ゆしま

記録 湯島はじめという名前で短歌を書いています

ゆしま

記録 湯島はじめという名前で短歌を書いています

記事一覧

秘匿 それから

◇ 自分で作るスープ類、本当に美味しい。直近は酸辣湯とか春キャベツのスープとかたまねぎのポタージュを作ったのだけど、一生スープ生活で良いと思ったもん。スープとか…

ゆしま
3日前
23

銀食器の鳥とんでいる?墜ちている?生きるならただこういうふうに

エックスでお金のつかいみち、みたいな話をしていて自分は意外と"なにによって得られた金か"というのを気にしているように思った。やや過剰なほどに。 短歌でもらった賞金…

ゆしま
12日前
9

シルバー・シップ、火を

炎を噴き上げて人混みに突っ込んでくるジャンボジェットから、アフリカの一国の在日大使の一家を守ることが今回も私の役目だった。 屋上遊園地のようなところにいる大使と…

ゆしま
3週間前
14

君に薦められた映画を埋めよう私を供えて 器の虚ろ/音羽

君に薦められた映画を埋めよう私を供えて 器の虚ろ/音羽 第一歌集『Immoral Baby_Pink Trap』より ◇ 「私」に「映画」を供えるのではない。 墓穴(なのだと思う)に埋…

ゆしま
3週間前
15

かつて眼科だった一角ごうごうと蒲公英ゆれることなく更地

この投稿をしたときに、「あんまり誰にでもついていかないほうがいいですよ……」と言われたことを思い出していた。 その人はよく、迂遠なことばでわたしに「あなたはとて…

ゆしま
1か月前
20

わたしの筆はかつてだれかのためのもの白い帆船ひと息に描く

オルゴールや自然音の鳴る機械が内蔵されたぬいぐるみを、こどもに、といただいて最近寝るときにいつも波の音を聴いている。 そんなわけでわたしはこの何週間か水辺の夢ば…

ゆしま
1か月前
14

手の影はやがてうみゆり生者より死者が多いの海のゆめには

実は自分はかつてかなりの睡眠のオタクで、とりわけレム睡眠のオタクだった。 なんのこっちゃわけわからないと思うんですけど、わたしは一時期(というと人生のうちの長く…

ゆしま
1か月前
20

紙船をあざやかに折るその指であなたはだれも殺さないでね

信頼に足るものを書きたい、ってこの前もエックスにポストしたけどいま本当にその気持ちが強い。 出鱈目に信じてほしいというよりは、わたしを信じてくれている人たちを優…

ゆしま
1か月前
20

盗むこと について

エックスへ投稿したポストについて、自分のことば足らずもあって数名のフォロワーさんからお声かけいただいたりと余波を生んでしまったのもあり少し書こうと思う。 はじめ…

ゆしま
2か月前
43

あの頃のたましいは糖蜜のなかに朝はすずしく大人はひとり

◇ ディズニー/ピクサーの映画『インサイド・ヘッド』で主人公の女の子がピーマンを嫌がるシーン、元々はブロッコリーなのを日本公開版のみピーマンに変わっているらしい…

ゆしま
2か月前
15

目を閉じるとあなたはずっと野球帽のままだ夕陽と傷は似ている

SNSのアカウントが墓標になり得るというのをこの数年間で何度か(具体的には三度)経験した。悲しいけれど。 エックス(旧Twitter)はマスク氏の意向でなんぼでもどうとで…

ゆしま
2か月前
16

ゆうがたに鳴るユモレスク

花泥棒。 というと、なんだかエモい感じの言葉に聞こえる気もするんだけど普通に泥棒で犯罪なので、詩歌にするのはどうなのかなとこれまで何度か立ち止まったことがあった…

ゆしま
2か月前
18

きみの窟はすずしい日陰たくさんの水たまりをそのうちに抱えて

◇ 歌集(ジャッカロープ)の手元の在庫がなくなりました🦌🐇 ありがたいことです。一年経つといろんなことが変わるもんだね。 ◇ 生きたり死んだり、そういう創作をして…

ゆしま
2か月前
23

出てゆきたいひとは出てゆく雨後の町あしたは花梨飴のあかるさ

このまえエックスに井上陽水さんの「傘がない」の歌詞について書いたけど、子どもの頃この歌普通に好きじゃなくて、暗いし、なんかずっと言い訳してるし、何度も「君に逢い…

ゆしま
2か月前
14

金曜日一首評:「毎日がとてもいい日ね!」百均の英語ポーチの弱い洗脳/岩倉曰

「毎日がとてもいい日ね!」百均の英語ポーチの弱い洗脳 /岩倉曰『ハンチング帽のエビ』 ◇ 岩倉曰さんの第二歌集『ハンチング帽のエビ』からの一首。 この「わかるなあ…

