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夜の自由帳

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夜に考える、ぐるぐるとした出口のないこととかの、集積所です。
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星間旅行

星間旅行

今日はまさに秋空、というような雲が広がっていて、何もない一日だった。

何も無くて、心だけが辛い一日。
わたしの様な人間には、または時間には、そういう日がある。珍しくはなくて、「生きるのは辛いのだ」とか、そういうこととも違って、物理的にはありふれた、心だけが傷つくような一日。

瞑想の動画を流す。心が静まるかと思って。
目を閉じて、静かな呼吸をする。
呼吸をする。静かに。

生きることは食べること

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えいえんではないいちにち

えいえんではないいちにち

この気持ちがえいえんではないことがかなしいといってきみが泣いた日のことはすべてただしくて、ぼくは悲しいという理由で仕事に行かずに、てんじょうのチープなシャンデリア調の照明を写真に撮っていた
ぼくの周りにはいつも美人ででスタイルが良くてあたまのおかしな女の子がいて、名づけるならそれが日々だった

あしたなんてなくて、だからぼくたちは明日をおもい煩う必要なんてなくて、きょうのかなしみをすべてだとおもっ

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夜の粒子

夜の粒子

夜。
最近の札幌の夜は、大体2-4℃位。
本州の人には寒いと思われるかもしれないけれど、空気が乾いているせいか、あまり寒さは感じない。
最近は風が強くて、それが少し大きめのカットソーをはためかせていって、誰かの絵筆の軌跡みたいだ。
私はいつも黒い服を着ているので、夜の風にあたる時、自分の中の何かが黒い粒子になって、黒い服の一部と一緒に溶けだしていくように感じる。

夜の中を歩いているとき、このまま

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未来が来る

未来が来る

未来が現実に追いついてくる
喜ばしいことなのかもしれない
けれど、
未来がひとつ現実になるたびに、たくさんの、感情的に無限の、と言ってもいいけれど、可能性が殺されていく

可能性はイノセント
現実は暴力

ひとつ未来が現実になるたびに、可能性は過去の中の「在ったかもしれない」けれどももう実現することはない地平線の中に消えていく

未来は可能性を食べて生きている

友達と、過去の人でも「いい感じ」で

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終の存在の空白のお話

終の存在の空白のお話

みんなに家族が居る
不思議なことだなと思う
親の心配をしたり、結婚相手の地元に行ったり(帰ったり、でいいのだろうか)、子供を産んだり、している

みんななんだかんだといっても、家族の状況や、家族の都合を根源的なものとして第一に考えてるらしい、というのが伝わってくる
とても不思議に思う

家族愛、とまでは言わなくても、家族というのは身近な存在で、なんだかんだと気遣ったり優先したりして生きるもの、とい

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藍のなかの黒の、夜空

藍のなかの黒の、夜空

夜空が暗いと安心する
特に札幌の冬の夜空は、キン、と凍りついたように冷たくて、暗くて鮮やかな藍のなかに、月明かりに照らされた雲が透けて見える

『青は藍より出でて藍より青し』という昔の言葉があるそうだけれど、わたしは藍色の方があおいと思う

暗い、凍ったあおい空から降る空気の中で、誰も私に触れられないような、誰にも触れられないような、人を孤独で覆うような夜の空に浸されていると、まるで自分が肯定され

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月の化石

月の化石

星の死骸が集まる

星と星の間の空白を埋めるようにわたしたちは廻っていて、互いに繋ぎそびれた手が、宇宙の塵の中で所在なく浮かんでいる

いつか、掴めたかもしれない手、の、空白を握ることはできなくて、わたしたちには穴が空いている

埋めるための空白、わたしたちにはそれしかない
穴を、開けたのは誰か、なんてことをわたしたちは考えない
離れた人たちにだって、いい感じでいてほしいよねと、友達と話す

