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日記

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2020年2月の記事一覧

2020年2月27日(木)

古井由吉の訃報を目にしている最中に、来月から大幅に変更になる業務管理の方式を説明されたところで、頭に入るはずはなかった。古井作品はそこまで読んでいるわけではないがやってきた衝撃がそれなりに大きかった、勢いあまって恥ずかしながら未読の【野川】を購入した。その人の死を契機として注目をしてしまうこと、不在化によってその存在感がにわかに高まること。半ば以上に予想していたことだが某賞は箸にも棒にも掛からず。

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2020年2月26日(水)

某ウイルスの脅威が、正確に言えば脅威に対する人間社会の恐れ方が、にわかに高まりを見せている。弊社はこの手の事態への対処に、いつでも半歩ほど遅くれながら追随することになっているけれども、その遅さを批判することなくむしろ歓迎している私もいる。ヴァルザーの【助手】を買って読み始めるととても面白くてこれは一気に読むではなく遅延した読書を試みてずっとその世界浸っていたい類いの小説だと感じる。長々とした独白や

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2020年2月25日(火)

職場の近くにある、郊外型と呼んで差し支えないような大型スーパーを取り囲む歩道のベンチに座って、自分が聴いているというよりは道行く通行人、あるいは空間そのものに聴かせてやっているとでも言うような大きさで音楽を流している老人を、久々に目撃した。初回稼働の日で、実際にシステムが動くタイミングでの検証を行うべく手を動かす瞬間もあったがそれ以外の阿保みたいな長さの時間の大半を、有事の際に備えるための存在とい

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2020年2月24日(月)

祝日だが、昨日資産移行したシステムが明日から動くという狭間、という日だったので心は休まらなかった。午前中に掃除洗濯に加えて炊事、先週は無残にも床の滑りと化したきんぴら作成に留まらず米とトマトソースの作り置きまでしたので、もう一日を終えてもよいと思える権利を、十三時くらいには有していた。しかし頭は働かなかった、何を読んでもこれではないという気がしてならない日だった。家に居ながらにして心身ともにそこに

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2020年2月23日(日)

労働、金がないので缶コーヒーすらクレジットカードを通じて来月の俺におごってもらう始末だった。ホラーを見るぞという謎の機運が突如として高まって、【ミッドサマー】を見た。大枠で言えば予想の範疇にある突飛な(そして凄惨な)出来事を予想されるタイミングから僅かにずらして提示され続けるという了解が生じることによる緊張感の持続、というのがホラーの基礎で、その点に関してはよくできていたと思った、つまり怖かった、

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2020年2月22日(土)

家から出ないことこの上なかった。【タンナー兄弟姉妹】はその面白さを持続したまま読み終えられて、早急に、すなわちクレジットカードの締め日が切り替わる3月1日からヴァルザーのほかの作品を買って読むことになった。レイソルは強かった、と見せかけて特に守備の部分では最後の最後で救われていただけだった、2CBにスピードがないのがよろしくない、が開幕戦なので勝てばよろしい。猫の日なのに猫に触れる機会がなく忸怩た

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2020年2月21日(金)

三連休の気分を前借りしていた。本当は日曜日は労働だから、三連休ではなかった。キャリアについての面談をした。倦怠感、という言葉と、底、という言葉を主に使っていた。【タンナー兄弟姉妹】が面白すぎる。長々と話していくうちに突如訪れる転換や憤怒の唐突さ。いかに働きたくないか、ということをあそこまで滔々と語っている小説が二十世紀の初頭にあるとは。あそこまで、と書くことによって、正確に言えば自然と書かれたこと

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2020年2月20日(木)

させていただく、という言葉をシステムの稼働判定会議において自部門の部長に使うことに対する是非の議論、というよりそのことに対する一方的な疑義の提示を、半ば意固地になってまで昨日やってしまったので、実際の会議で上手く喋れるか不安が過っていたがそつなく終わり、Windowsの更新が長いけれども待っていると終わって、銭湯に行き、帰ってすぐ眠った。結果として9時間寝て、9時間寝ると、ここのところずっと私のな

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2020年2月19日(水)

もつ鍋を無限に食べる会が突如勃発した。飲食店の誤発注による投売り大会に誘われて、参加したのだった。人様のミスを諸手をあげて喜べる珍奇な機会だった。おいしかった。隣の席に座っている男女がアニメ制作会社の制作進行と動画(ウー)マンであることが、その会話から察せられた。無限のもつというのは当然幻影で、時間的な意味でも胃の容量的な意味でも、それは有限だった。太鼓の達人をやったのち、学生時代にラグビーかアメ

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2020年2月18日(火)

「こんなに並んでまでエスカレーターに乗って楽をしたいのか」VS「わざわざ階段で歩いてまでずんずん進むほど早く帰る必要があるのか」という気持ちが私の中でせめぎあった結果、ほんの一瞬ではあるものの、傍から見ても私の認識としても確かにそれとわかる程度ではある停止、というものが生じた。初めての現象だったので私は少し驚いた。五日分作り置きしていたきんぴらごぼうを二日目にして床にぶちまけるという悲しい出来事が

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2020年2月17日(月)

路線バス、白バイ、白バイ、路線バスの順番で丁字路を曲がっていった。遅れていた中央線で、定めたというよりは自然と定まった立ち位置からは首をやや不自然な角度にすれば路線図を見上げることができた、いつの間にか高輪ゲートウェイが追加されていた、こうして改めて文字にして路線図に埋め込まれたものを見ると、やはり違和感が拭えなくある。名前が長すぎて隣の品川はおろかさらにその隣の大崎にまでその文字を渡らせていた。

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2020年2月16日(日)

圧倒的な在宅を完遂した。保坂和志の【もうひとつの季節】を読んでいると読み終えた。初期の保坂特有の、情景や行為の運動を(あえて)手際よくないかたちでセンテンスを切らずに書き連ね、そのセンテンスの終盤で突如「ところで」を挿入して全然ちがう話題に移行するという具合のもつれた文章がとても好き。保坂作品で一番好きなのはじつは【季節の記憶】で、どうしてその続編である本作を私は今まで読んでこなかったのか、それは

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2020年2月15日(土)

最高のお菓子であるところのハリボーの唯一の弱点は一度開けたら二度と密閉できない包装の設計にある。こと包装においては日本に勝るものがない、ということを、アメリカ滞在時の実感を伴った書いていたのは千葉雅也だったか。記された手順通りに破いていけば適切なかたちで中身にありつける。我々は包装に、振り付けられている。ということを考えていたのが朝の九時とかで、そんな時間からハリボーを食べるなんて家に居れば基本あ

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2020年2月14日(金)

地球への信頼が薄いので、こうも暖かい日だったとしても、突如裏切って急な冷え込みを見せるのではないかという思いが拭えず、それなりに厚手のダウンを着てしまう。二月にはそれかそれと同程度のアウターしか着てこなかったという慣習に囚われてもいる。結果として暑い。後輩とおぼしき若手女子社員とすれ違う用の顔を作ってすぐに元の思案顔に戻す若いのにやり手の課長、みたいな男を盗み見る中野の歩道を行く私。
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