ゆしま
2か月前
24

妹としてのわたしの葬式は冬に向日葵さんざめく庭で

◇ 「生きていてしんどいのは信仰心がないからじゃないの?」 と言われた。 別にこの人はあやしい宗教のひとではない、わたしの知人、先生なんだけど。 これは結構そうかも…

ゆしま
3か月前
13

秘匿 それから


自分で作るスープ類、本当に美味しい。直近は酸辣湯とか春キャベツのスープとかたまねぎのポタージュを作ったのだけど、一生スープ生活で良いと思ったもん。スープとか出汁が飲める店、コーヒースタンド並に増えてくれないかな……。
ポタージュとかは咀嚼しなくて良いのも特大加点ですね(終わっている採点基準)
怠惰が過ぎて自分ひとりの家の食事って次に食べるものを迷ったり適切に咀嚼したりですらやりたくないことが多

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銀食器の鳥とんでいる?墜ちている?生きるならただこういうふうに

エックスでお金のつかいみち、みたいな話をしていて自分は意外と"なにによって得られた金か"というのを気にしているように思った。やや過剰なほどに。
短歌でもらった賞金や原稿料では基本的に短歌の本を買っているし、過去にはあまり持っていたくないと急に思い立ったぶんのお金を持って夜の神社へ行き一枚ずつ賽銭箱へ入れたりしたことがある。
まっとうな労働で得た金が尊いとかいう話ではなく、まあ金は金なので別に誰にな

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シルバー・シップ、火を

炎を噴き上げて人混みに突っ込んでくるジャンボジェットから、アフリカの一国の在日大使の一家を守ることが今回も私の役目だった。
屋上遊園地のようなところにいる大使とその夫とまだ幼い二人の娘に、あらゆる手を尽くしてここは危険だと伝える。けれど言葉が通じないこともあれば、こちらの姿が見えていないこともあり、彼らは何度でも飛行機事故に巻き込まれた。
巨大な機体はもちろんそれなりの速度でほとんど墜ちながら近づ

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君に薦められた映画を埋めよう私を供えて 器の虚ろ/音羽

君に薦められた映画を埋めよう私を供えて 器の虚ろ/音羽

君に薦められた映画を埋めよう私を供えて 器の虚ろ/音羽

第一歌集『Immoral Baby_Pink Trap』より


「私」に「映画」を供えるのではない。
墓穴(なのだと思う)に埋まるのは私ではなく、「君」に薦められた映画なのだ。

よく、感じたものはすべてが血肉になるという人がいるけど、血肉の主人であるはずの私、私の器(からだ)そのものよりも「君に薦められた映画」こそが実であるかのような

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かつて眼科だった一角ごうごうと蒲公英ゆれることなく更地

この投稿をしたときに、「あんまり誰にでもついていかないほうがいいですよ……」と言われたことを思い出していた。
その人はよく、迂遠なことばでわたしに「あなたはとてもばかだ」というようなことを言った。でもばかにされているわけではなかった…と思う…。少なくともそうは感じなかった。
体とこころが程遠いところにあったり、大体のことは受け入れてしまう(それは決して優れていない)こころの状態では、そういうふうに

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わたしの筆はかつてだれかのためのもの白い帆船ひと息に描く

オルゴールや自然音の鳴る機械が内蔵されたぬいぐるみを、こどもに、といただいて最近寝るときにいつも波の音を聴いている。
そんなわけでわたしはこの何週間か水辺の夢ばかり見るのだけど、これまでに海を見たことがないこどもは何の夢を見るのだろう。

ちなみに「胎内音」というのもあって、こちらのほうは逆にこどもの方が鮮明な夢を見られるのかもしれない。


最近本当に記憶の"消耗"が著しいです……。
しばらく

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手の影はやがてうみゆり生者より死者が多いの海のゆめには

実は自分はかつてかなりの睡眠のオタクで、とりわけレム睡眠のオタクだった。

なんのこっちゃわけわからないと思うんですけど、わたしは一時期(というと人生のうちの長くて数ヶ月のようだが実際には十数年にわたって)レム睡眠時に起こる明晰夢(俗称・体外離脱)を意図的にみる訓練をしていた。そのことに多くの時間を注ぎ込んでいる、という意味あいで"オタク"と表現した。

高校生や大学生だったころには時間があって、

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紙船をあざやかに折るその指であなたはだれも殺さないでね

信頼に足るものを書きたい、ってこの前もエックスにポストしたけどいま本当にその気持ちが強い。
出鱈目に信じてほしいというよりは、わたしを信じてくれている人たちを優勝させたいという気持ちがある。
(芸術作品そのものに貴賎というか勝ち負けはないというのにわたしも同意するが、作家の書くものを心から信じて楽しめることは「勝つ」ことだとわりとはっきりと思う。)

