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『御堂関白記 藤原道長の日記』繁田信一編、角川ソフィア文庫
まさか『御堂関白記』をダイジェストにせよ読むことになろうとは思いませんでしたが、面白かったです。
書き始めの頃、道長しか宮中に参内せず、アタマ来て日記を半年も休んでしまう道長とか、犬が食った死体が内裏や寺社の軒下に転がり、そういった穢れにヤんになる道長とか、いきなり抱きしめてあげたくなる感じ。
正妻倫子の子である頼通を可愛がる道長も分かりやすいし*1、一条天皇の中宮となった彰子の無事出産
追悼、ポール・オースター
あまり小説は読まない方なんですが、ポール・オースターは結構、読みました。数年前に蔵書を1/3にした時も整理できませんでしたね。
「アメリカ文学史上初めて現れたエレガントな前衛」というのが日経の追悼記事に載っていましたが、なるほどな、と。朝日に載った柴田元幸さんの追悼文の中では「老いを喪失でなく新たな可能性模索の機と捉える姿勢」という言葉も印象的でした。
オースターの中で好きな作品を、多くの方と
『<自己愛>と<依存>の精神分析 コフート心理学入門』和田秀樹
『<自己愛>と<依存>の精神分析 コフート心理学入門』和田秀樹、PHP新書
コフートは「名前ぐらいは知っているかな」ぐらいの存在でしたが、著作はもとより解説書なども手に取ったことはありませんでした。今回、和田秀樹さんの解説書ぐらい読んでみるか、と思いたったのは『「推し」で心はみたされる?』熊代亨、大和書房の東洋経済の書評インタビューを読んで感心したから。
この書評欄のインタビューで熊代亨さ
『オッペンハイマー』
『オッペンハイマー』を友人たちと観にいきました。
凄い作品です。
3時間ノンストップなのに緩むところがなく科学が切り開いてしまった恐怖の「新しい世界」を描くとともに、倫理的な裁きを政治的な裁きに重ねる構成が見事だな、と。公聴会の場面はまるで『十二人の怒れる男』を観ているようでした。
にしても出てくる物理学者はほとんどユダヤ人。ヒトラーが物理学を牽引してきたユダヤ人たちを信用できず、2年ぐらいリード
『源氏物語論』吉本隆明
『源氏物語論』吉本隆明、ちくま学芸文庫
大学生の頃に出た『源氏物語論』は、当時、吉本さんには別なものを求めていたので、文字通りざっとしか読んでいませんでした。吉本源氏に対してアカデミックな立場から行われた批評に対してこっぴどく反論した評論の方が印象に残っていますが(この文庫版にも収録されてます)、それでも自分の源氏物語に対する基本的な見方は吉本源氏なんだろうな、と思って改めて文庫版を読み返して
『ミクロ経済学入門の入門』坂井豊貴
コカ・コーラとペプシコーラのどちらが好きかというところから無差別曲線の解説をするなど、親しみやすい内容だが、一番、感動したのがギッフェン財の説明。
これを留学時代の貧しい食生活から説明したあたりが素晴らしい。筆者は留学先の地元スーパーのPB商品だった1袋1.5ドルの不味いパスタを買っていたのですが、時々は高くて美味しい2ドルのパスタを購入していた、と。こうしたなか、このスーパーが1.5ドルか
『進化のからくり』千葉 聡
『進化のからくり 現代のダーウィンたちの物語』千葉 聡、ブルーバックス
毎日出版文化賞を授賞した『歌うカタツムリ』岩波科学ライブラリーは地味でパッとしないカタツムリが進化研究では重要なプレイヤーであることを解き明かしていましたが、『進化のからくり』では、カート・ヴォネガット が《ガラパゴス諸島の生物は、アフリカのものと比べると、パッとしないと言わざるを得ないでしょう。しかし、それが彼らの運命で
『NOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか?』カーネマンその他
『NOISE 下 組織はなぜ判断を誤るのか?』カーネマン/ オリヴィエシボニー / キャス・R・サンスティーン / 村井章子(訳)
上巻ではノイズが発生する様々な場面が描かれていますが、下巻はノイズの原因と対処法がテーマとなっています。
上巻に引き続き医師、裁判官などプロ中のプロの判断に信じられないほどのバラツキがあり、それが社会的な許容限度を超えている実態が次々と明らかになっています。さ
『経済評論家の父から息子への手紙』山崎元
『経済評論家の父から息子への手紙 お金と人生と幸せについて』山崎元、学研
今年1月に亡くなられた経済評論家だった山崎元さんの最後の著書をKindle版で購入、読んでみました。
東大の理系に合格した18歳の息子さんに宛てた手紙のうち、最後の経済的処世術みたいなアドバイスの部分を拡げて書き上げた1冊。新NISAで株式投資を始めたという方にもぜひ、これぐらい読んで、生前、著者が日本での普及につと
『NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか?』
『NOISE 上 組織はなぜ判断を誤るのか?』ダニエル・カーネマン / オリヴィエシボニー / キャス R サンスティーン / 村井章子(訳)
ジムで有酸素運動のエアロバイクを漕ぎながら聴いているAudibleの1冊。
行動経済学などで有名になったバイアスについて書かれた『ファスト・アンド・スロー』に続き、今回はノイズを取り上げています。
本人はプロ中のプロと思い込んでいる裁判官たちの
『特殊効果技術者になるには』小杉眞紀、山田幸彦 (著)、ぺりかん社
時々、手に取るんですが、ぺりかん社の「なるにはBOOKS」シリーズは、新しい職種の実際がどうっているかを知りたい時に便利。実はいまの中高生向きということもあって、新しい仕事をどんどんカバーしてくれていて、村上龍の『13歳のハローワーク』がどんどんアップデートされている感じ。今回はCGや特殊メイク、ミニチュアなど映像に特殊効果を加える技術者が紹介されているので読んでみました。
『ゴジラ-1.0