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「ボロボロじゃないか」
私と夫は驚きました。名もなき寺院ではなく、「国指定文化財」の寺院です。それもその寺院だけではなく、行く先々の、「国指定文化財」がボロボロだったのです。「国指定文化財」と言えば、例えば、「建造物,絵画,彫刻,工芸品,書跡,典籍,古文書,考古資料,歴史資料など(引用『文化庁』)」の有形文化財の場合、「我が国にとって歴史上,芸術上,学術上価値の高いもの(引用『文化庁』)」で、国の支援もあるはずです。

私達夫婦は京都に住んでいます。かつての首都、千年都であり、歴史ある仏教寺院・庭園・皇室の宮殿や御所・神社・伝統的な木造家屋があります。その都で、私達夫婦は文化財めぐりをしています。私は特に庭園のある寺院めぐりを気に入っています。京都の寺院の庭園は、静けさ・穏やかさも魅力ですが、私にとって何よりも素晴らしいことは、アイデアの宝庫だということです。いずれも仏教と絡めていますが、小さな敷地に、滝から海に水の注ぐ様を石と白砂で表現したり、小山を作ったり、建物から見ても素晴らしいコンパクトな鑑賞式庭園が背後に回ると回遊式庭園だったり、天然の山の高低差を利用したものだったり。行く先々の庭園が個性豊かで、私の訪れたところには似たものがありません。寺院の建物も勿論見ますが、やはり個性豊かです。山を丸ごと寺院にしたものから街の建物がメインの小さな寺院まで、様々です。

京都には日本初のものも複数ありますし、街の有名ではない小さな神社や寺院にも歴史のあるところがたくさんありますし、古い木造の街並みも残っています。そんな京都ですが、歴史があるだけに、それらの保護も大変です。冒頭にも書いた国指定文化財ですら、傷みが激しく、無名の神社や寺院の建物は、この先、存続も難しいでしょうし、古い街並みの木造の建物は、毎年たくさん取り壊されているようです。傷みの原因は、経年劣化の他に、財政難による維持費の確保困難・気候変動・大気汚染といろいろあるでしょうが、一般市民の関心のなさも大きいでしょう。

貴重な文化財をできるだけ遠い未来に遺すために、今の私にできることは、できるだけたくさんの文化財を見てまわり、体験したことを、いろんな手段を使って、多くの人に語ることではないかと思っています。文化財に関心を持ってくれる人が一人でも多く増えれば、文化財保護のためのお金や知恵が集まれば。失ってからでは遅いのです。


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