Keiji Matsubara "Restaurant Izanami Tokyo" Chef

I hope our life is worth living.

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最近の記事

真っ赤な鷹にあこがれて

寝て過ごすも一日。ただ、一切は過ぎ去っていく。 その日々に愛を抱こうが、後悔しようが、価値を見出そうが、見出さまいが、それらはなんの関係もなく。 ただ、一切は過ぎ去っていく。 ー 無人島生活。95日目。 あと5日が経てばこの島を去り、おそらく、いやきっと、もう戻ってくることはないだろう。 立場をわきまえず偉そうに自分の哲学や思想を書きなぐってきた、この無人島でのエッセイもこれで最後になる。 自分のこれまでの学びの棚卸しのために、そして、とりあえず一度は世間様に見て

    • 無人島読書 vol.5 ~森と氷河と鯨 -ワタリガラスの伝説を求めて- ~

      この本を手にしたのは、2年ほど前か。 久留米の美術館にて催されていた、「没後20年 特別展 星野道夫の旅」へ訪れた際に購入したものだ。 以前から、星野道夫氏のことは知っていたものの、著書や写真を手にする機会はなかなかなかった。 が、当時お付き合いしていた女性に誘われて、ようやくの出会いを果たせたのだ。 …それはもう、素晴らしく、美しい写真ばかりだった。 そのなかでも特に印象に残っているのが、クジラの骨の墓(遺跡)の写真だ。 たった一枚の写真が多くのことを伝えてくれる。

      • 無人島読書 vol.4 ~わが息子よ、君はどう生きるか~

        無人島生活、85日目。 ずいぶんと肌寒くなってこの1、2週間で落葉がすすみ、乾いた風が吹くようになった。 秋が来た。 夏の終わり、秋の始まりを感じさせる金木犀の香りはこの島にはなく、代わりに日々色づいていく柿が、秋の訪れを知らせてくれている。 100日、なんとなく決めた100日という日数も、気がつけば終わりが近づいてきた。 この島にきて100日を過ごして、ぼくは一体なにを手に入れたかったんだろうか。 サバイバルや冒険というよりも、隠居生活と呼んだ方が適するであろうこの

        • 犯罪は、叫び声だ。救いを求める声が届かなかった人たちの、最後の悲痛な叫び声だ。

          なにより先に、言っておきたい。 ぼくは、犯罪を擁護するつもりは一切ない。 一番に傷ついているのは、間違いなく犯罪に巻き込まれた被害者の方々だ。 その方々のケア、救済が一番に優先されるべきだと思っている。 また、犯罪者の刑罰を軽くすべきだとも全く思っていない。 むしろ罪によっては、刑罰が軽すぎるのではと思うことすらある。 自らが犯した罪を受け止め、繰り返し反省し、更生し、その罪を背負い償いながら生きていくために。刑罰は必ず必要だと思っている。 ぼくがいまから語るのは、 犯

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        • エッセイ
          13本
        • 28歳男の無人島単独100日間生活
          7本

        記事

          曰く、この世は生きるに値する

          2013年、秋。 当時お付き合いしていた女性と、東京は立川のワンルームで同棲していた時のことだ。 着の身着のままで二人で東京に引っ越してきてばかり。お金もなくひどく物の少ない部屋のなか、床に座って備え付けのテレビを二人で眺めていた。 見つめる画面の向こうには、スタジオジブリの宮崎駿監督。 映画「風立ちぬ」の劇場上映が終わり、今度こそ本当に現役を引退すると、記者会見に応じていた。 僕は児童文学の多くの作品に影響を受けてこの世界に入ったので、基本的に子供たちに「この世は生きる

          曰く、この世は生きるに値する

          無人島読書 vol.3 ~ 自分の中に毒を持て;岡本太郎著 ~

          おそらく、いや、間違いなく。 今までの人生で一番に影響を受けた本だろう。 初めて手にしたのは、大学を留年して下宿を追い出されて大阪のゲストハウスに住み込みで働いていた頃か。 今でも覚えている。心斎橋の本屋でこの本を手にとって、最初の1ページ。 その1ページがもう。ね。 あぁきっとこの1ページがこの本の全てなんだなと感じて。 開幕初手で元気玉をぶち込まれた衝撃だった。 いまでもその1ページだけを読んでは目を閉じて、その言葉を反芻したりする。 この本がきっかけで岡本太郎氏