わた

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ネイビー、ピンク、オレンジ、ブルー

ネイビー、ピンク、オレンジ、ブルー

また、いつのまにか朝が来ている
いつだって明日が来る準備なんてできていないのに、空の色は変わっていって、当然っていう顔をして「今日」になって、人間たちがどこからから溢れてくる

夜からグラデーションを描く朝を、美しいと思う

誰にも踏み荒らされていない朝の空気はシンプルで清潔な気がするし(朝を「踏み荒らされていない」と感じるのはわたしが雪国育ちだからかもしれない)、陽が上り切る前の、朝の境界の時間

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隙間がゼロなら其れは連続体になるだろうか

隙間がゼロなら其れは連続体になるだろうか

「ないも同然」という言い回しがある
それほど珍しくは無い表現だと思う

辞書によれば「同然」とは「同じ状態であること」らしい

では「無いも同然」は「無い」という意味になるのかな

コギトの原理から言えば、「無いも同然と考えている自分は疑いようもなくこの世に存在する」ということになるんだろうか

そんな言葉を持ち出さなくても、わざわざ「同然」という表現を使うのだから「物理的には『在る』という前提で

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月の下の、荒野を歩くけもの

月の下の、荒野を歩くけもの

莫迦みたいだ、と思う
全部、莫迦みたいだ
そうして、自分はまだ自分にそんなに価値があると思っていたのかと思う

わたしにとってわたしはそれほど大事ではなくて、まして他の誰かにとっては尚更、だった筈だ
何を、何に、失望することがあるだろう

誰も誰への価値も認めない
仮にそこを荒野と呼ぶ

少なくともわたしが立っているここは、ずっと荒野のはずだ

荒野を歩いているけもの、だった筈の自分に、いつの間に

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1000のNOの中にある幻日と、その残骸と

1000のNOの中にある幻日と、その残骸と

好きだからでも傷ついてるからでさえなく、傷付いてると周りに思われたいいためのファッションは、はしたないとか品がないのを通り越して醜くさえあるな思うことがあって

自由だった筈のファッションの中にあるのは不自由さだけだった

それは、そこには悲しさも、自己憐憫すら無くて、「かわいそうに思われたい」自己陶酔に埋められているからんだろうなと思う

ある過去にはたしかに手の中に在ったはずの未来はやせ細って

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ハーベイ・ブリストルクリーム

ハーベイ・ブリストルクリーム

イギリス産の青い瓶に入れられた、スペイン産の琥珀色のお酒
白ワインの一種だけれど、琥珀色のその液体は、ワインと言われなければ全く気づかないだろう色と香りと、味をしている
甘いそれはデザート酒として、シェリー酒の中では一番飲まれているそうだけれど、日本では正規代理店が取り扱いをやめてしまってから、ちょこちょこと、並行輸入品を見かけるだけになってしまった

お酒がそれぽまど好きではないわたしにとって、

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心の奥底に埋まっている廃墟

心の奥底に埋まっている廃墟

世界の隅はいつも砂浜と海辺だとおもう
穏やかな波

巨大なビルの廃墟は、まるで建物の骨のようだ
誰かのために建てられたわけではないそれは、まるですべらかではなくて、酸化した静けさをもっている
赤と灰の境界

わたしはそこを見る時、いつも静かで穏やかな、寂しさの中にいる

朽ちた境界たちと、わずかな記憶とLFOとホワイトノイズ
わたしの記憶の中のそこは、いつも視点が引いていて、例えばそれを空洞と名付

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憶えていられるだけの世界

憶えていられるだけの世界

歌詞もメロディも憶えていないのだけれど "For as long as I remember" という曲があって、いいタイトルだな、と思った

私が憶えているあいだ
私が憶えているあいだだけ存在する世界、あなた

素朴的唯我論と、素朴的唯物論は、同じ結論に達するんだって、Wikipediaには書いてあった

脳は一時的なストレージで標本で、大切に仕舞い込まれている
自分につけられたNo.を、わたし

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