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エッセイ・雑記など

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記事一覧

『ナチスは「良いこと」をしなかった論法がジェノサイドを擁護するとき』/補論『現代左翼の反ユダヤ主義』

 前回の記事を書いたあと、健全な知的生活へと戻るためにもこの話題に再び触れるつもりはなかったのだが、

仲正氏が批判的に言及して田野氏の熱心な信者(仲正氏からは「ナチ・プロ」と名付けられた)たちから荒らされていたり、

最近米議会がイスラエルによるパレスチナ人へのジェノサイドを擁護・隠蔽しようとする動きを見て心を痛めていた時に、ふと以下のポストが目についてしまった。

 この「意図的な戦争犯罪の兆

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ナチスは「良いこと」もしたという主張は、歴史的事実の検証によって否定できない

ナチスは「良いこと」もしたという主張は、歴史的事実の検証によって否定できない

※追記本記事を書き上げた後実際に本書を読んでみたのだが、前政権から引き継いだ政策だから(引き継ぐという判断をしたにもかかわらず)良いことをしていないだの、ろくに良いとされる政策が実際には悪かったことを証明ができておらず、挙げ句の果てに難癖がつけられなくなると「2万人の女性を救ったのは確かに良いことだが、家父長制的干渉主義によるかもしれないから悪いことと言えないか?(明らかに良いことだけど、悪いこと

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『選択と集中』を擁護する:日本の研究力低下は選択と集中をして"いない"からかもしれない

『選択と集中』を擁護する:日本の研究力低下は選択と集中をして"いない"からかもしれない

 先日、日本の研究力が過去最低となり、韓国やスペインに抜かれたという記事が出てそこそこ話題となっていた。

 こうした日本の研究力低下について、巷では政府による"選択と集中"が原因であるという主張が人気を博している。
 そこから派生して一部の研究者や院生たちが財務省や文科省や政府に対して感情的な批判を繰り広げている様は、もはやお馴染みの光景だと思う。

 しかし、こうした大衆化された批判というもの

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行動経済学の没落とエルゴード性経済学の勃興

行動経済学の没落とエルゴード性経済学の勃興

 少し古いネタではあるが、以下はツイッターで長年続いてきた行動経済学に関連する議論にて、セイラー氏が最近ツイートしたものである。

 これには正直驚かされたと言う他はない。行動経済学は、ツイッター上で数年間に渡る応報とそれに関連して紹介された動画、論文、記事や、カーネマンやシラーらの著作を読んだ程度で全く詳しくはないのだが、それでもカーネマンらの主張とセイラーのこの苦し紛れの発言が食い違っているの

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『逆学問』について

『逆学問』について

⚫︎ある院生と"懐疑主義"
 以前、自分は懐疑主義者(恐らくは、ピュロン派を指している)であると公言しているが、実際にはせいぜい素朴でありふれた科学への懐疑的立場を取るくらいにとどまり、むしろ、社会的立場の低さやキャリアへの漠然とした不安という、大学院生にありがちな鬱憤に起因する、歪な学術エリート主義的激情に駆り立てられて、実務経験のある教官や講師の存在に対して蔑む発言を頻繁に繰り返すという、自身

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