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おもに小説が並んでおります。著作権フリーの怖い話「禍話」リライトから、奇ッ怪な作品、謎…

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おもに小説が並んでおります。著作権フリーの怖い話「禍話」リライトから、奇ッ怪な作品、謎の雑文までいろいろある雑貨屋です。タメにはならないよ! ☆ブログに書いていた「禍話」リライトシリーズはこちらに移転しました。

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記事一覧

【怖い話】 帰って来る女 【「禍話」リライト109】

 Tくんの、お父さんの体験である。 「俺のオヤジ、いわゆる転勤族ってやつだったんですよ」  長くても1年半、短くて1年弱で職場を移る。 「今じゃそういうのって嫌われ…

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7日前
131

【怖い話】 幽体離脱のあと 【「禍話」リライト108】

 幽体離脱という体験がある。  眠っている時に体から、半透明の肉体や意識だけが抜け出て、寝ている自分を眺めていたり、部屋を俯瞰で見下ろしていたりする。  そういう…

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1か月前
128

【怖い話】 桃色の栞 【「禍話」リライト 番外編】

 実家のトイレの壁に、へこみがあったのだという。 「へこみって言うか、くぼみ? スペース? 花とか芳香剤とかを置いておける、正方形の小さい空間──わかります?」…

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1か月前
82

【怖い話】 こたつの怪 【「禍話」リライト107】

 Yさんはこたつが嫌いなのだそうだ。  身体に合わないとか苦手だ、とはたまに聞くが、「嫌い」というのはあまり聞かない。  小さい頃に中にもぐって、のぼせちゃったり…

ドント
2か月前
157

【怖い話】 遺影を持つ人 【「禍話」リライト106】

 怖い目に遭ったので、お酒をやめたのだという。  彼は街で呑んでいて、そこそこ酔っていたらしい。  店を出てふらふらと外を歩いている時に尿意をもよおした。  が、…

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3か月前
163

【怖い話】 旅館の貼り紙 【「禍話」リライト新年号】

 場所も時期も明かせないため、都市伝説だと思ってお読みいただきたい。  どこかにある、小さな旅館の話だという。  フロントのそばに掲示板のようなものがあって、イ…

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4か月前
181

【映画】2023年に観た「怪映画」9選+おまけ【……?】

 今年も、たくさんの映画がありましたね。  手元にある映画館のチケットの半券を見ますと、記憶が甦ります…… 『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス…

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4か月前
111

【怖い話】 双子鏡の話 【「禍話」リライト105】

 髪をとても短くしていたのがきっかけだった記憶がある。  現在なら「ベリショ」という言葉もあって、女性が短髪にすることも珍しくないが── 「平成のはじめ頃でした…

ドント
4か月前
268

【怖い話】 おにぎりの家 【「禍話」リライト104】

 Aさんが、事故物件の内見に行った際の体験である。  Aさんは旦那さんと息子さんとの3人家族。  都会の方に引っ越しをすることになった。  お子さんはまだ小さいもの…

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5か月前
202

真夜中の檻

 小型の護送車が横転していた。  夜の山道のど真ん中だ 。あやうく激突しかけた。私は車を降りた。ボロのコートではひどく寒い。  ヘッドライトに照らされた車体に近づ…

ドント
6か月前
52

【怖い話】 顔がグチャグチャな話 【「禍話」リライト103】

 本当に何もしていないのに、ひどいことに巻き込まれた話である。  平成の、一桁台の出来事だという。 「今はあんまりやらないんでしょうけど、当時は町内会とか学区で…

ドント
6か月前
146

聖女の囁き

 暗い路地に逃げ込んだ直後に追いついた。手首を握りひねり上げる。 「知らねぇよ!」男はわめいた。「あんたの女なんか見たこともねぇって!」 「マリア……本当にこいつ…

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6か月前
42

【怖い話】 古着屋の別人 【「禍話」リライト102.5】

 古着屋巡りが好きなAさんが体験した、短くて、ちょっと変な話。  恋人と一緒に出向いた店で、いい感じのシャツがあった。 「おっ、これよくない?」 「いいじゃん。着…

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6か月前
88

にぎやかな葬儀【逆噴射小説プラクティス】

 公園のベンチで本を読んでいると、汚れたTシャツ姿のオッサンがそばにドカッ、と腰を下ろした。 「ふぅ~っ、暑いね!」  言いながら自分の横にトロフィーを置いた。…

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6か月前
29

【おしらせ】年に一度のお祭り、「逆噴射小説大賞」がはじまるよ!【フェス】

 皆さん……「逆噴射小説大賞」というコンテストをご存じですか?  これはnoteで毎年開催されている、「小説の冒頭800字の面白さ」だけで競う、世にも珍しい賞です。  …

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7か月前
33

【怖い話】 床下の仏壇 【「禍話」リライト102】

 同じ学年だが、年が3つ上の友人がいたという。 「留年したのか浪人したのかは、ついに聞かずじまいだったんですけどね」  白井くんはその「年上の同級生」、高山さん…

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7か月前
244
【怖い話】 帰って来る女 【「禍話」リライト109】

