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東京のアートブックショップ flotsam booksです。

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    アートブックを中心としたブックレビューを若い書き手たちに書いてもらっています。新刊、古書問わずアートブックの面白さを知って頂けると嬉しいです。

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    編集者志望、写真やファッションが好きな青年、坂入純平による写真集レビュー。お仕事のご依頼は直接本人まで。

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    flotsam booksでのブックレビューの新連載が始まりました!お店の本棚にある面白いけど誰もレビューしなさそうな本を不定期でレビューしていきます。気になる本があればぜひ店頭でめくってみてください〜 これからどうぞよろしくお願いいたします!!

記事一覧

flotsam zines tour 2024

今年もこの時期がやってきました。 応募フォーム 予定数に達したので一旦受付を停止しております。 flotsam books zine 販売会は2022年「TKO zines tour」という名称で…

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3週間前
12

#14 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。(2) One sunny afternoon, I lay down on the grass and read it.(…

Julian Klincewicz 『Solo Tumult』 文:井手 沙耶果/Sayaka Ide (English ver. is below) 一人芝居 / Monodrama わたしは演劇が好きだ。舞台上と客席それぞれの場所…

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3週間前
9

#13 1と無限

Contact High Zine Issue 4: Into the Parallel 澤田雄斗 2024年のある日。 体に上下の揺れを感じると、同じ方向に向かっていたはずの車が逆を向いて隣を通過していった。…

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1か月前
2

#12 旅のおわり世界の始まりAcross the sea  草野庸子

Across the sea by 草野庸子 秋田紀子/Noriko Akita  草野庸子の写真からどの写真も共通してあたたかい眼差しを感じる。人間に対してもモノに対しても。彩度はどの写真も…

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2か月前
11

#11 “MEN UNTITLED” Carolyn Drake

MEN UNTITLED by Carolyn Drake 伊藤 明日香 もう一度、最初から始めよう。 いわゆるアート史をさかのぼると、最初から始めることは何度も試みられてきた。 そうでしょう…

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2か月前
11

#10 “CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH

“CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH 伊藤 明日香 もう一度、最初から始めよう。 初めてみた海外の景色はなんだったろう。日本に産まれて育った自分には”海外”という言葉…

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3か月前
4

#9 『INTO THE PARALLEL』CONTACT HIGH ZINE-4th Issue:「bad experiences」から広がる並行世界

 スタイリスト島田辰哉氏、アートディレクターYOSHIROTTEN氏、写真家山谷佑介氏の3名が中心となり、2015年9月にローンチされた日本発のインディペンデントマガジン「CONTA…

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4か月前
8

#8 The First 10 Years of Needles & Pens

The First 10 Years of Needles & Pens 光咲 階層も年齢も国籍も違う人が、好きなことが同じという理由で自然と集まることは素晴らしいことだ。大人になればなるほど、育…

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4か月前
2

#7 狭間にある主観

小山田孝司: なにがみてるゆめ 澤田雄斗 「ファッション関連で何かオススメの本はないですか?」 デザインも絵画も写真も分からない青年が店主に聞いている。 隣には普段…

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4か月前
10

#6 Universal, Under Exposure Journal

Yuri Shibuya: Universal, Under Exposure Journal 伊藤 明日香 もう一度、最初から始めよう。 初めて買った写真集のことを思い出してみる。 写真作家の作品集、参考書、…

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4か月前
14

#5 山本昌男: くらやみ

山本昌男:くらやみ 中根健太  日本人写真家・山本昌男と音楽家・内田輝による写真と音楽の対話から生まれた写真集。この2名がコラボレーションをするのは2020年の『sasa…

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4か月前
3

#4 シンキング・アバウト・ユー

アンダース・エドストローム写真集: ANDERS EDSTROM: SPIDERNETS PLACES A CREW / WAITING SOME BIRDS A BUS A WOMAN 横田陸  スウェーデン・フロソ出身の写真家、アンダ…

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4か月前
5

#3 「未だ触れぬ未知、隔たりの優しさについて」

Batia Suter 『Exosphere 』書評  犬童アツヤ/Atsuya Indo 昨日はたまごサンドのことを考えていたらどうにも食欲を我慢できず、夜中にせこせこ朝ごはんにあてがうために…

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4か月前
9

NOT TOO LATE #9: なにがみてるゆめ

文:Jumpei Sakairi 小山田孝司 作品集: なにがみてるゆめ  スタイリストの小山田孝司さんは2023年8月、出版社のDogYearsから写真集「なにがみてるゆめ」を発売した。20…

