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昭和的感覚の随筆・エッセイ

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昭和生まれの氷河期世代が令和の今をなんとなくの感覚でつかみ取った、あるいはつかみ損ねた事柄をつらつらと書き綴ります。
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セブンイレブンの人質:氷河期世代昭和随想

セブンイレブンの人質:氷河期世代昭和随想

 子供の頃を振り返って見ると、令和の今、しっかりと確立されているものたちの草創期に立ち会っていたのだという貴重な体験に気付かされ、ひとり目を見開き、「あれは……」と、呟いてしまうことが時々ある。
 例えばセブンイレブン。

 今でこそセブンイレブンは、全国的なコンビニエンスストアチェーンとしてどこにでもあり、いつでも誰でも利用できるようになっている。

 けれど、私が子供の頃は違った。

 我が

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親の老化を感じて

親の老化を感じて

親の老化を感じるのは、子としてつらいものがある。

かつては何でも自分よりうまく、力強く出来る、身近なスーパーマンだったのに。

今では、体の大きさも、力も、こちらの方が上になっている。

まるで、親の血肉を奪って自分のものにしているような罪悪感を、時に感じる。

そして、それはある意味ではその通りなのだろう。

その上に、親の衰えを見せられるのは、心に「来る」ものがある。

たとえばパソコン。

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寿命と母とパソコンと

寿命と母とパソコンと

 日曜出勤をしたために月曜日が代休となったので、部屋にこもりいつものように本を読んでいると、母親から連絡が来た。
 パソコンを買い替えたいから一緒に来てくれというのだ。
 五年ほど前だろうか、実家の母親のノートパソコンを借りた時、立ち上がるまでに五分以上かかり、そろそろ替え時だと言った時があった。
 しかし、メールを見るのや年賀状を作るだけだから特に不自由はない、そう母は言っていた。パソコンが立ち

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感じる年齢

感じる年齢

 テレビやネットで大きく取り上げられている人物が年下だと知った時に、自分の年齢を考えさせられる。
 当たり前のことだけれど、年を経るにつれてそういった機会は多くなってきた。

 それが活躍している運動選手であれば、努力やひたむきな態度に感服し、自分より若いのに立派だなぁ、と素直に見上げる気持ちになる。
 若き実業家が斬新なアイデアで社会に貢献しているのを見ると、稼いだお金の額を羨ましく思いながら

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行い霊

行い霊

 言霊というのは、言葉に魂が宿り、言った通りになってしまうことをいう。
 では、口に出さず自分があることをしたために、その行動に関わりの深い事件が起きてしまうことは何と呼ぶのだろう。
 言葉には出していないから言霊ではない。
 行いが事件を呼んだのであるから、行い霊とでも呼ぶのだろうか。

 私の行動が「それ」を呼び寄せてしまいそうで、実行に踏み切れずにいることがある。
 礼服の購入だ。

 

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黄金の滝

黄金の滝

 はじめは子供たちがいたずらで、おもちゃか何かの粉を辺りに振りまいているのかと思った。
 
 公園に沿った道を歩いていた時のこと。突然私の体の横に、金色の粉が雪崩れるように降って来た。
 
 けれど、公園と歩道との間に生け垣のように並ぶ木立の向こうに、子供の姿どころか人の気配もなかった。
 
 足元に顔を向け、落ちて来た黄色のものをよく見てみると、それが米粒よりひと回りほど大きい金木犀の花弁だと気

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