          無人島読書 vol.3 ~ 自分の中に毒を持て;岡本太郎著 ~

          無人島読書 vol.2 ~嫌われる勇気~

          無人島に持ち込んだ5冊の本。 今日紹介するのはその2冊目、アドラー心理学について書かれた「嫌われる勇気」。2015、2016年にはベストセラーにもなっため、ご存知の方も多いかと思う。 類に漏れず、ぼくもこの本にどハマりして、相当な影響を受けている。 初めて手にした時から今に至るまで、なにかに悩んでいる時には、この「嫌われる勇気」と次に紹介予定の「自分の中に毒を持て」の2冊を何度も読み直している。そうすると大概の場合、そのどちらかに自分の背中を押してくれる言葉を見つけることがで

          無人島読書 vol.2 ~嫌われる勇気~

          無人島読書 vol.1 ~光あるうちに光の中を歩め_トルストイ著~

          無人島で100日間を過ごすにあたり、5冊の本を島へ持ち込んだ。 どれも、ぼくにたくさんの学びや気づきを与えてくれた本だ。なので、ぼくなりの解釈やストーリーを踏まえながら、本の紹介をしていきたいと思う。 最初の1冊は、「光あるうち光の中を歩め トルストイ著」だ。 物語の舞台は、キリスト生誕100年後のローマ時代。かつて学び舎を共にした2人の青年が、一人は迫害を受けていたキリスト教徒の道に、もう一人はローマの教えに従い、それぞれの人生を進めていく。 キリストの教えに従い生きる青

          無人島読書 vol.1 ~光あるうちに光の中を歩め_トルストイ著~

          いや、これは決して強者の理論なんかじゃない。虐げられてきた弱者の、それでもなおと戦っている人たちの、希望をこめた言葉だ。

          先日、日韓関係についての記事を投稿した。 じつはこの話には続きがある。 ぼくが釜山でイベントをした夜には、韓国で結婚をされた日本人女性も参加していて、ぼくは彼女と二人で日韓関係の話をしていた。 「どんな過去があったにせよ、今の僕たちにできることは、この先にどんな未来を一緒につくっていきたいか、ということではないでしょうか。その未来への目的を共有したうえで、過去に囚われず、過去に学んで、それを未来に活かしていく。それがぼくたちにできることじゃないでしょうか」。 先の記事にも書

          いや、これは決して強者の理論なんかじゃない。虐げられてきた弱者の、それでもなおと戦っている人たちの、希望をこめた言葉だ。

          歴史は、ぼくらになにを語りかけているのだろうか。 ~日本と韓国、過去と未来の話~

          2019年7月の上旬、料理イベントをするためにぼくは韓国の釜山を訪れた。 はじめての韓国、はじめての野外料理イベントで緊張していたものの、彼らの優しさに助けられて無事にイベントを終えることができた。 ぼくが韓国に訪れる直前には大阪でG20が開催されており、米韓北朝鮮の3カ国が北緯38度線での会談を実現させる、歴史的出来事が起きたところだった。韓国での滞在先の駅前に、その北緯38度線会談を祝う垂れ幕がかかっていたことを覚えている。 当時も日韓関係が良好とは言い難かったかもしれ

          歴史は、ぼくらになにを語りかけているのだろうか。 ~日本と韓国、過去と未来の話~

          韓国 釜山にて、"スモーク&パエリアnight" やってきました。

          釜山を訪れたのは、無人島へむかう直前の7月2~6日。 ぼくに声をかけてくださったのは、熊本三角のエコビレッジ サイハテに住むkison(キソン)さん。 今年の2月にサイハテに数日遊びに行った際に知り合い、その時に韓国でのイベントを打診していただきました。改めて、貴重な機会をありがとうございます! ーーー キソンさんは日韓の若者の交流を促進させるための活動をされており、今回はその取り組みのひとつ「Community Restaurant」のイベントとして、お呼びいただきまし