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5か月前
7

#2 鮮やかな美しさ、危険な魅力の中に潜む怒り

Petra Collins『Discharge』文: 秋田紀子/Noriko Akita ニューウェーブフェミニズムの発信者の一人としても知られている Petra Collins(ペトラ・コリンズ)はアート、フ…

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6か月前
16

#1 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。

Hanayo 『Keep an Eye Shut』文:井手 沙耶果/Sayaka Ide (English ver. is below) 「目、閉じて」。 誰かにそう言われると、これから一体何が起こるんだという不安に襲…

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6か月前
17
flotsam zines tour 2024

flotsam zines tour 2024

今年もこの時期がやってきました。

応募フォーム

予定数に達したので一旦受付を停止しております。

flotsam books zine 販売会は2022年「TKO zines tour」という名称で東京、大阪、金沢を巡回し、2023年には仙台、名古屋、神戸、京都を追加し、8箇所を回るツアーとなりました。
2022年の様子はこちらで記事になりました。

企画皆さんのzineをflotsam bo

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#14 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。(2) One sunny afternoon, I lay down on the grass and read it.(2)

#14 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。(2) One sunny afternoon, I lay down on the grass and read it.(2)

Julian Klincewicz 『Solo Tumult』

文:井手 沙耶果/Sayaka Ide
(English ver. is below)

一人芝居 / Monodrama

わたしは演劇が好きだ。舞台上と客席それぞれの場所で生身の人間と人間が向き合った時に伝わる、誤魔化しようのない圧倒的な存在感を放つエネルギー。それは、画面上で映画やドラマを観ている時には決して体感することができ

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#13 1と無限

#13 1と無限

Contact High Zine Issue 4: Into the Parallel
澤田雄斗

2024年のある日。
体に上下の揺れを感じると、同じ方向に向かっていたはずの車が逆を向いて隣を通過していった。
違和感を感じつつも先へ進むと、そこにはひび割れたコンクリートが辺りを埋め尽くしている。いつもと変わらない車内からはまるで別世界のような景色が見えた。

スタイリスト島田辰哉が中心となり、

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#12 旅のおわり世界の始まりAcross the sea  草野庸子

#12 旅のおわり世界の始まりAcross the sea  草野庸子

Across the sea by 草野庸子
秋田紀子/Noriko Akita

 草野庸子の写真からどの写真も共通してあたたかい眼差しを感じる。人間に対してもモノに対しても。彩度はどの写真も低めで少し冷たい感じもするのだが、写真から滲み出てくる何かがあるので私も同じような眼差しで写真をみることができる。

 光が差したロンドンの風景。見たことがない場所なのに懐かしい気持ちになる。写真に写して

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#11 “MEN UNTITLED” Carolyn Drake

#11 “MEN UNTITLED” Carolyn Drake

MEN UNTITLED by Carolyn Drake
伊藤 明日香

もう一度、最初から始めよう。

いわゆるアート史をさかのぼると、最初から始めることは何度も試みられてきた。
そうでしょう?表現は繰り返され一般化された商品、例えばTシャツやあなたのスマホの壁紙、建設途中の敷地を覆う仮囲いに至るまで消費されるとそれを逆手に取ったり極端に身近なものになったり目に見えるものでは無くなったりバナナ

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#10 “CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH

#10 “CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH

“CZECH EDEN” MATTHEW MONTEITH
伊藤 明日香

もう一度、最初から始めよう。

初めてみた海外の景色はなんだったろう。日本に産まれて育った自分には”海外”という言葉の感覚が染み付いている。最近ではなんだかそれに違和感を感じるようになったが、自分から離れることは未だ叶わない。
そういえば、内と外の概念とは一体いつ生まれたのだろう。知らぬ間に自分に植え着いた、外があるという

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#9 『INTO THE PARALLEL』CONTACT HIGH ZINE-4th Issue:「bad experiences」から広がる並行世界

#9 『INTO THE PARALLEL』CONTACT HIGH ZINE-4th Issue:「bad experiences」から広がる並行世界

 スタイリスト島田辰哉氏、アートディレクターYOSHIROTTEN氏、写真家山谷佑介氏の3名が中心となり、2015年9月にローンチされた日本発のインディペンデントマガジン「CONTACT HIGH ZINE」の4th Issue「INTO THE PARALLEL」。
2018年から2020年にかけての「bad experiences」を埋めるために「INTO THE PARALLEL」は制作され

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#8 The First 10 Years of Needles & Pens

