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20世紀の陰「トレブリンカの地獄」

<文学(38歩目)>
ジャーナリストの視点でのアウシュビッツ(ドイツによるユダヤ人迫害)にかかわるルポルタージュや、ポグロム(ロシアによるユダヤ人迫害)の実態を読み込む。

トレブリンカの地獄――ワシーリー・グロスマン前期作品集
ワシーリー・グロスマン (著), 赤尾 光春 (翻訳), 中村 唯史 (翻訳)
みすず書房

「38歩目」はワシーリー・グロスマンさんというジャーナリスト・作家のルポルタージュの短篇集です。
それぞれは、短篇なので読みやすい。且つ、研ぎ澄まされた才能で全作品が心をうってきます。

この短篇集は、若い時に読んでおくべきだったと痛感しました。

最初にグロスマンさんの率直なペンは、変遷する考えが率直に記されています。

例えば、旧ソヴィエトのウクライナ出身の共産党のジャーナリストであったグロスマンさんは、「共産主義革命」にかかわる理想と自信を強く持っています。

それが、色々なものを大量に見続ける中で、主義が偏向していく。ここが核心部です。

物事には「原因と結果」がある。あるいは「選択と結果」がある。

おそらく、アドルフ・ヒトラーの台頭も、ロシア革命も、「原因」があるからこそ、国民に受け入れられた。最初から「結果」でもある悪政ではなかった。

究極的に「目的」を突き詰めていく過程で、大量の不幸を生産している。

そして原因はヒトラー・スターリンにあるとされるが、その実務部隊は真面目で普通の「官僚」が担っている。

ここがポイントであり、何故かインテリゲンチャと言われる知識階級もなすすべなく流されてしまった。

私たちは2024年に生きているので、歴史の結末をあらかじめ知っている。

故に、「何故、そんなことを?」にと考えがちになるのだが、担った人たちにとってはテストの「過去問」ではなかった。

微妙な「無関心」や「声なき同意」が積み重なると、信じられないくらいの行動に帰着する。

表題作の「トレブリンカの地獄」も素晴らしいが、小品である「老教師」「若い女と老いた女」「女」が素晴らしいと思う。

内容は重たいが、大学生の娘たちと読んで話し合った作品です。おススメです。

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