マガジンのカバー画像

Der immerwährende Kalender/万年暦

27
運営しているクリエイター

記事一覧

【詩の翻訳】一月/オダ・シェーファー

【詩の翻訳】一月/オダ・シェーファー

一月

雪片が漂う
淡い光のなかで。
窓ガラスの向こうで
一人の顔がのぞいている。

氷でできた椰子と
羊歯、
結晶のような藁、
折れた小枝に囲まれて

ヒヤシンスが輝く
薔薇色に、青色に。
このいくつもの部屋の中で待っている
露が、
南風が、
交代するすべてのものが——
まだそれはくたびれた翼をたずさえて
うずくまり、耳をすましている。

Oda Schaefer: „Januar“, Hrsg

もっとみる
【詩の翻訳】二月/イローナ・ボッデン

【詩の翻訳】二月/イローナ・ボッデン

二月

若い柳の木々はまだ黒く葉を落としたままで、
黒っぽい地面は雨でぬかるんでいる。
沼の縁や川辺の道々では
去年の枯れ草がしなしなと弱々しく佇んでいる。

まだ緑はなく、絹のようにすべらかな
弓なりの幹が傍らでかしいでいる。
赤い日がゆらゆらと輝く雲のかかった空に
夕方が紫色の影を連れて現れる。

星の輝く夜には
凍てつく息吹が青い彼方で震えている——
音もなく青ざめた野原が広がっていくように

もっとみる
【詩の翻訳】星椋鳥の歌/ジェイムス・クリュス

【詩の翻訳】星椋鳥の歌/ジェイムス・クリュス

星椋鳥の歌

星椋鳥たちはふたたび
南から海を越えて
煌めく羽毛を生やしてやって来る
どこから来るのか、誰も知らない。

彼らは冬を
アドリア海で楽しく過ごしたのだろうか?
それとも遠く、遠く向こうの
暑いアフリカで?

僕は君たちに漏らすことはできない、
星椋鳥たちがどこへ行くのかを。
カルパチア山脈へ行くのかもしれないし、
トリノまでしか行かないのかもしれない。

星椋鳥たちはそうこうするうち

もっとみる
【詩の翻訳】早春/ヨーゼフ・ヴァインヘーバー

【詩の翻訳】早春/ヨーゼフ・ヴァインヘーバー

早春

山腹を黄金の微風がなぜる。
甘き静寂へ
祝祭めいて桜の茂みが咲きほこる。
森のはずれではノロジカが草をはむ。

割れ目や畑の溝に、
そしてきっと貧しい心の中にも、
まだ少し雪が残っている。

Josef Weinheber: Vorfrühling. In: Deutsche Gedichte für die Hauptschule. Hrsg. von Ernst Meyer-Herma

もっとみる
【詩の翻訳】春の信仰/ルートヴィヒ・ウーラント

【詩の翻訳】春の信仰/ルートヴィヒ・ウーラント

春の信仰

おだやかな風が目を覚ました、
それはざわめき昼に夜に息づいて、
いたるところで働いている。
おおみずみずしい香りよ、おお新たなる響きよ!
さあ、哀れな心よ、怖気付くな!
今やすべて、すべてが変わらねばならない。

世界は日に日に美しくなり、
これからどれほど美しくなるのかわからない、
花の盛りは終わらないだろう。
最も遠く、最も深い谷底も満開だ。
さあ、哀れな心よ、苦悩を流し去れ!

もっとみる
【詩の翻訳】春の歌/ルートヴィヒ・ヘルティ

【詩の翻訳】春の歌/ルートヴィヒ・ヘルティ

春の歌

風は青く、谷は緑、
小さなスズランが咲き誇り
その下にはサクラソウ。
谷間の草原は
もうこんなに色鮮やかで、
日に日にいっそう色彩豊かに化粧をする。

だからおいで、春がお気に入りの人よ、
そして世界を、
父なる神のやさしさを喜ぶがいい、
こんな壮麗な眺めを、
木とその花を
生み出したもうたやさしさを。

Ludwig Hölty: Frühlingslied. In: Deutsche

もっとみる
【詩の翻訳】それは春/エドゥアルト・メーリケ

【詩の翻訳】それは春/エドゥアルト・メーリケ

それは春

春は自分の青いリボンを
ふたたび風になびかせる。
甘い、よく知る香りが
胸騒ぎに満ちて大地をかすめる。

スミレはもう夢みている、
すぐにも姿を現しそうだ。——
耳をすまして、遠くからハープの音が。
春よ、そう、それはおまえだ!
僕はおまえを聞いたんだ!