魂のアカウントで来い、といつも思ってるし
魂の

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盗むこと について

エックスへ投稿したポストについて、自分のことば足らずもあって数名のフォロワーさんからお声かけいただいたりと余波を生んでしまったのもあり少し書こうと思う。

はじめに言っておくとこのポストは特定の個人に宛てたものではなく、この投稿の前夜に自分が投稿した「類想」についてのポストの関連として書いたものです。

そもそも類想について書いた背景としてはきわめて個人的なことで、わりと近く総合誌上で発表された短

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あの頃のたましいは糖蜜のなかに朝はすずしく大人はひとり


ディズニー/ピクサーの映画『インサイド・ヘッド』で主人公の女の子がピーマンを嫌がるシーン、元々はブロッコリーなのを日本公開版のみピーマンに変わっているらしいです。(もちろんCGまで差し替えられている。)
突然のトリビア恐縮ですが、この話聴いたときにこのスタジオを盲信しようかな……と思いました。信頼ができすぎる。
『インサイド・ヘッド』好きです。ひとが抑うつ状態になってしまうときの脳の様子やイマ

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目を閉じるとあなたはずっと野球帽のままだ夕陽と傷は似ている

SNSのアカウントが墓標になり得るというのをこの数年間で何度か(具体的には三度)経験した。悲しいけれど。
エックス(旧Twitter)はマスク氏の意向でなんぼでもどうとでもなるというのがここ一年で実感できたし、彼らの墓標は非常に脆い土の上に立っている。


『王様戦隊キングオージャー』が先週最終回を迎えた。
良かったですねえ…………(オタク特有の長余韻)。
昨年は実家にしばらく帰っていた時期があ

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ゆうがたに鳴るユモレスク

花泥棒。
というと、なんだかエモい感じの言葉に聞こえる気もするんだけど普通に泥棒で犯罪なので、詩歌にするのはどうなのかなとこれまで何度か立ち止まったことがあった。
今日の短詩の風("X"上のイベント)ではじめて花泥棒という語をつかった短歌を発表したので、すこしそれに纏わることを書いておこうと思う。

わたしの中の花泥棒は花おばさんだ。

花おばさんというのはわたしが小学生のころ地元の、それも実家の

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きみの窟はすずしい日陰たくさんの水たまりをそのうちに抱えて


歌集(ジャッカロープ)の手元の在庫がなくなりました🦌🐇
ありがたいことです。一年経つといろんなことが変わるもんだね。


生きたり死んだり、そういう創作をしていると思うけど死への憧憬みたいな感情はもうない。死はあまりにも身近だからだと思う。
病院で働いていたとき、患者が亡くなることを「ステる」と言っていた。ドイツ語の「sterben」(死)が語源で、特に医師は日常的に使っていた印象がある

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出てゆきたいひとは出てゆく雨後の町あしたは花梨飴のあかるさ

このまえエックスに井上陽水さんの「傘がない」の歌詞について書いたけど、子どもの頃この歌普通に好きじゃなくて、暗いし、なんかずっと言い訳してるし、何度も「君に逢いに行かなくちゃ」って言ってるけどなんだかんだ絶対会いに行かないだろ…と思ってた。
大人になると、ああ、傘がない(比喩)ことあるよね、行きたいのは本当なんだけどさ…みたいに思う。

井上陽水は父が好きだったから聴く機会があった、のだと思う。わ

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金曜日一首評:「毎日がとてもいい日ね!」百均の英語ポーチの弱い洗脳/岩倉曰

金曜日一首評:「毎日がとてもいい日ね!」百均の英語ポーチの弱い洗脳/岩倉曰

「毎日がとてもいい日ね!」百均の英語ポーチの弱い洗脳
/岩倉曰『ハンチング帽のエビ』


岩倉曰さんの第二歌集『ハンチング帽のエビ』からの一首。

この「わかるなあ…」感。大好きです。
とてもよくわかるのだけど、これまでそう思っていたのかといえば気がついていたわけではない。些細で、ありふれているようで、非凡でシャープな視点が岩倉さんの歌の魅力のひとつだと思います。

「英語ポーチ」っていう略し方

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妹としてのわたしの葬式は冬に向日葵さんざめく庭で


「生きていてしんどいのは信仰心がないからじゃないの?」
と言われた。
別にこの人はあやしい宗教のひとではない、わたしの知人、先生なんだけど。
これは結構そうかもしれない。神頼み、みたいなことを昔から嫌っていた。彼のいう信仰とは神や仏のたぐいとはまた少し違うのだけど。
先生があたりまえに口にする、これまでつづいてきた自分の先祖たちに守られているという感覚や死後の世界で大切なひとと再開できるという

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