潜るように考える~『水中の哲学者たち』
本書は、気鋭の書き手として最近注目を集めている著者の、複数のメディア連載を編纂した哲学エッセイ集である。
柔らかくたゆたう水のような、どこか掴みどころがなく浮遊感のある不思議な文体。読み手も一緒になってその流れに気持ちよく身を任せていると、時たま渦に巻き込まれるような緊迫感がぎゅぎゅぎゅっと迫ってきてシリアスに転じたりする。レトリックの巧みさ、文章構成と伏線回収のうまさなどが際立つが、それらだけに還元しにくい独特のリズムと雰囲気が、一見すると日常のなんてことはない場面をふつ