#8 The First 10 Years of Needles & Pens

The First 10 Years of Needles & Pens
光咲

階層も年齢も国籍も違う人が、好きなことが同じという理由で自然と集まることは素晴らしいことだ。大人になればなるほど、育ってきた環境やルーツが違い、新しく出会う人との交流関係を築きにくくなると個人的には思う。しかしながら、心が惹かれるような好きなものが共通だと気付いたとき、もう既にそこには、昼の星のように不可視な関係が始

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#7 狭間にある主観

#7 狭間にある主観

小山田孝司: なにがみてるゆめ
澤田雄斗

「ファッション関連で何かオススメの本はないですか?」
デザインも絵画も写真も分からない青年が店主に聞いている。
隣には普段からストリートで写真を撮っているという女性が一人、すでに何かの本を手にしていた。
「うーんそれならこの辺かなー」
そういって何冊かの本が手前に並ぶ。
有名ブランドや知らないスタイリストの写真集・・・
「何冊か読んで好きなの持っていきな

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#6 Universal, Under Exposure Journal

#6 Universal, Under Exposure Journal

Yuri Shibuya: Universal, Under Exposure Journal
伊藤 明日香

もう一度、最初から始めよう。
初めて買った写真集のことを思い出してみる。
写真作家の作品集、参考書、展示会のブックレット、図録、ZINE、当時は好きだったアイドルのものから、なんで買ったのかわかんないけどそれがないと誰かと馴染めなかった本まで、なんでも。

私が最初にお金を出して買えたの

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#5 山本昌男: くらやみ

#5 山本昌男: くらやみ

山本昌男:くらやみ
中根健太

 日本人写真家・山本昌男と音楽家・内田輝による写真と音楽の対話から生まれた写真集。この2名がコラボレーションをするのは2020年の『sasanami』に続き2回目である。本書はiikki booksというフランスの出版社から出版されており、写真集のほかに音楽家が作曲したレコードも同時に販売している。

山本昌男の写真には人間が先天的に持っている自然への敬意、崇高、五

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#4 シンキング・アバウト・ユー

#4 シンキング・アバウト・ユー

アンダース・エドストローム写真集: ANDERS EDSTROM: SPIDERNETS PLACES A CREW / WAITING SOME BIRDS A BUS A WOMAN
横田陸

 スウェーデン・フロソ出身の写真家、アンダース・エドストロームによる、2004年に出版された写真集。
出版社は、高品質のアートブックを作り上げることで有名な「Steidl Mack」(イギリスの会社「M

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#3 「未だ触れぬ未知、隔たりの優しさについて」

#3 「未だ触れぬ未知、隔たりの優しさについて」

Batia Suter 『Exosphere 』書評 
犬童アツヤ/Atsuya Indo

昨日はたまごサンドのことを考えていたらどうにも食欲を我慢できず、夜中にせこせこ朝ごはんにあてがうために作り始めてしまった。
辺見庸は『ゆで卵』という小説のなかでゆで卵を食べる擬音語に「ぽくぽく」をあてがっていたけど、なかなかしっくりくる音だなあと思いながらゆで卵をフォークで潰しマヨネーズや黒胡椒、少し甘い

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NOT TOO LATE #9: なにがみてるゆめ

NOT TOO LATE #9: なにがみてるゆめ

文:Jumpei Sakairi
小山田孝司 作品集: なにがみてるゆめ

 スタイリストの小山田孝司さんは2023年8月、出版社のDogYearsから写真集「なにがみてるゆめ」を発売した。2020年1月〜2023年5月にかけて、22名の写真家が小山田さんの友人・知人である287名を撮影した。ロケーションは被写体の生活する地域など。その日の服装に、小山田さんのアイテムを足した姿を写した。

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#2 鮮やかな美しさ、危険な魅力の中に潜む怒り

#2 鮮やかな美しさ、危険な魅力の中に潜む怒り

Petra Collins『Discharge』文: 秋田紀子/Noriko Akita

ニューウェーブフェミニズムの発信者の一人としても知られている Petra Collins(ペトラ・コリンズ)はアート、ファッション、フィルム、音楽、文化など幅広い分野を通して独自の世界観を発信するマルチタレントアーティスト。幅広い分野で引っ張りだこな彼女の初の写真集『Discharge』(2014)

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#1 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。

#1 ある晴れた日の午後、芝生の上で寝ころがって読んでみた。

Hanayo 『Keep an Eye Shut』文:井手 沙耶果/Sayaka Ide
(English ver. is below)

「目、閉じて」。
誰かにそう言われると、これから一体何が起こるんだという不安に襲われはしないだろうか。たとえそれが信頼している人であったとしても、無意識のうちに用心してしまう。急に視界が閉ざされるということは、人の潜在的な恐れを強く喚起する。
「目、開けていい

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