【怖い話】 帰って来る女 【「禍話」リライト109】

 Tくんの、お父さんの体験である。

「俺のオヤジ、いわゆる転勤族ってやつだったんですよ」

 長くても1年半、短くて1年弱で職場を移る。
「今じゃそういうのって嫌われますけど、まぁ昔の話ですからねぇ──」

 その頃にはもう、Tくんは生まれていた。
 度重なる引っ越しに妻子を連れて歩くのは忍びなかったので、お父さんは単身赴任という形をとっていた。
 2年と居住しない土地の独り暮らしだから、住まい

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【怖い話】 幽体離脱のあと 【「禍話」リライト108】

【怖い話】 幽体離脱のあと 【「禍話」リライト108】

 幽体離脱という体験がある。
 眠っている時に体から、半透明の肉体や意識だけが抜け出て、寝ている自分を眺めていたり、部屋を俯瞰で見下ろしていたりする。
 そういう体験である。

 幽体離脱の怖い話となると、
「布団の中にいる自分のそばに黒い影がいた」
 とか、
「抜け出た自分を引っ張る手が」
 などというのがよくあるパターン、なのだが。

「そういうのじゃないんッスよねぇ」
 Xくんは言う。
「あ

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【怖い話】 桃色の栞 【「禍話」リライト 番外編】

【怖い話】 桃色の栞 【「禍話」リライト 番外編】

 実家のトイレの壁に、へこみがあったのだという。

「へこみって言うか、くぼみ? スペース? 花とか芳香剤とかを置いておける、正方形の小さい空間──わかります?」

 とにかく、ちょっとしたモノを置いておける「へこみ」が、便座の横の壁にあったそうだ。
 トイレットペーパーの替えを置いたり、お母さんが小さな造花を飾ったりしていた。

 ある日の夜のこと、トイレに用を足しに行った。
 電気をつけて、便

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【怖い話】 こたつの怪 【「禍話」リライト107】

【怖い話】 こたつの怪 【「禍話」リライト107】

 Yさんはこたつが嫌いなのだそうだ。

 身体に合わないとか苦手だ、とはたまに聞くが、「嫌い」というのはあまり聞かない。
 小さい頃に中にもぐって、のぼせちゃったりしたんですか? と冗談半分で尋ねてみると、ちょっとイヤな顔をされた。

「まぁそうとも言えるし、そうとも言えないというか」

 よくわからないので、話を聞いてみることにした。

 小学1年か2年の時の出来事である。
 親戚のおばさんの屋

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【怖い話】 遺影を持つ人 【「禍話」リライト106】

【怖い話】 遺影を持つ人 【「禍話」リライト106】

 怖い目に遭ったので、お酒をやめたのだという。

 彼は街で呑んでいて、そこそこ酔っていたらしい。
 店を出てふらふらと外を歩いている時に尿意をもよおした。
 が、コンビニや公園──飛び込みで入れるトイレは周囲になかった。
 しばらく歩いて探したが、運悪く見当たらない。

 酔いで気が大きくなっていたため、
「しょうがねぇな……ま、いいか!」
 と、ビルとビルの間に入った。

 街路灯もない道で、

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【怖い話】 旅館の貼り紙 【「禍話」リライト新年号】

【怖い話】 旅館の貼り紙 【「禍話」リライト新年号】

 場所も時期も明かせないため、都市伝説だと思ってお読みいただきたい。

 どこかにある、小さな旅館の話だという。
 フロントのそばに掲示板のようなものがあって、イベントやお知らせの貼り紙がしてある。

 その中に一枚、指名手配状のような紙があるそうだ。男の顔写真が印刷してあって、下にごちゃごちゃと説明が書いてある。

 大半の客は「あぁ、警察の人が貼っていくアレだな」と見過ごしてしまう。
 しかし

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【映画】2023年に観た「怪映画」9選+おまけ【……?】

【映画】2023年に観た「怪映画」9選+おまけ【……?】

 今年も、たくさんの映画がありましたね。
 手元にある映画館のチケットの半券を見ますと、記憶が甦ります……

『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』
『シン・仮面ライダー』
『スーパーマリオブラザーズ ザ・ムービー』
『東京リベンジャーズ 2&3』
『スパイダーマン アクロス・ザ・スパイダーバース』
『君たちはどう生きるか』
『イコライザー THE FINAL』
『ゴジラ -1.0

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【怖い話】 双子鏡の話 【「禍話」リライト105】

【怖い話】 双子鏡の話 【「禍話」リライト105】

 髪をとても短くしていたのがきっかけだった記憶がある。
 現在なら「ベリショ」という言葉もあって、女性が短髪にすることも珍しくないが──

「平成のはじめ頃でしたから、まぁ目立ちましたよね。私は単にカッコいいと思って短くしてたんですけど」

 当時高校生だったWさんは、同じクラスの女子グループに目をつけられた。

「なにこの髪型ァ~って、汚いモノみたく指でつままれたりね。あとは教科書やカバンを──

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【怖い話】 おにぎりの家 【「禍話」リライト104】

【怖い話】 おにぎりの家 【「禍話」リライト104】

 Aさんが、事故物件の内見に行った際の体験である。

 Aさんは旦那さんと息子さんとの3人家族。
 都会の方に引っ越しをすることになった。
 お子さんはまだ小さいものの、将来のことも考えて少し広い家の方がよいだろう、と考えていたという。