Eduard Mörike: Er ist‘s. In: Deutsche Gedichte für die Hauptschul

もっとみる
【詩の翻訳】夏の光景/フリードリヒ・ヘッベル

【詩の翻訳】夏の光景/フリードリヒ・ヘッベル

夏の光景

僕は夏に咲く最後のバラを見た、
それは、血が出てるんじゃないかってくらい、赤かった。
それで僕は通りすがりに震えながら言った、
生きてるときにそこまでいくのは死に近づきすぎている!

暑い昼間に少しの風もそよがず、
ただかすかに白い蝶が飛んでいった。
でもそのはばたきが空気をほとんど
動かさなかったとしても、空気はそれを感じ、過ぎ去った。

Friedrich Hebbel: Somm

もっとみる
【詩の翻訳】大きな積み荷/インゲボルク・バッハマン

【詩の翻訳】大きな積み荷/インゲボルク・バッハマン

大きな積み荷

夏という大きな積み荷が積み込まれ、
太陽の船はもう港に停泊している、
君の後ろでカモメが急降下し鳴くときには。
夏という大きな積み荷は積み込まれた。

太陽の船はもう港に停泊し、
船首像の唇の上に
幽霊の微笑みがあからさまに浮かぶ。
太陽の船はもう港に停泊している。

君の後ろでカモメが急降下し鳴くときに、
西から沈没の命令が来る。
だって君は目を開けて光の中で溺死するだろうから、

もっとみる
【詩の翻訳】収穫祭の花冠/ヘルベルト・フォン・ヘルナー

【詩の翻訳】収穫祭の花冠/ヘルベルト・フォン・ヘルナー

収穫祭の花冠

畑から最後のわら束を
家へと運び出すとき、穀物とわら、
色とりどりの花々が死に絶える前に、
君のいくつもの色で僕らのために、
秋よ、世界をもう一度楽しくしてくれ!

梨を茶色く、マルメロを黄色く、
林檎を赤く!
そして全ての色の真ん中に
金言のような願いがある。
僕らに日々の糧を与えたもう!

Herbert von Hoerner: „Erntekranz“, Hrgb. von

もっとみる
【詩の翻訳】荒野じゅう/テオドール・シュトルム

【詩の翻訳】荒野じゅう/テオドール・シュトルム

荒野じゅう

荒野じゅうに私の足音がこだまする。
それは大地から虚ろに響いてついてくる。

秋がきた、春は遠い——
かつて至福の時があったのだろうか?

立ちのぼる霧があたり一面にさまよい出る。
草は白く、天はなんとも空虚だ。

ここに五月に来てさえいなければ!
生と愛——それがいかに飛び去ってしまったことか!

Theodor Storm: „Über die Heide“, Hrgb. von

もっとみる
【詩の翻訳】美しい十一月の日/ゲオルク・ブリッティング

【詩の翻訳】美しい十一月の日/ゲオルク・ブリッティング

美しい十一月の日

すでに枝々が葉を落としたので、
光はやすやすとそれを通り抜けて流れ、
川の上へと風が竪琴を奏でるように吹いてくる、
いまだかつてないほど甘く。

一つの巨大な果実のように
太陽が青の中にぶら下がっている。
今やもう太陽を探していない者は、
いばらの茂みで野いちごを見つける、賢くも
夏の木の葉の中に隠れていた野いちごを。

砂利だらけの入江にいる魚は
ばら色のひれをして
静かに止

もっとみる
【詩の翻訳】あと片付け/アントン・ヴィルトガンス

【詩の翻訳】あと片付け/アントン・ヴィルトガンス

あと片付け

赤々と燃える炎をなして秋の森が燃えている
秋が森に火をつけたのだ
暗い山頂が丸くなっているところに、
焔が並び合い、びっしりと群がっている。

雲は煙のように立ちのぼる、
たくさん散らばった薪の山から。
そして冷たく厳しい風がハアハアと
鋭い息で火を吐く。

そのとききしむ枝葉から
いくつもの葉が火花のように飛び散り、
なおもほのかに光っている、葉が
白い大地に沈み込み、霜でぐっしょ

もっとみる
【詩の翻訳】冬になって/クリスティアン・モルゲンシュテルン

【詩の翻訳】冬になって/クリスティアン・モルゲンシュテルン

冬になって

湖には皮が張って、
ほとんどその上を人が歩けそう。
そこに大きな魚が泳いできて、
鼻をぶつけてしまう。

君は小石を手に取って
湖の上へ投げる、するとガチャン——
カツン——カツン——カツン——ツルル。
わあ、いい感じの小石だ!

小石は小鳥がさえずるみたいに鳴って、
小さなつばめが飛んでいるみたいに動く——
でも結局僕の小石は
ずっと遠く、ずっと遠く離れた湖の上に転がったままだ。

もっとみる