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精読その1(モイン編):分からなくてもとにかく読み進めるべし
タイトルについて
英語の原題は、『Liberalism Against Itself: Cold War Intellectuals and the Making of Our Times』です。難しいのですが、自分なりに訳してみますと、『自らと対峙するリベラリズム:冷戦期の知識人と現代の形成』という感じです。
タイトルのキーワードは、「Liberalism(自由主義)」と「Cold Wa
歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)④:ザ・パスト・イズ・ア・フォーリン・カントリー
引用文は、本のタイトルにもなっている猫の大虐殺について記述している第2章「労働者の叛乱:サン・セヴラン街の猫の大虐殺」からの一節です。
猫を飼っている方には、だいぶショッキングなタイトルですが、これは、18世紀のパリで起こった事件で、二コラ・コンタという印刷工が徒弟時代を回顧した物語に記録されています。
物語をかいつまんで言うと、印刷工場で働いていた駆け出しの印刷工の2人が、劣悪な職場環境に腹
歴史学の面白さについて(ダーントン『猫の大虐殺』を題材に)③:歴史を語る前に気をつけること
引用文は、ダーントンの『猫の大虐殺』の第1章に収められた「農民は民話をとおして告げ口する」からの一節です。
この章で、ダーントンは、18世紀に生きた農民たちの精神世界に迫るために、当時彼らが言い伝えていたであろう民話を分析しています。
その最初の民話が、皆さんもご存じであろう「赤ずきんちゃん」です。
ダーントンは、その「赤ずきんちゃん」の物語が、現在我々が知っている内容と違いがあることを示す
歴史学との出会い③:フットノートって何ですか?!
リサーチ・ペーパーなるものを、初めて書いたのも、アメリカン・スクールでのことでした。
自由にトピックを選んで、10ページくらいの論文にまとめるというような課題だったと思います。
当時の自分は、何を思ったか、オスマン帝国の衰退に狙いを定めました。なぜオスマン帝国だったのか、今もって謎ですが、参考資料を探しました。
ちょうど「The Decline of the Ottoman Empire」み
【歴史その6】「困った人々を助けたい」にも歴史がある
悲しいニュースを目にしたとき
最近は、ウクライナ戦争やパレスチナ情勢などで、破壊された建物や肉親を失って悲しむ市民の映像を見る機会が増えてきました。日本という安全な場所にいることをありがいと思う一方で、たまたまその地域に生まれたという理由だけで苦しみを味わう人々に何かができないかとも思います。
戦争だけでなく、飢餓や貧困など苦しんでいる人々が、世界には溢れています。
そんな人々を助けた
【歴史その5】「境界を生きた女たち」にも歴史がある
ジェンダーバイアスにご注意!
前回の記事では、記録を残さなかった「男」の歴史を取り上げました。今回は、境界を生きた「女」たちにフォーカスしてみたいと思います。
ところで、これまでの記事に登場した人物たちは、ハーヴィー、セネカ、ダーウィン、シュヴァルツ、ピナゴと全員が驚くことに男性です。
もちろん、著者に、女性は歴史上あまり重要ではなかったというような考えがあるわけではありません。し