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文舵練習問題① 問1
暮れかける晩夏の庭は切ない色だ。
ほんの七日ほど前までは、たとえ暦の上では秋がどうのと言われても、こともなげに紅を晒して夏を背負っていた百日紅。今や何処にも色を残すことを許されず、消え残った陽炎に煽られて揺らめくばかりだ。不意にエナガの群れがやって来ては梢を揺らす。小さな小さなその鳥は、ガラス一枚隔てただけで、ひとが在るのがわからない。ひともまた、その群れがいったい何羽なのだかわからない。今
暮れかける晩夏の庭は切ない色だ。
ほんの七日ほど前までは、たとえ暦の上では秋がどうのと言われても、こともなげに紅を晒して夏を背負っていた百日紅。今や何処にも色を残すことを許されず、消え残った陽炎に煽られて揺らめくばかりだ。不意にエナガの群れがやって来ては梢を揺らす。小さな小さなその鳥は、ガラス一枚隔てただけで、ひとが在るのがわからない。ひともまた、その群れがいったい何羽なのだかわからない。今