          韓国 釜山にて、"スモーク&パエリアnight" やってきました。

          2017年、秋。夜空にはオリオンの星が流れ、親友がプロポーズの成功に幸せの涙を流しているとき、俺はひとり背骨から髄液を垂れ流していた。

          *2017年10月22日に書かれた記事のリライトです。 いたって健康な身体で、元気に暮らさせてもらっていると自分では思っていたのだが、どうやらぼくは他人にくらべてわずかばかり、病院にやっかいになることが多い人生らしい。 「脳脊髄液漏出症(脳脊髄液減少症)」という病気を発症し、先週の月曜から寝たきりの日々を過ごしている。今週の月曜には入院しており、その翌日にはEpidural blood patchという治療(脊髄を保護する硬膜の外に自分の血液を注入するというもの)を受け、

          2017年、秋。夜空にはオリオンの星が流れ、親友がプロポーズの成功に幸せの涙を流しているとき、俺はひとり背骨から髄液を垂れ流していた。

          かぎりなく0に近いなにかへ、そして、1になる

          *2017年6月7日に書いた記事のリライトです。 獣肉処理場にひとり佇む。目の前には血抜きを終えた鹿が吊られている。 吐き気がする。冷や汗がにじみ出る。ナイフを持つ手が震えているのがわかる。……気がした。 山へ罠を仕掛けに行く。 「獣たち、どうか俺みたいな半端が掛けた罠を踏んでくれるなよ。もしそうなったら俺はお前らの生命を奪わにゃいかん」。くくり罠を地面に埋めながら、心からそう願っている自分にハッと気づいて、思わずその罠を放り投げた。 でも、もったいないからちゃんと拾って、

          かぎりなく0に近いなにかへ、そして、1になる

          下がってろ、俺がやる。的なサムシング

          *2016年4月16日に書いた記事のリライトです。 昔から天邪鬼だった。 小学生。 身体も大きくないし、運動ができるわけでもない。 その他に埋もれないよう、人と違うことをして目立とうとしていた。 今、思えば、本能的に生存戦略していたのかもしれない。 中学生、高校生。 バスケが好きだったけど、万年補欠。練習でもチームのお荷物で。 料理人になるって言って、部活も辞めて、学校でも料理の本読んだりフランス語ラジオ講座とか聞いてたな。 この分野で勝てないのなら、あいつらができない

          下がってろ、俺がやる。的なサムシング

          でもそれでいい、僕は弱い立場であり続けたい

          *2016年12月16日に書いた記事のリライトです。 ぼくの住む岡山県西粟倉村から、車で30分も走ればたどり着く兵庫県佐用町平福。その山中で狩猟中の誤射事件が発生、僕と同い年の26歳の若手猟師が死亡したらしい。つい先日、2016年12月11日の出来事だ。 正直、立場上は控えるべき発言だと思うのだけど、若造の戯言だと心をひろくもって聞き流…さずに、しっかり聞いて、怒るならば怒りの感情でもって僕の声を受け取って欲しい。 鉄砲。 僕は、生き物を殺めるためだけに特化した道具は持

          でもそれでいい、僕は弱い立場であり続けたい

          ド三流のプリンシプル

          *2016年8月23日に書いた記事のリライトです。 腰を据えて、積み重ねて、ひとつに決めて、一流に。 一端の社会人として、忠義を欠くことなく、まともに。 なろう。なるべきだ。ならなきゃいけない。そう自分に言い聞かせてきた。 「良く生きるとは」という人生への問いが、「上手く生きるには」「成功するように生きるには」という問いにすり替わってはいないだろうか。 最近気が付いたことがある。僕は「正しさ」や「キレイ」にはあまり惹かれない。 最高に心惹かれる「本当の美しさ」とは、もっ