、わたしも恋人がほしいな!と思うことがある。でも今

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恋のビビビビ

恋のビビビビ

初めて出会った瞬間に「わたしはいつかこの人と恋におちる」と思ったことが、一度だけある。

それを一目惚れと言うのかもしれないけど、体感としては少し違う。一目惚れは「わたし、この人が好き!」という、突発的な感情の昂りだと思うから。小劇場的に言えば、嵐の“Love So Sweet”が流れるような。端から見ればコメディでしかない、突然の爆発。

あの予感はもっと普通だった。「明日も日はのぼる」「世界は

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さいきんの美/自意識

さいきんの美/自意識

あまりにも遅いけれど、あけましておめでとうございます。2020年は激動の一年でしたね。今年も生き抜きましょう。

最近、noteをぜんぜん書いていませんでした。短歌はちょくちょく書いてたよ!最近は、演劇と人の距離感が大きく離れてしまったイマ、をテーマに連作を書きました。去年は全く予想もしない形で、多くの人々と演劇、もしくはアートとの距離感が大きく開いてしまいましたね。そんな人々のやるせなさに思いを

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椛美になりました

椛美になりました

自己紹介を書くことにしました。

私の名前は、椛美(カンバメイ)です。23歳です。英語が読めます。書くのは苦手です。専攻はジェンダースタディーズです。9月に大学を卒業しました。

2020年4月あたりに名前を変えました。椛美(カンバメイ)になりました。理由は、映画監督の今敏のような二文字の名前にちょっと憧れてたのと、留学中のニックネームがメイ(「美」の中国語読み)だったからです。

大学では、演劇

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早稲田の国際教養学部に入ったこと、後悔してる?

早稲田の国際教養学部に入ったこと、後悔してる?

卒業、やったね先日、やっとのことで早稲田大学国際教養学部(通称SILS、読み方はシルス)を卒業しました。良かった……

就活や卒業など、大きな心配ごとが落ち着いてきた時点で、最近よく考えることがあります。

それは、「私の進んだ道(大学・学部)は本当に正解だったのか」ということです。

就活でも「なぜこの大学・学部を選んだのですか?」とたくさん聞かれて、そのたび私はもっともらしくてステキなことを答

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これからたくさんの人が死にます

これからたくさんの人が死にます

友達から「三浦春馬」とだけLINEが送られてきた。何かあったんだろうな、と思ってGoogleを開く。愚かにもわたしはこんなことを考えていた。①コロナ感染。②薬物使用。③逮捕。「三浦春馬」と「死」の間はそれだけ遠かった。ましてや自殺なんて、考えもつかなかった。だから、「自殺」の2文字が出てきた時、一瞬心臓が止まった。

けっこう、好きだった。私たちの世代だったら好きなドラマの何かしらには彼が出ていた

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東京、三人姉妹、モスクワ

東京、三人姉妹、モスクワ

※2019年4月に書いたものを2020年4月に加筆して公開しています。

私はいわゆる上京組です。
故郷は仙台市。
よい街。
決してど田舎ではない街。
けれど東京出身者からは
何もない、と揶揄される街。

いま、この時期に(この時期だから)故郷へ帰ってきて、そろそろ3週間が経とうとしています。

ずっと、東京を離れたくないと思っていました。東京にはなんでもあると思っていた(実際ある)し、東京には私

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海が怖い

海が怖い

1年くらい前の下書き

海に行ったのは人生でも数えるほどしかない。そのうち2回はサークルの合宿、1回は閖上への弔問。

海が怖い。別に震災のせいだけじゃなくて(わたしは仙台市民)、海は怖い。あまり泳げないし、海水は沁みるし、砂浜は痛いし、さして綺麗じゃない(ところもある)し、呑まれそうで怖い。発作的にずんずん海底まで歩いていってしまいそう。映画の中の海辺で夕陽を見る若いカップル、というロマンチック

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私と信じてる神様が違う彼

私と信じてる神様が違う彼

超個人的に好きな人について。

M.Y, 劇団森所属、22歳男性。タバコを自分で巻く男。

彼との出会いは、大学一年生の時に私が出演した劇団森の舞台、を、彼が観てくれていて、それで覚えてくれていたらしい。わたしは特に何の感慨も抱いていなかったけれど、とにかくその時の舞台を観て、彼の主宰する作品に出演することになった。

しばしば彼は『信じてる神様が違う』と言う。

演劇にもいろんな種類がある。コメ

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原宿(2016)

原宿(2016)

iPhoneのメモ帳を漁っていたら、2年前に書いたメモを見つけた。原宿の風俗誌に加えてあげたい。そして文章がわかい。

2016/08/24

(原宿でバイトしていた、翌月留学を控えていた頃の日記)

 日本を発つことを、それによって引き起こされる感情を、上手く想像できなかった。不安も切なさも寂しさもなく、淡々と過ごしていた。でもそれは突然やって来る。いつも突然やってくる。
バイトが終わった後、稽

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美/自意識

美/自意識

稽古場の汚い床に寝っ転がりながら書きました

まあみんなそうだと思うけど、美しくなりたいでしょう。美しくなりたい。とりあえずわたしは美しくなりたい。なりたいというより、美しくありたい。

美しく生きるのに、持って生まれた自分の顔や身体が邪魔。という話をします。

たとえば、今わたしは稽古場に自主練をしに来ていて、爆音で音楽をかけて、美しいテキスタイルのワンピースを着て、きちんとメイクをしていて、長

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雨だった

雨だった

数ヶ月前に書いたもの。

上京するまで、ほとんど寂しいと感じることは無かったと思う。両親は偉大。別に何か話すわけでなくても、家族がいるだけで人の寂しさはかなり軽減されるらしい。いま、ちょっと両親に会いたい。実家に帰りたい。かと言って帰らないし、LINEも返さないから、きっと両親はわたしが会いたがっていることに気づかない。
上京してから、寂しいときが増えた。増えつつある。
電子レンジのチン、が鳴った

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ある日の日記

ある日の日記

今日、バイト先の寿司屋で、酔った客がわたしの指先や髪や肩や首筋のあたりをべたべた触ってきて非常に不快だった。

今日の話だけではない話。

まず「あなた」が酔って欲情するために、わたしの首筋は白いわけではない、

「あなた」のためにわたしは女のかたちをしているわけではない、

そして、「あなた」だってこんなどこの馬の骨ともつかない女性に触れるために、男のかたちをしているわけではないだろうに、

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