 広さだけではなく立地条件や職場との距離、周辺の環境に気を配りながら、いい物件がないか探していた。

 ある不動産屋に出向いて、何件か家を回っていた時のことだ。

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真夜中の檻

真夜中の檻

 小型の護送車が横転していた。
 夜の山道のど真ん中だ 。あやうく激突しかけた。私は車を降りた。ボロのコートではひどく寒い。
 ヘッドライトに照らされた車体に近づいていく。前方が潰れていた。砕けたガラスが靴の下で鳴る。

「止まれ」と声がした。
 車の陰から腕が伸びている。手には銃、テーザーガンと一目でわかった。
「抵抗するな。いいか」
 私はあぁ、と答えた。

 姿を現したのは、長い黒髪の青年だ

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【怖い話】 顔がグチャグチャな話 【「禍話」リライト103】

【怖い話】 顔がグチャグチャな話 【「禍話」リライト103】

 本当に何もしていないのに、ひどいことに巻き込まれた話である。
 平成の、一桁台の出来事だという。

「今はあんまりやらないんでしょうけど、当時は町内会とか学区で、お泊まりとかキャンプとかやってて」

 Tさんは小学生の時の体験をそう語りはじめた。

「俺のところは団地単位でそういうのやってたんですよ。A棟、B棟、みたいな区切りでね」

 小学4年の時に、住んでいる団地の子供たちで山に行くことにな

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聖女の囁き

聖女の囁き

 暗い路地に逃げ込んだ直後に追いついた。手首を握りひねり上げる。
「知らねぇよ!」男はわめいた。「あんたの女なんか見たこともねぇって!」
「マリア……本当にこいつもか?」 ジグは聞いた。
「そうよ」
 耳元で女の囁き声。
「こいつも、私を殺した連中のひとり」
「そうか」
「あんた、一人で何喋って」
「黙れ」
 髪を掴んで顔面を壁に叩きつける。二度。三度。四度。男は真っ赤になって地面にずり落ちた。

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【怖い話】 古着屋の別人 【「禍話」リライト102.5】

【怖い話】 古着屋の別人 【「禍話」リライト102.5】

 古着屋巡りが好きなAさんが体験した、短くて、ちょっと変な話。

 恋人と一緒に出向いた店で、いい感じのシャツがあった。
「おっ、これよくない?」
「いいじゃん。着てみなよ」
 恋人にも勧められたので、店員さんに試着室の場所を聞いた。
 中に入ってカーテンを閉める。
 袖を通して頭をくぐらせて、さてどうかな? と鏡に目をやった。

 鏡の中に、そのシャツを着た見知らぬ男が立っていた。

 うわあっ

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にぎやかな葬儀【逆噴射小説プラクティス】

にぎやかな葬儀【逆噴射小説プラクティス】

 公園のベンチで本を読んでいると、汚れたTシャツ姿のオッサンがそばにドカッ、と腰を下ろした。

「ふぅ~っ、暑いね!」

 言いながら自分の横にトロフィーを置いた。木製の台座が血まみれだった。銀のプレートには「優勝!」の3文字。台座から屹立している金色の胸像の顔は、オッサン本人だった。

 俺は文庫本をそっ、と閉じて、「暑いですね」と返した。
 平日昼の公園、誰もいない。俺とオッサンのふたりきり。

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【おしらせ】年に一度のお祭り、「逆噴射小説大賞」がはじまるよ!【フェス】

【おしらせ】年に一度のお祭り、「逆噴射小説大賞」がはじまるよ!【フェス】

 皆さん……「逆噴射小説大賞」というコンテストをご存じですか?

 これはnoteで毎年開催されている、「小説の冒頭800字の面白さ」だけで競う、世にも珍しい賞です。
 パルプ小説とありますが、「広義の娯楽小説」と考えてください。
 SF、犯罪、青春、ホラー、バトル、時代物……上にある記事内の「結果発表」や「大賞作」などをお読みいただければわかる通り、多種多様な作品が集まっています。

 主催はニ

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【怖い話】 床下の仏壇 【「禍話」リライト102】

【怖い話】 床下の仏壇 【「禍話」リライト102】

 同じ学年だが、年が3つ上の友人がいたという。

「留年したのか浪人したのかは、ついに聞かずじまいだったんですけどね」

 白井くんはその「年上の同級生」、高山さんについてこう語った。

「まぁ、人生の先輩ってやつですから俺らは敬語で。高山さんはタメ口で話してました。でも年上風を吹かせることもなく、」

 いい人ではありましたよ。
 と白井くんは言った。

 高山さんはとても真面目な大学生だったら

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